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10.私が欲しかったもの

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「クスミさんて暗いよねー」


「何描いてんの?うわ~、何その絵。ひく~」


「もっと明るくなりなよー」


「話しかけづらいオーラが出てるんだよね」


過去に聞いたことのあるセリフが浮かび上がってくる。


私は小・中学生の時に受けたクラスメイトからの言葉がきっかけで殻に閉じこもるようになり、今に至る。


目立たなければもうからかってくるクラスメイトもいなくなり、いつしか私は存在感の薄い透明人間になっていた。


何とかしたところで明るい性格に変われない私は一人目立たないようにひっそりと存在することに慣れてしまった。


だからクラスメイトが話しかけてくることはあっても用が済めばすぐに立ち去ってしまう。


そんな状況を淋しいとも言えず、これが普通なんだってそう思い込むことで耐え忍んでいた。


そんな私に関わってきてくれた人が今、私の名前を呼んでいる気がする。


呼ばれたこともないような呼び名で。


連呼する声が聞こえる。


この声は…ユノモトくん。


「クスミっち!!」


一際大きな声に私はハッと目覚めた。


天井が見える。


私は今どこに…?


起き上がって周りを見るとさっきまでいた教室内だった。


よく見ると机が複数並んであるその上に私は座っていた。


急に倒れたから机で簡易ベッドを作ってくれたみたいだった。


「クスミっち、大丈夫?」


「クスミさん、大丈夫?」


ざわめきの中に私の体調を心配する声が飛んでくる。


クラスメイトに囲まれて、集中的に視線を感じる。


こんな光景は初めてだった。


こんな大勢の人に心配されたのは初めて…。


いつもは影みたいな扱いだったから。


でも私をみんなと同じように接してくれたきっかけはユノモトくん。


そう思うと胸が熱くなった。
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