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いつものように居間のテーブルで同じ漢字をひたすら書いていると、向かい側にお母さんが腰を下ろした。

顔を上げると、何か手に持っている。

「のぶ、見てこれ」

そう言って差し出してきた物は、小さい布切れのように見えた。

「何これ」

わからず自然と疑問が口に出る。

フェルト生地で四方の端をミシンで縫ってある。

「コースターよ」

「コースター?」

「コップの下に敷くと水分を吸い取ってくれるの」

へー、これが?

おれはそのコースターを手にとってまじまじと見た。

確かにこの生地なら水分を吸収してくれそうだ。

喫茶店なんかで出されるコルクのコースターしか知らなかったおれは、こんな物でもコースターになるのかと驚いた。

ただの真四角というわけではなく、周りはギザギザにカットされている。

表面には笑った顔、裏面には悲しい顔が縫い糸で表現されていた。

「かわいいでしょ?さっき星野さんの所に行ってきてねー」

星野さんというのは、ひゅうまのお店だ。

ひゅうまは星野ひゅうまという名前なのだ。

フルネームで聞くと、ますます某漫画の主人公のようだ。

「これ、ひゅうまくんが作ったんだって」

「え!?」

思わず大きな声が出た。

そういう話になるとは全く思っていなかったのだ。

「うそだー」

そんなはずはない。

おれはコースターをもう1度手に取った。

だって周りのギザギザは綺麗に山型が揃っているし、糸も少しも狂わぬ間隔で縫われている。

これが小学4年生の作品だって!?

そんなばかな。

「嘘じゃないわよ。ひゅうまくんから直接貰ったもの」

「目の前で作ったのを見たの?」

「昨日作ったからってくれたのよ。作り立てをくれたわけじゃないわ」

「だったらひゅうまが作ったかどうかわからないじゃない」

どうせひゅうまは格好つけて親が作った物を自分の作だと言い張っているだけだ。

「ひゅうまくんが嘘をつく理由がどこにあるのよ」

言われてしまえばそうなんだけど、でも虚勢を張っているのかもしれない。

学校では誰も信じないから親になら、って。
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