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夕方、台風の影響か少し風が強くなってきたのを機に、店内で騒いでいたお客さんが1人また1人と離れていき、やがて常連の1人が「また来年!」と声を掛けたのを最後に誰もいなくなった。

来年・・・そう、来年までもうこんな忙しい日々を過ごすことはないのだ。

そう思うとホッとするような気もするし、気が抜けて物寂しいような気もする。

さっきまで賑やかだったのが嘘みたいに、今は波の音しか聞こえない。

机を端から端まで綺麗に拭き切って今年も終わりだ。

「終わったよ」

体を乗り出して調理場の方へ声を掛けると、いるはずと思っていた大将はそこにいなかった。

調理場もすっかり綺麗に片付いているので、ゴミ捨てに行ったのかもしれない。

ふー、やれやれ。

私はたくさんある席の中から1つ適当に選んで腰を下ろした。

夕焼けはほとんど雲に覆われていて、もう辺りは薄暗くなってきている。

そこへ静かに押し寄せる波。

目を閉じてザザーっという一定音を聞いていると、夢の世界へ突入していけそうだ。

が、人の気配がして目を開けた。

大将が戻ってきていて、私の横に立っていた。

「お疲れ、なっちゃん。今年もいっぱい働いてくれたな」

褒められるのが照れくさくて、私は勢いよく立ち上がった。

「よし、帰ろう」

「まぁまぁそんなこと言わずに。たまには語り合おう」

こんな薄暗い中で?と思ったが、大将が座るので私も再び腰を下ろした。
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