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Chapter5(奸賊編)
Chapter5-①【時はかげろう】前編
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「なあ、いつ迄東京にいるんだ?」
やっと目を覚ましたナツキへ声を掛ける。
「ふわぁー、良く寝たぁ!
今、何時だ?」
伸びをしたナツキが聞く。
「5時だ。」
そろそろ準備を始めないと、間に合わなくなる。
「何だ、まだ朝か。
もう一眠りするか。」
ナツキはベッドへダイブした。
「おいっ、もう夕方だ。
で、いつ迄いんだよ。」
チカラは話を戻す。
「へっ?夕方って、俺何時間寝てたんだ?」
ナツキは飛び起きて、身支度を始める。
といってもハーネス姿のままジャージを着るだけだ。
「かっ、帰るのか?」
慌てて聞く。
「いや、腹が減った。
何か、食いに行こうぜ。」
ナツキは了解もなく煙草に火を点けた。
「いや、時間がないんだ。
お前、どうせ暇だろ。
これから沖縄行かないか?」
思い切って誘ってみる。
今晩から沖縄へ独り旅に行く予定だった。
代行の手配をしてあり、キャンセルするのは気が引ける。
だがナツキと一緒にいたい気持ちが勝った。
行ってくれれば、一石二鳥だ。
「ああ、別に構わないぜ。」
思いがけない返事に、息をするのも忘れた。
荒唐無稽な男をまじまじと見る。
言動は全て思い付きの様だ。
深く考えたり、他人の目を気にする事はない。
羨ましい限りだ。
それに引き換え自分は本性を隠し、周りに染まって生きてきた。
かりそめの交尾はもう充分だ。
沖縄に行けば、自分が望むプレイが待っている。
「まっ、マジか!
ちょっと待て!
航空券手配してみる!」
開いた口から一気に空気が雪崩れ込んできた。
チカラは震える手で携帯を操作する。
「こんな暑苦しい格好で行くのか?
折角南国に行くのによ。」
チカラが渡した服に着替えたナツキがぼやく。
シルバーの戦闘服だ。
咎めなければ、ハーネスを装着したまま保安検査場へ行っただろう。
『これのどこがいけないんだ?』
検査員にそう聞く筈だ。
空想に顔が綻ぶ。
この男といると、万事この調子だろう。
平穏な毎日より、ハラハラドキドキさせてくれるナツキと一緒にいたい。
「仕方ないだろ。
飛行機に乗るんだから。
沖縄着いたら、好きな格好させてやるから今だけ我慢しろ。
ほらっ、早くブーツの紐を結んじゃえよ。」
無鉄砲な男を宥めるのは楽しい。
チカラは受け取ったハーネスをスーツケースに押し込んだ。
この衣装なら紫に腫れ上がった顔を見ても、誰もが格闘家と思うだろう。
空港に着くと一人の男が待っていた。
制服が似合う爽やかな青年だ。
「幾ら何でも急過ぎるますよ。
平日の夜便だから何とかなったけど、もうこれっきりにしてくれませんか。」
言葉とは裏腹に、青年は笑顔で迎えてくれた。
ネクタイで半分隠れた名札には『タカユキ』の文字が覗く。
襟が食い込んだ太い首に視線が留まる。
かなりトレーニングを積んでる事が分かった。
視線に気付いた青年がナツキを見る。
上唇に舌を這わすと、赤らめた顔を下に向けた。
「ほっ、本当にこれが最後になりそうなんです。
俺、来月転職するので…。」
青年が吃りながら告げる。
(つづく)
やっと目を覚ましたナツキへ声を掛ける。
「ふわぁー、良く寝たぁ!
今、何時だ?」
伸びをしたナツキが聞く。
「5時だ。」
そろそろ準備を始めないと、間に合わなくなる。
「何だ、まだ朝か。
もう一眠りするか。」
ナツキはベッドへダイブした。
「おいっ、もう夕方だ。
で、いつ迄いんだよ。」
チカラは話を戻す。
「へっ?夕方って、俺何時間寝てたんだ?」
ナツキは飛び起きて、身支度を始める。
といってもハーネス姿のままジャージを着るだけだ。
「かっ、帰るのか?」
慌てて聞く。
「いや、腹が減った。
何か、食いに行こうぜ。」
ナツキは了解もなく煙草に火を点けた。
「いや、時間がないんだ。
お前、どうせ暇だろ。
これから沖縄行かないか?」
思い切って誘ってみる。
今晩から沖縄へ独り旅に行く予定だった。
代行の手配をしてあり、キャンセルするのは気が引ける。
だがナツキと一緒にいたい気持ちが勝った。
行ってくれれば、一石二鳥だ。
「ああ、別に構わないぜ。」
思いがけない返事に、息をするのも忘れた。
荒唐無稽な男をまじまじと見る。
言動は全て思い付きの様だ。
深く考えたり、他人の目を気にする事はない。
羨ましい限りだ。
それに引き換え自分は本性を隠し、周りに染まって生きてきた。
かりそめの交尾はもう充分だ。
沖縄に行けば、自分が望むプレイが待っている。
「まっ、マジか!
ちょっと待て!
航空券手配してみる!」
開いた口から一気に空気が雪崩れ込んできた。
チカラは震える手で携帯を操作する。
「こんな暑苦しい格好で行くのか?
折角南国に行くのによ。」
チカラが渡した服に着替えたナツキがぼやく。
シルバーの戦闘服だ。
咎めなければ、ハーネスを装着したまま保安検査場へ行っただろう。
『これのどこがいけないんだ?』
検査員にそう聞く筈だ。
空想に顔が綻ぶ。
この男といると、万事この調子だろう。
平穏な毎日より、ハラハラドキドキさせてくれるナツキと一緒にいたい。
「仕方ないだろ。
飛行機に乗るんだから。
沖縄着いたら、好きな格好させてやるから今だけ我慢しろ。
ほらっ、早くブーツの紐を結んじゃえよ。」
無鉄砲な男を宥めるのは楽しい。
チカラは受け取ったハーネスをスーツケースに押し込んだ。
この衣装なら紫に腫れ上がった顔を見ても、誰もが格闘家と思うだろう。
空港に着くと一人の男が待っていた。
制服が似合う爽やかな青年だ。
「幾ら何でも急過ぎるますよ。
平日の夜便だから何とかなったけど、もうこれっきりにしてくれませんか。」
言葉とは裏腹に、青年は笑顔で迎えてくれた。
ネクタイで半分隠れた名札には『タカユキ』の文字が覗く。
襟が食い込んだ太い首に視線が留まる。
かなりトレーニングを積んでる事が分かった。
視線に気付いた青年がナツキを見る。
上唇に舌を這わすと、赤らめた顔を下に向けた。
「ほっ、本当にこれが最後になりそうなんです。
俺、来月転職するので…。」
青年が吃りながら告げる。
(つづく)
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