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【番外編】パンツの真相

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 俺は迷っている。一線を超えるか、踏みとどまるか。お宝を目の前にして、みすみす見逃してしまうことは果たして正解なのか……?


「んじゃ、入ってくるね」

 そう言って愛しい恋人が風呂に向かったのがつい10分前。着替えを持っていき忘れているのに気づいて(決して、もしかしたら風呂を覗けるかもなんて考えていない)パジャマを持って脱衣所に入ったのが約5分前。
 そしてたった今、俺は脱衣所のゴミ箱に慧の脱ぎたてパンツと思われるものが捨てられているのを発見してしまったのだ。まさかお宝がこんな所に落ちているだなんて、まるで俺に拾われるのを待っていたかのようだ。

 このパンツ、確か前々回のお泊りの時に履いてた気がする。脱がせる時、ゴムの部分が少し緩くなってきているのかすんなり剥ぎ取れてしまって、新しいパンツをプレゼントしようと思った記憶があった。改めてよく見ると、濃いグレーは新品のものと比べて少し薄くなってきているようだ。なるほどな。
 濃い目のグレーのボクサーパンツ、気に入っているのか慧のパンツは大体コレだ。長くて深いキスの後にそっと慧のケイに触れてやると十中八九濡れているのだが、濃い目のグレーはそれをひっそりと教えてくれる。まるで慎ましやかに咲く花のような慧自身を表しているようで、俺も気に入っている。

「ん……?あれ、亮二?」

 しまった、気づかれた。鼻息が荒すぎたか?いや、大丈夫だ。慧はまだ風呂の中。俺がパンツを見つめながらぼーっとしていた、なんてことまでは流石に気づくまい。

「あぁ、お前着替え忘れてたぞ。ここ置いとくから」

「うお、まじか。ありがとぉ」

 風呂であったまっているからか、慧の声はとろけるように間延びしていて、本当に可愛い。こういうのを食べちゃいたいと言うんだろうな。
 まぁ、性的にはもう頂いちゃってるわけだけど、あまり慣れていない慧を怖がらせるわけにはいかなくてまだセーブしているのが現状だ。できればもっと、全身くまなく舐めまわしたりしたいんだが。……っと、あまりの可愛さについ意識が逸れたが、決断するなら今だ。

 パンツを持っていくか、否か。俺が出した答えは……

「慧?脱衣所のゴミ溜まってるっぽいからついでに捨てとくな?」

「え、いや後で捨てるからいいよ~」

「いや、俺が気になって仕方ないんだ。このゴミ箱を放置しておくだなんて俺にはできない」

 そこまで言うならと慧からのお許しを得て、俺は脱衣所を後にした。もちろん手にはゴミ箱。ゴミ捨て用のポリ袋が入ってるから、と教えてもらった流し台のあるキッチンは素通りして、真っ先に自分の持ってきたカバンに向かう。
 こんなこともあろうかと、保存パックを多めに持ってきていてよかった。入れる前にひと嗅ぎしたいところだが、そろそろ慧も上がるだろうし、何より1回でも嗅いでしまえば我慢できる気がしない、色々と。脱ぎたてほやほやを味わえないのは惜しいが、ここで踏みとどまれる程度の常識は持っているのだ。あとは、保存パックの性能を信じよう……

 丁重にさっきまで慧が身に着けていたパンツを拾い上げる。今まで慧のケイを包み込んでくれてありがとな。これからは慧の腰じゃなくて、俺の家で輝くんだぞ。香りが漏れてしまわないように、何度も何度もジッパー部分を圧着した。そして、カバンの一番上のそっと置く。カバンの底になんて敷けない。

 バレないようにゴミを片付けながら考えた。
 本当なら棚の上にでも飾りたいところだが、そうすると慧を家に呼べなくなってしまう。日に当たるのもあまりよくなさそうだしな。
 ある程度日陰で、慧に見つからなくて、かつ俺がこまめに眺められる場所……クローゼットの中とか?あぁ、そうだ、クローゼットの洋服タンスで俺の洋服と一緒に保管すればいいじゃないか!日には当たらない、慧も見る機会はそうそうない、防虫剤も入れてあるから虫食いの心配も少ない、なにより慧の香り成分が俺の洋服のも染み渡るかも……!我ながら良い考えだ。

 フフッ、楽しみだな。今日はなんて素敵な日だろうか。慧とお泊りに加えて、とんでもないお宝まで手に入れてしまった。
 風呂場の方からがたがたという音が聞こえてくる。慧もそろそろ戻ってくるらしい。ちょうどいい。俺は空になったゴミ箱を持ち、あわよくば着替える前の慧を見れないかな、なんて思いながら脱衣所に向かった。
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