23 / 28
22
しおりを挟む
いつもより長いお辞儀をして、大将はパッと顔を上げた。
「今年はいつもより長かったね」
正直な感想を述べると、大将は苦笑しながらラムネを一口含んだ。
「最後だからね」
「最後?」
「卒業したら県外に行っちゃうからね」
卒業ー常連のアキさんも言っていた言葉だ。
私は今年中学3年生。
学校を卒業したら県外に出る。
とある旅館に住み込みで働かせてもらえることになったのだ。
ずっと海の家で大将が調理する姿を見ているうちに、その世界に興味が湧いた。
調理師免許も何も持っていないから、ここではせいぜいカキ氷しか作らせてはもらえなかったけど、平日の家の炊事担当は自分に任せてもらって、腕をみがいてきた。
私もいずれ人様に調理したものを出して、おいしいと言われるようになりたい。
「私、旅館に行っても夏になったら帰ってきて手伝うよ」
「海の家を?」
「もちろん」
「それはダメだよ」
「え?」
いつも優しい口調の大将が、これだけはキッパリと言った。
「家を出ると決めたら一人前になるまで戻ってきたらダメだ」
今までこんなふうに意見を否定されたことはなかったので、戸惑った。
私は大将に育ててもらって義務教育まで受けさせてもらったけど、それから先は働くつもりでいた。
勉強はそれほど好きでもなかったし、学びたい分野もなかったこと、それに何より育ててもらった恩返しを早くしたかった。
「今年はいつもより長かったね」
正直な感想を述べると、大将は苦笑しながらラムネを一口含んだ。
「最後だからね」
「最後?」
「卒業したら県外に行っちゃうからね」
卒業ー常連のアキさんも言っていた言葉だ。
私は今年中学3年生。
学校を卒業したら県外に出る。
とある旅館に住み込みで働かせてもらえることになったのだ。
ずっと海の家で大将が調理する姿を見ているうちに、その世界に興味が湧いた。
調理師免許も何も持っていないから、ここではせいぜいカキ氷しか作らせてはもらえなかったけど、平日の家の炊事担当は自分に任せてもらって、腕をみがいてきた。
私もいずれ人様に調理したものを出して、おいしいと言われるようになりたい。
「私、旅館に行っても夏になったら帰ってきて手伝うよ」
「海の家を?」
「もちろん」
「それはダメだよ」
「え?」
いつも優しい口調の大将が、これだけはキッパリと言った。
「家を出ると決めたら一人前になるまで戻ってきたらダメだ」
今までこんなふうに意見を否定されたことはなかったので、戸惑った。
私は大将に育ててもらって義務教育まで受けさせてもらったけど、それから先は働くつもりでいた。
勉強はそれほど好きでもなかったし、学びたい分野もなかったこと、それに何より育ててもらった恩返しを早くしたかった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる