上 下
133 / 203
3.喜多村本家に居候

133.タマ・ミナの徘徊

しおりを挟む


「なにこれ、豪華ごうかすぎるでしょ」
「まさに個室」
 トイレに入って二人はびっくりする。一人で使うには似つかわしくない〝個室〟が目の前に広がっている。

「これだけ広いと居心地悪いでしょ」
「会議できる勢い」
「あ~、本当。もしかしたら余所よそでしてた話合いをトイレで継続できるように大きくしたのかも」

「むう~。むかし王様の用足しの介助かいじょする役目があった」
「へ、へえ~。くさくて大変だったろうね」
「うん。その役目が側近で一番えらかった」
「くさい仲だね。それが?」
「単なる豆知識。我慢ガマンの限界だから出てって」

「え~、居ちゃだめ?」
「だめ」
「でも、もうショーツ下ろしてるじゃん」
「だからもう限界」
「早くして? 私も限界に近づいてきた」
「となりへ行け」
 そして交代して用を足した二人。

「くさい仲になっちゃったね?」
「くさいのは水無ミナちゃん。私は、くさくない」
「ひどい。でも広いトイレいいな~。一緒にできて」
「私は願い下げ。でもこのトイレで一人はさびしい」
 トイレを終えた二人は屋敷探検に脱線する……。


 ◇

「みんな部屋に戻ってて」
 二階に上がるとタンポポちゃんたちに告げる。

「きっと夕食に来てよね?」
「うん、来る」
「待ってる」
「分かったよ。また、あとで」
 案外、聞き分けよく幼女たちは解放してくれる。

義兄上あにうえ、子供たちのところに行ってはなりませぬ」
「えっ、どうして?」
 二階から五階に向かうエレベーター内でレニ様が言う。

「子供の言うことなど聞く必要はありません」
「それは答えになってませんよ」
「と、に角、子供のそばに行くと道をみ外します」
「外しません。一緒に遊んでなぐさめてあげてるんです」
 なんせ遊んでると生き生きしてるもん。


「私は、サキちゃん──マサキ様に報告してきます。お部屋でお待ちください」
も参りますぞ」
 五階に上がり部屋の前で、報告に向かうって言うとレニ様まで付いてくるって言う。

「いえ、些末さまつごとは私一人で充分です」
「報告のちは、すぐ部屋に戻られますか?」
「はい、もちろん」
「分かりました。待っております」
 やっとレニ様が放してくれる。


「サキちゃん、ただいま戻りました」
 最奥さいおうのドアをノックして部屋に入る。

「無事、回収できたようじゃな?」
 サキちゃんが奥から応接室に現れる。

「回収って……まあ、そうだけど。車とかいろいろ、ありがとうございました」
「うむ、いつもそう殊勝しゅしょうであれ」
「ええ~? いつもボク、殊勝だと思うけど」
「まあよい。それで彼奴あやつらはいつまでめ置くのじゃ?」
 あ~、それもあるか……。

「週末だし、日曜までかな? 日曜の朝くらいに帰れば月曜に間に合うし」
 ボクもマキナと一緒に帰りたいところだけど……。

「して、レイニ様はいかがであった?」
「いかが、とは?」
 ソファーに座り直して紅茶をいただきながら話の続きをする。

「その、ご機嫌きげん、じゃ」
「まあまあじゃない?」
「まあまあではいかん。決して機嫌をそこねるでないぞ」
「そんなこと言っても我儘わがままなんだもん。四六時中まとわりつく勢いだし」
 タンポポちゃんたちのことも指図するし。

「反論されず生きて来られたから仕方なかろう──」
 と、突然、遠くからピーピーとアラームが鳴る。奥のリビングからかな?

