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2.新居からの新生活

36.マキナと折衝します

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「それで、自宅凸──自宅訪問でしたか? ワタクシも付いて行きたいですことよ」

「それは……」

 まだ覚えてたか、アンナさん。それは返答に困る。

「そうそう。お母さんと連絡つかなそうだよね? 端末をよく見てる」

「そうそう」とタマちゃんがミナちゃんを援護する。

「うぐっ! べ、別に実家に帰らなくても用事はあるから──」

 母に連絡がつかないのをさっしていたのか。ミナちゃん、目ざとい。

 断わるにしても良い理由が思いつかない。

 よしんば男子は受入れたとしても、断われと言われている女子が黙っちゃいないよな~。

 付いてくると強請ねだってきても、マキナは許可してくれない。

「おいおい。新婚宅に侵入するのは感心せんな。そうだなぁ? 先生も監督するため同行してやろう」

「僕も見てみたいな」と羽鳥来はっとりさんが口をはさむ。

「わ、私たちも、お願いします」

「お願いします」

 文芸部の二人も参戦してくる。取材しようとしてるでしょ? もう新聞部に改名すれば?

「男子は許可してくれると、思う。でも、女子はムリ……たぶん」

「男子は良いなら、私も!」

 離れて食事してた五月ヶ原くんが突進してきた。ちゃっかり、話聴いてたのか。

 君って、どちらかと言うとボクに関心なかったよね?


 どうしよう。もう丸投げするか。結果は分かってるけど。

「主人にいてみます」

〔自宅訪問者は、水無月みなつきユウナ、真城しんじょうタマキ、羽鳥来はっとりカンゾウ、担任の五条ツバサ先生。ちがうクラスの五月さつきヶ原ユキト、緋花ひばなホムラ、紅月こうげつミント、そしてアンナ・クライネ、ビビ・マックラン〕

 マキナに裁可さいかあおごうと訪問希望者を羅列られつして、すぐさま送ってみた。

 同時に確認したが当然のように母の返信はなく、この時間ならと電話をかけてみる。

『……もしもし? どうしたの?』

 ややあって、電話がつながり母がでる。

「母さん、連絡見てくれた? 荷物を取りにいきたいんだけど」

『えっ、そ、そうね……ちょっと今週は……。週末くらいはダメ?』

「週末は、ちょっと……。来週ならいけそう?」

『そ、そうね……来週、なら……』

「分かった。また行く前に連絡する」

 週末は義実家に訪問しなきゃいけないからダメだ。行けば一泊するだろうし、家に帰る時間がない。

 母の歯切れの悪さから来週も期待できそうにない感じがする。

 一体、母に何が起こってるんだろ?

 もやもやしながら電話を切ると、マキナから返信が来ていた。

〔いいだろう。しかし留学生はダメだ。下校に合わせてむかえを寄越よこす〕

 案外はやく答えが返ってきたな。思いもよらず女子にも許可がでる。

 しかし、アンナさんたちはダメなのか。

「返事、来た?」

「うん……」

 携帯端末の画面を皆に向けて見せる。

「おお、許可でたんだ、よな?」

「なんですのよ。留学生はダメとか差別ですことよ!」

 皆一様に喜んでいる。特に新聞部もどきの文芸部二人は喜色きしょくにあふれている。反してアンナさんは憤慨ふんがいしている。

 確かに外交的にマズいかもだけど、一介いっかいの会社員の判断だもの。

 些細ささい粗相そそうで、不興ふきょうを買うと本当に外交問題になるかも知れないし妥当だとうかも。

「アンナさん、ごめんなさい。また、何か聞けることがあれば聞くから」

 一応、アンナさんにあやまっておく。次は聞ける要求がくることを祈る。

 悔しがるアンナさんを見て、五月ヶ原くんは、ざまあって顔でうすわらいしている。

 熱望していた彼女が行けないのは、かなり滑稽こっけいかもしれない。

「迎えが来るって、来客用の駐車場だよな?」

 五条先生が確認してくる。

「そうですね。たぶん、そうでしょう」

 まあ、そうだろうと思うので肯定こうていしておく。

「皆、放課後、来客用の駐車場に集合!」と、五条先生が声を上げる。

「「「おう!」」」と皆が唱和しょうわする。

「楽しみ」と、タマちゃんもつぶやく。


 午後の授業を終えて、同行する皆からビンビンと熱意が伝わってくる。

 五条先生は、ホームルームに手荷物を持って来ていて職員室に返らぬ覚悟かくごの臨戦態勢だ。

 放課後は、教員の委員会とかあるんじゃないですか?


「ハァ~」

 ホームルームが終わるとため息ついて、のろのろと荷物をまとめて席を立つ。

「さあ、行こうか!」

「行こう」

 ミナちゃんから声がかかる。元気だね。タマちゃんも気合いが入ってる。

 ゆっくり歩くボクにれて、二人に押され教室を出て駐車場に向かう。

 後ろに五条先生、羽鳥来はっとりさん。となりのクラスに見に行くまでもなく、緋花ひばなさん、紅月こうげつさんに五月ヶ原くんが付いてくる。

 アンナさんは、ビビさんをしたがえハンカチを食い千切らんばかりにんで悔しげに付いてきていた。
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