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私は雨が降っている日はいつだって傘を持っているし、降っていない日は折り畳み傘を常備している。

彼が傘のことを心配しなくてすむように私が用意していたのに。

それで私を必要として欲しかったのに。

「これでもう迷惑かけることもないね」

「そんな…」

今までを迷惑だと思ったことは一度もない。

むしろ自分で折り畳み傘を用意されたことの方が迷惑だった。

私は何とかしてこの状況を元に戻したかったけど、結局何もできないままこの日を境に彼とのあいあい傘は終わってしまった。

雨が降っても彼は改札口で雨宿りをしていないし、帰りに雨が降っていても彼からメールは届かなかった。

本当に今までのことが過去の思い出になろうとしていた。

だけど私にはもう思い出を過去のものにできないくらい彼のことが忘れられなくなっていた。

思わぬチャンスが現れたのはそれから3週間が経った日のことだった。

月に数回ある委員会で各学級委員の呼び出しがあったの。

登下校のあいあい傘がなくなった今、彼と会えるのはこの委員会に限られていた。

彼は生徒会長だから必ず委員会には現れる。

だからここで何らかの行動を起こせば、また前のようにあいあい傘の再現があると信じていたのよ。

外は雨が降っていて、うまくいけばあいあい傘が再現できる。

その為には彼のあの折り畳み傘が邪魔だった。

駅まで彼と同じ方面に帰る人は私だけということは、前の委員会でわかっている。

だから彼の傘がなければ必然的に私が必要ということになる。

何とかして彼の鞄から折り畳み傘を消すことができれば、また前のような日々が続くと信じて疑わなかったの。
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