「──しばし待て」
 うんとうなずく。サキちゃんがリビングへ消える。

「キョウよ、友とやらが一階のシアターで悪戯いたずらしておる。止めてよ」
「えっ、そうなの? 分かった、行ってくる」
 応接室に戻ってきたサキちゃんが告げる。ボクはサキちゃんの部屋を出ると、急ぎ一階に降りてシアターをのぞいてみる。

「みんな、何やってんの?」
「──ビクッ」
「キョ、キョウちゃん。どうして?」
 サキちゃんに言われた通り、シアターでタマちゃん水無ミナちゃんが下手しもての装置をいじってる。

「どうして、じゃないよ。ここにはこわ~い人がいるから、うろちょろしない。で、何してんのよ?」
「キョ、キョウちゃん、さがしてた」
「うんうん」

「ウソばっかり。この一階には部屋はないから」
「そ、そうみたいだね」
「へ、部屋が無いのを確認してた」
「なにそれ? もう、付いてきて」
 二人を連れて五階に上がる。

「ちょっと、ここで待ってて」
 自室にてられた部屋の前で二人に待っててもらう。

「ただいま帰りました。レニ様?」
 となりのリビングに顔を出してレニ様を確認する。

「おお、義兄上あにうえ、待っておりましたぞ」
 それほど、ご機嫌をそこねた感じはない、な。

「お待たせして申し訳ありません。友達を連れて来ましたので私はとなりの応接室におります」
「そんな……。も応接室におります」
「は、はあ~? では、マサキ様に知らせてきますので、またしばしお待ちを」
「またですか~?」

「ちょっと、あれで紅茶でも頼んで待ってて。それからレニ様が来られるから相手してて。じゃ」
 応接室に二人をまねき入れ、メイドコールを示して、あとをまかせる。

「うえ~?」
「に、逃げないでよ」
「逃げるとは何じゃ」
「「ひえええ~」」

 応接室にレニ様が現れたところで脱兎だっとのごとく、サキちゃんの部屋へ走る。いや、走ってない。小走りしたよ。

「はあはあはあ~、サキちゃん、二人回収して部屋に連れてきた……」
「そうか……悪さをせぬよう言いふくめておれ」
「それだけ?」
「それだけじゃ。ほかに何がある?」
「はあ~、分かった」
「くれぐれもレイニ様のご機嫌を──」
「損ねません。努力はしますけど」
「これ、必ず、じゃぞ?」

 返事しないでサキちゃんの部屋をあとにする。三方も四方しほうも相手してられないよ……実際。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

女子に虐められる僕

大衆娯楽
主人公が女子校生にいじめられて堕ちていく話です。恥辱、強制女装、女性からのいじめなど好きな方どうぞ

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

二十歳の同人女子と十七歳の女装男子

クナリ
恋愛
同人誌でマンガを描いている三織は、二十歳の大学生。 ある日、一人の男子高校生と出会い、危ないところを助けられる。 後日、友人と一緒にある女装コンカフェに行ってみると、そこにはあの男子高校生、壮弥が女装して働いていた。 しかも彼は、三織のマンガのファンだという。 思わぬ出会いをした同人作家と読者だったが、三織を大切にしながら世話を焼いてくれる壮弥に、「女装していても男は男。安全のため、警戒を緩めてはいけません」と忠告されつつも、だんだんと三織は心を惹かれていく。 自己評価の低い三織は、壮弥の迷惑になるからと具体的な行動まではなかなか起こせずにいたが、やがて二人の関係はただの作家と読者のものとは変わっていった。

クラスの仲良かったオタクに調教と豊胸をされて好みの嫁にされたオタクに優しいギャル男

湊戸アサギリ
BL
※メス化、男の娘化、シーメール化要素があります。オタクくんと付き合ったギャル男がメスにされています。手術で豊胸した描写があります。これをBLって呼んでいいのかわからないです いわゆるオタクに優しいギャル男の話になります。色々ご想像にお任せします。本番はありませんが下ネタ言ってますのでR15です 閲覧ありがとうございます。他の作品もよろしくお願いします

転職してOLになった僕。

大衆娯楽
転職した会社で無理矢理女装させられてる男の子の話しです。 強制女装、恥辱、女性からの責めが好きな方にオススメです!

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

処理中です...