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4.愛情表現
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今回の場合は…そうだな、いつもなら
‘Nキャラをにぎにぎしたらエネルギーが充電できそうじゃないか’
というような言い訳を返してくる可能性が高いな。
返ってこなかったけど。
「ま、これからは誰が見てもわかるくらいに大切に育てるよ」
そう言うと、兄キはNキャラ一匹を取り上げて上に高く投げた。
「高い、たか~い」
兄キは兄キなりに大切に愛情を注いでいるらしいのだが、兄キの投げたNキャラが天井にぶつかって勢いよく戻ってくるのを見ると、さっきの言葉が信じられなくなる。
「天井に当たってるじゃねーか。全然大切にしてねー!」
「ちょっと当たっただけだろ?大げさに言うな」
「ちょっとじゃなかったぞ」
ぬいぐるみが天井に当たってガンって音が鳴るくらいだから、よっぽどだぞ。
オレは決して言い過ぎているわけじゃないからな。
「いちいちうるさいな、一真は。もう自分の部屋に戻れ」
オレはそれほどうるさく言っていないのに、兄キは不機嫌になって怒り出した。
オレはそんな兄キに追い出されるように部屋を出た。
「高い、たか~い」
部屋を出るとすぐに兄キの声が聞こえ、その後ガンっという音が聞こえた。
さっきの行為をまたやっているようだ。
ダメだ、全然大切にしていない。
でも兄キにとってみれば愛情を注ぎまくることが大切にすることだと思ってるみたいだし、目をつぶっておくか。
オレはNキャラを不憫に思いつつ、自分の部屋に入った。
オレの部屋は兄キの部屋の真横だ。
そのためか、ぬいぐるみが天井にぶつかる音がよく聞こえてくる。
その音は一晩中続いた。
翌朝。
「兄キー、朝だぞー」
いつものごとく、オレは寝起きの悪い兄キを起こしに部屋へとやってきた。
昨日愛情たっぷり注がれたNキャラは、兄キの枕元に転がっている。
そのNキャラの近くにある兄キの顔は、朝っぱらから真っ赤になっていた。
「兄キ、どうした?かなり顔が赤…熱っ!」
オレが言いかけながら触れると、思わず手が引っ込んでしまうほど顔が熱かった。
「まさか兄キ、バカだからってひかなくてもいい夏風邪を今頃?」
ぶつぶつ言っていると、その声に反応したのか、兄キが目を開けた。
「あ、一真か」
兄キ!いつも目覚めが悪いのに何で今日だけ…。
それも気になるが、今は兄キの状態が先決だ。
「兄キ、風邪か?」
「あぁ、熱っぽい」
熱っぽいというか、触ったら熱いんだから完璧熱だ。
「実は昨日、Nキャラとじゃれ合いすぎて熱が出たようだ」
「………」
理解に苦しむ熱の出し方だな。
一体何人の読者が兄キに共感してくれることだか。
「じゃあもう今日はおとなしく寝てろよ。休むことはオレが言っておくから」
「おぉ、悪いな」
昨日とうってかわって弱々しい声を背後に受けながら、オレは兄キの部屋を後にした。
まったく、Nキャラと遊んで風邪ひいたなんて言ったら変な目で見られるぜ。
欠席の理由、何にしてやろうか。
寝冷えして腹壊したってことにしておくか。
我ながらいい理由だ。
それから数十分後、いつも隣にいる兄キがいないのが少し寂しいような、でも少し晴々しいような気持ちでオレは一人学校へ向かった。
‘Nキャラをにぎにぎしたらエネルギーが充電できそうじゃないか’
というような言い訳を返してくる可能性が高いな。
返ってこなかったけど。
「ま、これからは誰が見てもわかるくらいに大切に育てるよ」
そう言うと、兄キはNキャラ一匹を取り上げて上に高く投げた。
「高い、たか~い」
兄キは兄キなりに大切に愛情を注いでいるらしいのだが、兄キの投げたNキャラが天井にぶつかって勢いよく戻ってくるのを見ると、さっきの言葉が信じられなくなる。
「天井に当たってるじゃねーか。全然大切にしてねー!」
「ちょっと当たっただけだろ?大げさに言うな」
「ちょっとじゃなかったぞ」
ぬいぐるみが天井に当たってガンって音が鳴るくらいだから、よっぽどだぞ。
オレは決して言い過ぎているわけじゃないからな。
「いちいちうるさいな、一真は。もう自分の部屋に戻れ」
オレはそれほどうるさく言っていないのに、兄キは不機嫌になって怒り出した。
オレはそんな兄キに追い出されるように部屋を出た。
「高い、たか~い」
部屋を出るとすぐに兄キの声が聞こえ、その後ガンっという音が聞こえた。
さっきの行為をまたやっているようだ。
ダメだ、全然大切にしていない。
でも兄キにとってみれば愛情を注ぎまくることが大切にすることだと思ってるみたいだし、目をつぶっておくか。
オレはNキャラを不憫に思いつつ、自分の部屋に入った。
オレの部屋は兄キの部屋の真横だ。
そのためか、ぬいぐるみが天井にぶつかる音がよく聞こえてくる。
その音は一晩中続いた。
翌朝。
「兄キー、朝だぞー」
いつものごとく、オレは寝起きの悪い兄キを起こしに部屋へとやってきた。
昨日愛情たっぷり注がれたNキャラは、兄キの枕元に転がっている。
そのNキャラの近くにある兄キの顔は、朝っぱらから真っ赤になっていた。
「兄キ、どうした?かなり顔が赤…熱っ!」
オレが言いかけながら触れると、思わず手が引っ込んでしまうほど顔が熱かった。
「まさか兄キ、バカだからってひかなくてもいい夏風邪を今頃?」
ぶつぶつ言っていると、その声に反応したのか、兄キが目を開けた。
「あ、一真か」
兄キ!いつも目覚めが悪いのに何で今日だけ…。
それも気になるが、今は兄キの状態が先決だ。
「兄キ、風邪か?」
「あぁ、熱っぽい」
熱っぽいというか、触ったら熱いんだから完璧熱だ。
「実は昨日、Nキャラとじゃれ合いすぎて熱が出たようだ」
「………」
理解に苦しむ熱の出し方だな。
一体何人の読者が兄キに共感してくれることだか。
「じゃあもう今日はおとなしく寝てろよ。休むことはオレが言っておくから」
「おぉ、悪いな」
昨日とうってかわって弱々しい声を背後に受けながら、オレは兄キの部屋を後にした。
まったく、Nキャラと遊んで風邪ひいたなんて言ったら変な目で見られるぜ。
欠席の理由、何にしてやろうか。
寝冷えして腹壊したってことにしておくか。
我ながらいい理由だ。
それから数十分後、いつも隣にいる兄キがいないのが少し寂しいような、でも少し晴々しいような気持ちでオレは一人学校へ向かった。
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