神獣からの贈り物

オオカミの贈り物

3 君の名前

「ただいまー」
 その後、女の子の隣をついて歩き、家に着いた。
 木材を活かした、素敵な家だった。二階建てで、小さな庭の奥に玄関があった。全体的に白色で塗られていて、明るめの木でできた大きなウッドデッキが2階にあり、とてもオシャレな家だ。
 玄関に置いてあった名札に、『山野』と書いてあった。これで名字は分かったぞ。
 僕は女の子の後について家に入った。一応、玄関に置いてあったマットで足を拭いた。神獣だから汚れはしないんだけど、マナーってやつさ。
 「おかえりー！今日も遅かったね」
 お母さんが奥から出てくる。優しそうな人だ。
 「今日は風奏ふうかの好きなオムライスよ」
  靴を脱いでいた女の子は顔を上げて、嬉しそうに
 「やった。着替えてくるね！」
 と言って、２階に上がっていった。
 僕はお母さんの顔を見上げた。お母さんは、女の子を優しそうな笑顔で見つめていた。そういえば僕のお母さんも、あんな感じだったっけ。

 僕は、そのまま女の子の部屋に入ろうとしたが、いきなり服を脱ぎ始めたため、大慌てて部屋から出た。
 あっ、壁、すり抜けれてよかった。
 着替えている間、特にすることもなかったから、女の子のことを考えることにした。
 まず、女の子の名前。さっきお母さんが『風奏』って呼んでたから、きっとそれだ。あだ名って可能性もあるけど、それはまあおいおい分かるだろ。
 お母さんは優しそうだし、風奏もそんなにお母さんに対して嫌な感情は持ってなかった。ってことは、風奏が悲しいのは家が関係してないってことなんじゃない？
 安直すぎる？んでも初日でこれくらい大胆にいかなきゃ。制服着てたから、きっと学校にも行くだろう。明日、ついて行ってみよう。
 学校って楽しそうだよな。賑やかで、みんな笑ってる。まー、勉強してる時にくらーい心になる人間もちょこちょこいる。さっき走り回ってた時はあんなにキラキラしてたのによ…勉強が嫌いなんだなーって思うくらいにはね。

 考えが横に逸れてきた辺りで、風奏の部屋のドアが開いた。Tシャツにゆるっとした半ズボンだ。どちらもバスケの絵が描いてあるから、バスケ用の服なのかもしれない。
 パタパタと足音を立てながら下に降りていく風奏の後を追って、僕はいい匂いのする1階へと降りていった。

「今日どうだった？」お母さんが、料理をしながら風奏に尋ねる。
「んー、まあ、普通？体育でドッジボールやったんだけどね、私の投げるのが強すぎて相手泣いちゃってさ。」
 「あらま！」
 そりゃ、あらま！ってなるよな。ドッジボールで泣かせるってどんだけ強いボール投げたんだよ…
 「顔には当たらなかった？大丈夫って？」
 「うん、謝ったよ。そしたら、女に謝られたくねーわ絶対次当ててやるから覚悟しろって」
  …ん？ちょっと待って？
 「誰泣かせたのよー、程々にしとかないと、次やり返されるわよ」
 「同じクラスの慶太って子」
 泣かせたの、男か…。
 「」
 ほらお母さんも絶句してるじゃん。