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Chapter10(霹靂編)
Chapter10-②【ブーツをぬいで朝食を】
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食事を終え、フルーツとコーヒーがテーブルに並ぶ。
「リヒトさんも被ってみますか?」
「ああ…、うん…。」
ワインの所為で身体が火照る。
「では白い方をどうぞ。」
初めて全頭マスクを被ってみた。
メッシュ生地で顔を覆われ、気持ちが高ぶる。
学ランでコスプレしていた時は違う人格になり、大胆な行動が出来る気がした。
この全頭マスクはその思いを何百倍に高めてくれた。
二人で鏡の前に立つと、物欲しそうな視線がブーツに留まる。
黒いマスクが寄ってきた。
顎を突き出して、それを受け入れる。
口内にワインの香りが溢れていく。
リョウキはワインを含んではリヒトに飲ませた。
親鳥が雛へ餌を与える様に。
「おはようございます。」
身体を揺すられて、目を覚ます。
カーテンの隙間から陽ざしが入り込んでいる。
間違いなく朝だ。
キスした事は覚えている。
しかしそれ以降の記憶がない。
そして今はベッドの上だ。
ベッドの脇にブーツが並んでいた。
「朝食の用意が出来ています。
ダイニングへどうぞ。」
黒いマスクが暗い部屋から出て行った。
「直ぐに行くから…。
ソラ…、待ってて…。」
再び微睡みの中へ落ちていく。
「いっ、痛っ!」
目覚めはいつも同じだ。
朝起ちにより、リングが肉に食い込む。
痛みが微睡みを消し去った。
「おはよう。」
ダイニングにはコーヒーの香りが漂っている。
一度起こされたが、二度寝してしまった。
直ぐに起きたのか、数十分経っているか定かでない。
「ごめん、二度寝しちゃった。」
返事はない。
便意を覚え、トイレへ向かう。
トイレの反対側にドアがあった。
ノックをし、ノブを回す。
鍵が掛かっていて、ドアは開かない。
「トイレ、借ります。
あのー、大きい方なのですが、いいですか?」
大声で訴えるが、やはり沈黙が続いた。
ダイニングテーブルにプレートとコーヒーとメモが置いてあった。
『食べてて下さい。
直ぐに戻ります。』
短い文が書いてある。
「いただきます。」
スクランブルエッグは冷めていたが、クリーミーで美味しい。
そうすると、二度目の睡眠は数十分程度ではなさそうだ。
昨夜は記憶をなくし、今朝は二度寝をしてしまった。
だらしない性格だと、思われていそうだ。
少しワインを控えようと、自身へ言い聞かせた。
「ただいま戻りました。」
汗だくのリョウキが帰ってきた。
流石にマスクは被っていない。
直に顔を見るのは久し振りだ。
ランニングシャツとパンツはかなり濡れている。
持っていたバラを花瓶に挿す。
三本のバラとなったテーブルは少し賑やかになった。
「気持ち良さそうに寝ていたので、邪魔しない様に走ってきました。
雲一つなく、既に30度を超えています。
出掛けましょうか。」
「えっ、着替えないの?」
まさか、その格好で電車に乗るのかと、訝がる。
「どうせ、行く途中で汗を掻きます。」
「なら、準備しないと。
それとトイレ借りました。」
「リヒトさんは何も持たなくて大丈夫です。
全て私が用意しました。
さあ、これに着替えて。」
断る回答は用意されていなかった。
リョウキの着ているウエアと色違いだ。
薄手のランニングシャツは裸同然だった。
この格好で何処まで行くのだろうか?
「用意出来ましたか?
シューズは白い方を履いて下さい。」
「はい、今行きます。」
急かされ、違和感は頭の片隅に追いやられた。
(つづく)
「リヒトさんも被ってみますか?」
「ああ…、うん…。」
ワインの所為で身体が火照る。
「では白い方をどうぞ。」
初めて全頭マスクを被ってみた。
メッシュ生地で顔を覆われ、気持ちが高ぶる。
学ランでコスプレしていた時は違う人格になり、大胆な行動が出来る気がした。
この全頭マスクはその思いを何百倍に高めてくれた。
二人で鏡の前に立つと、物欲しそうな視線がブーツに留まる。
黒いマスクが寄ってきた。
顎を突き出して、それを受け入れる。
口内にワインの香りが溢れていく。
リョウキはワインを含んではリヒトに飲ませた。
親鳥が雛へ餌を与える様に。
「おはようございます。」
身体を揺すられて、目を覚ます。
カーテンの隙間から陽ざしが入り込んでいる。
間違いなく朝だ。
キスした事は覚えている。
しかしそれ以降の記憶がない。
そして今はベッドの上だ。
ベッドの脇にブーツが並んでいた。
「朝食の用意が出来ています。
ダイニングへどうぞ。」
黒いマスクが暗い部屋から出て行った。
「直ぐに行くから…。
ソラ…、待ってて…。」
再び微睡みの中へ落ちていく。
「いっ、痛っ!」
目覚めはいつも同じだ。
朝起ちにより、リングが肉に食い込む。
痛みが微睡みを消し去った。
「おはよう。」
ダイニングにはコーヒーの香りが漂っている。
一度起こされたが、二度寝してしまった。
直ぐに起きたのか、数十分経っているか定かでない。
「ごめん、二度寝しちゃった。」
返事はない。
便意を覚え、トイレへ向かう。
トイレの反対側にドアがあった。
ノックをし、ノブを回す。
鍵が掛かっていて、ドアは開かない。
「トイレ、借ります。
あのー、大きい方なのですが、いいですか?」
大声で訴えるが、やはり沈黙が続いた。
ダイニングテーブルにプレートとコーヒーとメモが置いてあった。
『食べてて下さい。
直ぐに戻ります。』
短い文が書いてある。
「いただきます。」
スクランブルエッグは冷めていたが、クリーミーで美味しい。
そうすると、二度目の睡眠は数十分程度ではなさそうだ。
昨夜は記憶をなくし、今朝は二度寝をしてしまった。
だらしない性格だと、思われていそうだ。
少しワインを控えようと、自身へ言い聞かせた。
「ただいま戻りました。」
汗だくのリョウキが帰ってきた。
流石にマスクは被っていない。
直に顔を見るのは久し振りだ。
ランニングシャツとパンツはかなり濡れている。
持っていたバラを花瓶に挿す。
三本のバラとなったテーブルは少し賑やかになった。
「気持ち良さそうに寝ていたので、邪魔しない様に走ってきました。
雲一つなく、既に30度を超えています。
出掛けましょうか。」
「えっ、着替えないの?」
まさか、その格好で電車に乗るのかと、訝がる。
「どうせ、行く途中で汗を掻きます。」
「なら、準備しないと。
それとトイレ借りました。」
「リヒトさんは何も持たなくて大丈夫です。
全て私が用意しました。
さあ、これに着替えて。」
断る回答は用意されていなかった。
リョウキの着ているウエアと色違いだ。
薄手のランニングシャツは裸同然だった。
この格好で何処まで行くのだろうか?
「用意出来ましたか?
シューズは白い方を履いて下さい。」
「はい、今行きます。」
急かされ、違和感は頭の片隅に追いやられた。
(つづく)
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