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Chapter4(利達編)
Chapter4-⑦【ないものねだり】前編
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「おい、これ幾らだ?
俺はどこかの貧乏ババアと違って、ちゃんと金を払うぜ。」
蒼白の顔に笑顔を見せる。
「ちょっと誰が貧乏なのよ!
アタシは人から見下されるのが一番嫌いなの!
これを着た所為で、アタシが持っている物が全て安物に見られたのよ!
こんな屈辱は初めてよ!」
児玉の顔色が黒から赤に変わっていく。
「だって安物だろ。
そのヴィトンのバッグもバッタもんじゃねぇか。」
覆面を被ったナツキは見覚えのあるバッグに視線を向ける。
「ねぇ。なっちゃん、これたったの三千円よ。
どう見ても本物にしか見えないでしょ。」
以前、韓流の追っかけで海外に行った時、嬉しげに見せてきた模造物だ。
「覚えてらっしゃい!
必ず後悔させてやるから!」
児玉は捨て台詞を残すと店から出ていった。
あの様子からすると、嫌がらせが増長するのは目に見えている。
真っ向から仕掛けてくる奴なら捩じ伏せるだけだ。
だが児玉は違う。
どんな汚い手を使ってくるか、想像も付かない。
『絶えず冷静に状況を見据え、最適な行動を選択する。』
神志那の教えを忘れ、熱くなってしまった。
シナリオを立てずに、相手にした事を反省する。
「悪かったな。」
ナツキにしては珍しく神妙に言う。
「えっ、どうして謝るのですか?
いつも言われっ放しで、スカッとしました。」
中嶋が始めて笑顔を見せた。
「いや、売り物を勝手に使っちまったからな。」
ナツキはばつの悪さも手伝い、財布を出す。
「気にしないで下さい。
それ、全く売れてないんで。
社長がこれは売れると言って、ドイツから大量に輸入したのですがさっぱりなんで
す。」
中嶋が照れ臭そうに頬を赤らめた。
「そうか、格好いいと思うがな。」
マラの形が露骨に分かる立体的なTバックが気に入る。
「今の売れ線は小さめの競パンか、ローライズのボクサーです。
こんなえげつないの買う人はいませんよ。」
「そんなもんか。
俺は周りにはこんなの穿く奴ばかりだけどな。」
ナツキには信じがたい情報だった。
突然、チャイムが鳴った。
児玉が戻ってきたかと、ドアを睨む。
学生らしき男が立ち尽くしていた。
「出直した方が…良さそうっね。」
単なる客らしい。
「いや大丈夫。
今日はイベントなんで、ちょい取り込んでるが、普通に営業してるぜ。
なっ!」最後は中嶋に振る。
「あっ、はい、営業しています。
本日はイベントを開催する事になっていまして…。」
しどろもどろの中嶋が取り繕う。
「どんなイベントっすか?」
興味を引かれた客が店内に入ってきた。
中嶋が助け船を仰ぐ目で見詰める。
「今日はな、このTバックの促進販売なんだ。」
ナツキは思い付くままに言う。
「販促って?」
首を傾げた客が聞く。
「まあ、言ってみれば実演販売だ。
買ってくれた客には何でもしてやるぜ。」
中島の不安げな表情は無視する。
「本当に買ったら、何でもしてくれるんすか?」
訝しげな視線を向けてきた。
「ああ、何でもな。」
後には引けないナツキは言い切ってしまう。
(つづく)
俺はどこかの貧乏ババアと違って、ちゃんと金を払うぜ。」
蒼白の顔に笑顔を見せる。
「ちょっと誰が貧乏なのよ!
アタシは人から見下されるのが一番嫌いなの!
これを着た所為で、アタシが持っている物が全て安物に見られたのよ!
こんな屈辱は初めてよ!」
児玉の顔色が黒から赤に変わっていく。
「だって安物だろ。
そのヴィトンのバッグもバッタもんじゃねぇか。」
覆面を被ったナツキは見覚えのあるバッグに視線を向ける。
「ねぇ。なっちゃん、これたったの三千円よ。
どう見ても本物にしか見えないでしょ。」
以前、韓流の追っかけで海外に行った時、嬉しげに見せてきた模造物だ。
「覚えてらっしゃい!
必ず後悔させてやるから!」
児玉は捨て台詞を残すと店から出ていった。
あの様子からすると、嫌がらせが増長するのは目に見えている。
真っ向から仕掛けてくる奴なら捩じ伏せるだけだ。
だが児玉は違う。
どんな汚い手を使ってくるか、想像も付かない。
『絶えず冷静に状況を見据え、最適な行動を選択する。』
神志那の教えを忘れ、熱くなってしまった。
シナリオを立てずに、相手にした事を反省する。
「悪かったな。」
ナツキにしては珍しく神妙に言う。
「えっ、どうして謝るのですか?
いつも言われっ放しで、スカッとしました。」
中嶋が始めて笑顔を見せた。
「いや、売り物を勝手に使っちまったからな。」
ナツキはばつの悪さも手伝い、財布を出す。
「気にしないで下さい。
それ、全く売れてないんで。
社長がこれは売れると言って、ドイツから大量に輸入したのですがさっぱりなんで
す。」
中嶋が照れ臭そうに頬を赤らめた。
「そうか、格好いいと思うがな。」
マラの形が露骨に分かる立体的なTバックが気に入る。
「今の売れ線は小さめの競パンか、ローライズのボクサーです。
こんなえげつないの買う人はいませんよ。」
「そんなもんか。
俺は周りにはこんなの穿く奴ばかりだけどな。」
ナツキには信じがたい情報だった。
突然、チャイムが鳴った。
児玉が戻ってきたかと、ドアを睨む。
学生らしき男が立ち尽くしていた。
「出直した方が…良さそうっね。」
単なる客らしい。
「いや大丈夫。
今日はイベントなんで、ちょい取り込んでるが、普通に営業してるぜ。
なっ!」最後は中嶋に振る。
「あっ、はい、営業しています。
本日はイベントを開催する事になっていまして…。」
しどろもどろの中嶋が取り繕う。
「どんなイベントっすか?」
興味を引かれた客が店内に入ってきた。
中嶋が助け船を仰ぐ目で見詰める。
「今日はな、このTバックの促進販売なんだ。」
ナツキは思い付くままに言う。
「販促って?」
首を傾げた客が聞く。
「まあ、言ってみれば実演販売だ。
買ってくれた客には何でもしてやるぜ。」
中島の不安げな表情は無視する。
「本当に買ったら、何でもしてくれるんすか?」
訝しげな視線を向けてきた。
「ああ、何でもな。」
後には引けないナツキは言い切ってしまう。
(つづく)
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