妄想日記4<<New WORLD>>

YAMATO

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Chapter6(Summer Tree編)

Chapter6-③【Maybe Tomorrow】

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「あんたは何センチあるんだ?」
喧騒の中、リッキーが大声で聞く。
「計った事がないから分からん。」
タケルが素っ気なく答える。
リッキーが臆面もなく、タケルのパンツに手を突っ込む。
「なかなかのデカさだが、俺のブツの比じゃねぇな。」
リッキーは不敵に微笑むと、勢い良く手を抜く。
反動でタケルの巨根が、大勢の観客の目に曝された。
怯む事のない一物が威風堂々とライトを浴びる。
「お前のペニスはデカいだけで、勇ましくはないんだな。
そんなジッパーの下で収まってる様じゃ。」
タケルが挑発する。
「んな馬鹿な!
俺のブツは剛健さも兼ねてるんだ。」
リッキーが向きになって言い返す。
肌を赤く染め、力んでみせる。
ジッパーの隙間から覗く肉棒も赤味が増す。
遂にジッパーが決壊した。
巨大な亀頭が現れ、腹を打つ。
見事なシルエットがタケルの物と対峙した。
「こんな所で兜合わせするとは思わなかった。」
タケルが苦笑する。
「ああ、俺もだ。
あんたのブツとはイーブンだな。」
リッキーも笑う。
二つの亀頭が重なり合った。
 
照明が一気に落ちて、DJブース辺りが騒がしい。
「おい、ヤバいぜ。
ずらかるぞ!」
ミサキが手を引っ張る。
「ちょっとやり過ぎたみたいだな。
今度、ゆっくり話そう。」
タケルはリッキーのペニスを握る。
「そうだな。あんたも同じ境遇らしいからな。」
リッキーの亀頭が掌を押し返してきた。
タケルは久し振りに全速力で走る。
九月の夜風が心地好い。
子供染みた悪さを咎められ、逃げ回るのはいつ以来だろうか?
「久し振りに楽しい夜だった。」
肩で息するタケルは車の陰で言う。
「たまにはこんな馬鹿げた事もしてみるもんだな。」
ミサキも楽しげだ。
 
「あいつさ、父親の顔を知らないんだ。」
ミサキが常夜灯を見ながら口を開いた。
「えっ?」
予想外の話に思わず聞き返す。
「あいつの母親はドブ板のライブハウスで働いていたんだ。
そこはベースの奴等の溜まり場で、特に黒人が多かったらしい。
珍しく来た白人と恋仲になったんだけど、任期が過ぎると、とっとと帰っちまったん
だ。」
ミサキの顔からは笑みは消えていた。
「あいつ今でも母親と横須賀に住んでるんだ。
凄い美人なんだぜ。
って、これはレオの見解だけどな。」
ミサキが態とらしく笑う。
同士と思われたリッキーとの相違点を知る。
「そうか…、横須賀か。」
遠い昔に通った事を思い出す。
忙しい両親は夏休みになると、タケルを家政婦に預け、葉山の別荘で過ごさせた。
小学校低学年の時、タケルを夢中にする出来事があった。
バルセロナオリンピックだ。
外国人選手を担ぎ、畳に叩き付ける古賀選手をテレビにかじり付いて応援した。
一番高い表彰台に立つ古賀選手を見て、目から鱗が落ちた。
学校で虐められて、泣いてるだけじゃ、ダメなんだ。
幼いタケルは遠い異国からメッセージを受け取った。
 
家政婦に柔道を習いたいと訴える。
賛成はしてくれたが、横浜の実家に戻ってからという条件が付いた。
しかし夏休みが終わる一ヶ月先が待ちきれない。
タケルは今すぐ習いたいと駄々を捏ねる。
家政婦は仕方なく、柔道場のある横須賀まで車を走らせた。
見学だけという約束で道場に入る。
同じ年頃の子供達が道着を着ていた。
中には黒人の子供もいる。
タケルが入って行くと、皆が振り向き挨拶をした。
大人も子供も礼儀正しく、皆凛々しく見える。
ここには虐めも仲間外れもない事が犇々と伝わってきた。
家政婦の制止を振り切って、入門してしまう。
急き立てられた幼いタケルに制止は無意味だ。
初めて明るい明日が見えたのだから。
それから高校に入るまで横須賀に通い続けた。
雪が降ろうが、台風が来ようが休まない。
スイミングスクールとの両立は大変だったが、道場から得る物は大きかった。
「なあ、今度横須賀に行ってみないか?」
唐突な思い付きで誘ってみる。
「そう言うと思ったよ。」
ミサキには唐突ではなかったらしく、笑顔で頷いた。
 
 
(つづく)
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