137 / 203
3.喜多村本家に居候
137.露天風呂
しおりを挟む「急ぎ用意させましょう。日没後は農婦たちも風呂に入りません。入っていても少数です」
「えっ、いいの?」
あいにく、夜空しか見えませんが、とサザレさんは申し訳なさそう。でも、それで充分ですよ。
「お委せください」
急遽、農場の露天風呂に入るのが決定する。
初露天風呂、楽しみだ~!
「そなた、そんなに興奮して大丈夫か?」
「そ、そんなに興奮してる?」
自分ではそうでも無いつもりだけど……興奮しているのは間違いない。
「外で風呂に入るのが、それほどのことですか?」
レニ様は懐疑的。
「まあ、入ってみれば分かります」
「外っていいわね~」
「うん……」
「でも農場……」
幼女ーズももれなく付いてくる。
「露天風呂に入りたいとは……」
「さすが、キョウ様」
「まさか、出かけてまで入りに行くとは」
「期待を裏切らない」
「あの風呂では、いかがして敵を防ぐ……」
「お護りするには、あと四人は欲しいな……」
護衛・警護たちまで付いてくる。だから壁内ではめったな事起こらないって。
ボクたちは、二台のワゴンに乗り込んで入出門へ少し戻り、横路から山を登って行く。
林の中を通って丘陵を舐めるように奥に進むと牛舎などの並ぶところに着く。
その横を通り抜けて宿舎のとなり、屋根だけの四阿みたいな前に停まる。
「ここ?」
「はい。その衝立のような壁の中で着替えます」
「暗いね。月でも出てればいいのに……」
「そうですね……。もうしばらくすると欠けた月が出ますが。こちらには裸電球くらいしか照明がありません」
「ふ~ん」
「一人で先に行かない!」
「そうそう」
「おしおき……」
「ああ、ゴメンゴメン」
子供たち、ほったらかしだった。
「キョウよ、急くでない」
「義兄上、お待ちを」
ミヤビ様たちも焦って付いてくる。
ボク、かなり舞い上がってるみたい。
「それで、その籠に服を容れるの?」
「はい、こちらの分だけでは足りませんので」
いっぱい荷物を持ったサザレさんが不思議だったけど、そう言うことね。
ボクたちは、着替えや湯上がり用のローブをもらったカゴに容れていく。
「こちらを着けて、お入りください」
「湯浴み着?」
「外は冷えるので湯冷めせぬように」
「なるほど」
「あの~、これは何事です?」
「連絡していたはずですが」
かなりラフな恰好の女が現れて訊いてくる。オーバーオール姿で農場の管理者かな?
レニ様が恐る恐る脱いでいた服を慌てて繕う。
「あなたも聞いているでしょう? 滞在しておられるキョウ様が露天風呂を所望されて、こちらに赴いたのです」
「キョ、キョウさま?」
「分かったならお下がりなさい」
「は、はい。マキナ様のあのキョウ様が……。あ、あの、一言ご挨拶を……」
「無礼ですよ──」
「なに?」
「──キョウ様?」
「あ~、この農場を預かります。安倉と申します。あ~、このような所にお越しくださり、ありがとうございます」
「ごめんなさい、騒がせて。露天風呂があるって聞いてお邪魔しました」
「い、いいえ。ようこそいらっしゃいました。存分、お寛ぎください……。可憐でお可愛らしい……」
「は?」
「い、いえ。それでは私はこれで……」
「ありがとう」
ふらふらしながら安倉さんは帰っていった。大丈夫かな?
「義兄上、余は心臓が口から飛び出る心持ちでしたぞ」
「大げさな~。こちらがお邪魔してるんですから、これくらいのハプニングは許容しなきゃ」
「ふ~む……なるほど。さすが義兄上」
いや、感心されるほどでもないけど。露天風呂は不特定の人との出会いなんだから。
「うわ~、結構大きい。十数人入れるね」
「あ、義兄上、壁がありませぬ」
「そうだね」
「そうだね?……」
「露天風呂だから。屋根も無いところがあるよ」
「そのようなところでは、丸見えではありませぬか!」
「大丈夫。相手も丸見えだから」
「…………」
あら。ぱっくり口を開けて、いかにも呆気に取られてレニ様が固まる。
「そなた、冷えるぞ。早く入らねばな」
「かけ流しのようですけど上がり湯で入ってください」
「う、うむ」
ミヤビ様、上がり湯しないつもりだったな。なにげにミヤビ様とは初混浴だな。
「まずは、マナちゃんかな~?」
「うん」
こちらは、イスがないので跪いて洗うしかないね。おまけにスポンジとかも無い。仕方ない。
「義兄上、それがぬるぬるでしょうか?」
「そうですよ~」
「……違う」
「そこな子は違うと申してますが?」
「だ、第一段のぬるぬるかな~?」
「そう、なのですか……」
「そうそう」
レニ様、誤魔化されてちょうだいよ。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる