妄想日記5<<DISPARITY>>

YAMATO

文字の大きさ
上 下
85 / 236
Chapter5(奸賊編)

Chapter5-①【時はかげろう】前編

しおりを挟む
「なあ、いつ迄東京にいるんだ?」
やっと目を覚ましたナツキへ声を掛ける。
「ふわぁー、良く寝たぁ!
今、何時だ?」
伸びをしたナツキが聞く。
「5時だ。」
そろそろ準備を始めないと、間に合わなくなる。
「何だ、まだ朝か。
もう一眠りするか。」
ナツキはベッドへダイブした。
「おいっ、もう夕方だ。
で、いつ迄いんだよ。」
チカラは話を戻す。
「へっ?夕方って、俺何時間寝てたんだ?」
ナツキは飛び起きて、身支度を始める。
といってもハーネス姿のままジャージを着るだけだ。
「かっ、帰るのか?」
慌てて聞く。
「いや、腹が減った。
何か、食いに行こうぜ。」
ナツキは了解もなく煙草に火を点けた。
 
「いや、時間がないんだ。
お前、どうせ暇だろ。
これから沖縄行かないか?」
思い切って誘ってみる。
今晩から沖縄へ独り旅に行く予定だった。
代行の手配をしてあり、キャンセルするのは気が引ける。
だがナツキと一緒にいたい気持ちが勝った。
行ってくれれば、一石二鳥だ。
「ああ、別に構わないぜ。」
思いがけない返事に、息をするのも忘れた。
荒唐無稽な男をまじまじと見る。
言動は全て思い付きの様だ。
深く考えたり、他人の目を気にする事はない。
羨ましい限りだ。
それに引き換え自分は本性を隠し、周りに染まって生きてきた。
かりそめの交尾はもう充分だ。
沖縄に行けば、自分が望むプレイが待っている。
「まっ、マジか!
ちょっと待て!
航空券手配してみる!」
開いた口から一気に空気が雪崩れ込んできた。
チカラは震える手で携帯を操作する。
 
「こんな暑苦しい格好で行くのか?
折角南国に行くのによ。」
チカラが渡した服に着替えたナツキがぼやく。
シルバーの戦闘服だ。
咎めなければ、ハーネスを装着したまま保安検査場へ行っただろう。
『これのどこがいけないんだ?』
検査員にそう聞く筈だ。
空想に顔が綻ぶ。
この男といると、万事この調子だろう。
平穏な毎日より、ハラハラドキドキさせてくれるナツキと一緒にいたい。
「仕方ないだろ。
飛行機に乗るんだから。
沖縄着いたら、好きな格好させてやるから今だけ我慢しろ。
ほらっ、早くブーツの紐を結んじゃえよ。」
無鉄砲な男を宥めるのは楽しい。
チカラは受け取ったハーネスをスーツケースに押し込んだ。
この衣装なら紫に腫れ上がった顔を見ても、誰もが格闘家と思うだろう。
 
空港に着くと一人の男が待っていた。
制服が似合う爽やかな青年だ。
「幾ら何でも急過ぎるますよ。
平日の夜便だから何とかなったけど、もうこれっきりにしてくれませんか。」
言葉とは裏腹に、青年は笑顔で迎えてくれた。
ネクタイで半分隠れた名札には『タカユキ』の文字が覗く。
襟が食い込んだ太い首に視線が留まる。
かなりトレーニングを積んでる事が分かった。
視線に気付いた青年がナツキを見る。
上唇に舌を這わすと、赤らめた顔を下に向けた。
「ほっ、本当にこれが最後になりそうなんです。
俺、来月転職するので…。」
青年が吃りながら告げる。
 
 
(つづく)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

消防士の義兄との秘密

熊次郎
BL
翔は5歳年上の義兄の大輔と急接近する。憧れの気持ちが欲望に塗れていく。たくらみが膨れ上がる。

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

プライド

東雲 乱丸
BL
「俺は屈しない! 」男子高校生が身体とプライドを蹂躙され調教されていく… ある日突然直之は男達に拉致され、強制的に肉体を弄ばれてしまう。 監禁されレイプによる肉体的苦痛と精神的陵辱を受ける続ける直之。 「ヤメてくれー! 」そう叫びながら必死に抵抗するも、肉体と精神の自由を奪われ、徐々に快楽に身を委ねてしまう。そして遂に―― この小説はR-18です。 18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします。 エロのみのポルノ作品です。 過激な生掘り中出しシーン等を含む暴力的な性表現がありますのでご注意下さい。 詳しくはタグを確認頂き、苦手要素が含まれる方はお避け下さい。 この小説はフィクションです。 登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 また皆様に於かれましては、性感染症防止の観点からもコンドームを着用し、セーファーセックスを心掛けましょう。

泥々の川

フロイライン
恋愛
昭和四十九年大阪 中学三年の友谷袮留は、劣悪な家庭環境の中にありながら前向きに生きていた。 しかし、ろくでなしの父親誠の犠牲となり、ささやかな幸せさえも奪われてしまう。

【 よくあるバイト 】完

霜月 雄之助
BL
若い時には 色んな稼ぎ方があった。 様々な男たちの物語。

思春期のボーイズラブ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:幼馴染の二人の男の子に愛が芽生える  

処理中です...