上 下
12 / 14

11

しおりを挟む
カナはそれからしばらく鏡台の前で化粧をしていた。 

朝もしているから化粧直しと言った方がいいのか、とりあえずずっと化粧道具を触っていた。 

その途中で携帯が鳴り出した。

カナの携帯だ。 

浮気相手か?

オレは胸が高鳴った。

「あ、ケイコ?どうしたの?」

オレの予感は外れた。

どうやら女友達らしい。 

「今?メイク直し中。彼氏、外出中だから今のうちに直しておかないと」

「だってやっぱ帰って来た時に化粧崩れの顔で出迎えとか、幻滅されるじゃん」 

「最近夜友達とご飯行くこと多いんだけどね。え?浮気?そんなのする人じゃないよ。信じてるもん」

カナの言葉を聞くだけで、相手とのやりとりは何となく理解できた。 

そしてそれを聞いているうちに、カナの浮気を疑う気持ちが徐々に消えていった。

男じゃない。

話し相手はただの女友達だ。

「じゃあね。またいいコスメがあったら教えてね」

電話はすぐに終わった。 

カナは電話をテーブルに置くと、おもむろに鏡台下の引出しを開けた。

そこから何かを取り出し、ぶつぶつつぶやいている。 

手にしていたのは、いつかカナにあげた願いが叶うという赤い葉だった。

「今日も事故とかしないで無事に帰って来ますように」

オレの安否を願っているのを聞いてオレは無意識に部屋の中へ戻っていた。

「あ…れ?シン、出かけたんじゃなかったの?」

まさかオレが覗き見していたなんて知る由もないカナは慌てふためいた。

オレはそんなカナをなりふり構わず抱き締めた。

「え?何?何?」

カナはさらに慌てふためく。

「ゴメン、カナ!本当にゴメン!!」 

「え?何が?何謝ってんの?」

オレは自分が無性に恥ずかしくなった。 

カナはこんなにもオレのことを想ってくれていたのに、少しの気の迷いで他の女と浮気して、しかもカナに疑いの目を向けて。

でもオレはこの時に自分の愚かさに気づくことができたんだ。

もっと遅かったら取り返しのつかないことになっていたよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

*いにしえのコトノハ*3 too late to do

N&N
青春
判断は何でも早いに限る

*いにしえのコトノハ*4 1/2

N&N
青春
Loveじゃなくて、Likeじゃなくて、

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

*いにしえのコトノハ*2 レインドロップス

N&N
青春
私、後悔まではしてないから

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

処理中です...