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1.お見合いからの新生活

06.新居での夕食

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 調理のお手伝いをやめて、家から取って来てもらった荷物を二階の部屋に運び入れてもらう。マキナさんは荷物を置くと出ていき、おそらくとなりの部屋へ。

 荷物をベッドに広げ簡単にチェックする。うん、明後日あさっての登校には支障ししょうないかな?

 足りないとまたマキナさんにたのむか自分で取りに行けばいい。

 急いで普段着に着替えるとダイニングに取って返した。


 ポークジンジャーがいため上がって夕食が完成。テーブルに料理を並べながら赤井さんに、マキナさんを呼んで来てとたのまれる。

「マキナさん、食事ができました、ダイニングに来てください」

 マキナさんを呼びに二階に上がり、部屋のドアをノックして食事ができたと伝える。

「はい。今、行きます」

 返事をもらってダイニングに戻る。追っかけ、マキナさんもダイニングに入ってきた。

「「いただきます」」

 マキナさんと対面に座って食べ始める。赤井さんはひかえ室で、一緒には食べないのだそう。

 一緒に食べればいいと思うけど、それがここの流儀りゅうぎなら口出しできないかな。

 やっぱりマキナさんはバクバク食べる。うらやましい。

 食事をませ食器を片付けると、コーヒーをんで二人の間に置く。この機会に今後の予定があるのならいておこうかな?

「明日とか予定はありますか?」

「う~ん、特にないな。母には言ったけど、本家にはまだ連絡してないし、来週末にでも一緒に行ってもらうかも知れないね」

「そうなんですか」

「ああ、そうそう。服を買いに行こうか。本家に行くには着物かなあ? まあドレスでもいいけど、訪問着とか持ってるかい?」

「いえ、持ってないと思います」

 たぶん、持ってない。マキナさんの要求ようきゅうするレベルのものは。

「制服じゃあ、ダメ、ですよね……」

「ふむ……面白い。君は誠心せいしん女学院──今は誠臨せいりん学園だったね。叔母おばよろこぶかもね」

「叔母……そう言えば、理事長の名前が、喜多村──」

「喜多村アオイ。私の叔母だよ」

 はあ~世間はせまいなあ……。うん、たしてそうなのだろうか?

 少し懐疑かいぎ的にマキナさんの顔色をうかがった。

「ま、まあ、服は明日、見繕みつくろいに行こう……」

 なんか誤魔化ごまかしてそう、この人。かと言って何のどこら辺を誤魔化しているのかは分からないけど。

 マキナさんと理事長先生が親族なのは分かった。

 出来すぎてる、このお見合いにはうらがあると見たね、ボクは。

「分かりました」

「さ、さて私は部屋に戻る。君も部屋で片付けをした方がいいんじゃないか?」

「そうですね。食器を洗ったら上がります」

「いや、君にそんなことを求めてはいない。あ~その……婦夫ふうふのだな……」

 顔を赤らめて口ごもるマキナさん。分かってますって。婚姻こんいん要件ようけんにありましたね。

「子作りを頑張がんばれってこと、ですよね? まあ、それしか求められて無いようで少しかなしいですが」

「うん。まあそうなんだが、生々しいな」

「条件をつけた方が言いますか? 保健体育の成績は良かったので任せてください。実践じっせんはしていませんけど──」

「ブフッ!」

 きちゃない、この人。いや、きつけられるのはご褒美ほうび

「そ、その、お風呂が入ったら赤井さんがしらせてくれるから先に入ったらいい。私は部屋に居るから」

「分かりました。一緒に入らなくていいんですか?」

 再びマキナさんが噴いた。ちょっとあおりすぎたかな。まだまだ、マキナさんとの距離きょり感が測れない。

 ダイニングを出ていく姿を追って、ボクは洗い物に立った。


「ああ、洗い物はやりますので、くつろいでいてください」

 洗い物をしていると、ダイニングに返ってきた赤井さんに開口一番、そう言われた。

「家では、していたのでかまいませんよ。これって赤井さんの仕事を邪魔じゃましてるのかな?」

「邪魔ではないですよ。でも未来のおく *にさせられませんから……」

「お、奥様? ボク、そんな大層たいそうなものじゃないです」

 顔が沸騰ふっとうするようになって、しおれそうだよ~。

「あら、おぼこ *ですねえ。喜多村家の人の *になる御方おかたは奥様ですよ?」

 そうか……まあ、そうなんだろう。今さらながら大変なところに来てしまった。

 まあ、いっぱいすごいところを見たから分かりそうなものだけど。このまま婚姻こんいん成就じょうじゅすると通ってる学校の理事長先生とは叔母しゅくぼ義甥ぎせいの関係になるんだし。


※注:奥様、妻は男の呼称。対して女性は旦那とか呼ばれます。(おっと、一夫多妻が使えなくなった……)

※注:「おぼこい」は関西地区の方言で、初々しい、世慣れしていないという意味。老若男女くべつなく使える。
 参:「おぼこ」すれていない人。きむすめ。
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