妄想日記8<<FLOWERS>>

YAMATO

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Chapter12(邂逅編)

Chapter12-①【カモフラージュ】

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雨が降ると、トレーニングに集中出来る。
晴れると、気持ちが日焼けモードになってしまう。
アラサーになっても、色黒に執着してしまうのはゲイ故か。
しかし40度近い中、日焼けするのは体力が消耗する。
その後、ジムへ行っても、気力が続かない。
20代の頃と違うのは仕方ないのだろう。
あの頃は6時間焼いた後でも、筋トレは欠かさなかった。
焼けた筋肉はステータスだったのだ。
 
電話で目が覚めた。
「めちゃ天気いいよ。
プール行く?
だったら付き合うけど。」
時計を見ると、まだ7時だ。
土曜日位ゆっくりしたら良さそうだが、天気がそれを許さない。
安眠を覚えるのは太陽が休みの日だけだ。
「ああ、勿論。
10時に行く。
いつもの場所でな。」
通話を切り、シャワーを浴びる。
熱い湯を浴びると、頭が稼働しだした。
このマンションを購入して一年が経つ。
ゆくゆくはパートナーと住むと思って、2LDKの間取りにした。
しかし運命の出会いはそう簡単ではない。
結局、使わない部屋を持て余す羽目となる。
30代で管理職となり、同期の中では一番早い。
独身の為、金銭面には余裕がある。 
世間的には恵まれているのだろう。
だがこの広いリビングで、寂しさは拭い切れない。
パートナーとは言えなくとも、一緒に食事の出来る相手が欲しい。
知人は沢山いた。
今電話で話したカネチカもその一人だ。
五才下の前では演じまう。
充実した生活を送る幸せな男を。
 
「おはよう。
今日も出してもらっていいの?」
「付き合ってもらってんだから、当たり前さ。」
ホテルのフロントでプール代を二人分払う。
市民プールで会社の人と会ったら面倒だ。
テニス焼けと言っている嘘がバレてしまう。
値段は張るが夏の間はここへ来ていた。
一人で暇するなら、話し相手分の代金を払うのはやぶさかでない。
「ギンはいいな。」
真夏の土曜日だが、ホテルのプールは閑散としている。
空いてるデッキチェアにバスタオルを掛けると、カネチカが言った。
「何がだ?」
「マッチョで金あり、マンション持ちだもん。」
それを聞き、思わず笑ってしまう。 
普通褒めるなら、イケメンマッチョだ。
お世辞にもイケメンを使わないのは誠実だからだろうか?
 
「金があったってモテなければ、関係ないさ。」
デッキチェアに寝そべり、青空に腕を突き上げる。
ロレックスのシルバーが太陽を反射した。
ステータスは腕時計に変わっている。
「ギンはさ、ガツガツしてないのが不思議なんだよな。
同じ恋人なしとは思えないよ。」
日焼けした顔が覗き込む。
小さな競泳パンツを履いている。
汗を吸った生地にペニスが浮かぶ。
「大人の余裕って言うのかな?
焼きに来てキャップにサーフパンツなんて、信じられない。
何処で出会いがあるか、分からないのに。」
「まあな。
けど俺は落ち着いた奴がタイプなんだ。
こんな格好を好きと言ってくれる人が現れるのを待つさ。」
『嘘だ!』
己の発言を内心で打ち消す。
本当はカネチカの様な淫らな競パンで焼きたい。
いや、もっと過激で、変態的な水着を着たかった。
流れている血がカネチカと変わらない。
違うのはお前より、見栄っ張りなだけだ。
財力がそれを上手くカモフラージュしてくれた。
 
(つづく)
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