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「慧、泣いてんのか?俺、そんなに嫌われ……」
「違うっ!!」
今度は、俺が亮二の言葉を遮ることになった。だけど、違うんだ。俺が亮二を嫌いになんてなる訳がないのに。ちゃんと伝えなきゃ。抱きしめられるがままになっていた両手を背中に回し、ぎゅっと抱きしめ返した。
「さっきのは、俺の従妹の美玖ちゃんで。旦那が浮気してるかもしれなくて、俺が協力して調査してて。ラブホテルに入ったのも、その旦那を追いかけて、で。」
それだけじゃないだろ、俺。あんなドロドロ気持ち悪い感情を持って、わざわざこんなことして。丸ごと話さないと謝ったうちに入らない。
「……亮二に言わなかったのは、ちょっとした仕返しのつもりだった。お前が浮気なんかするから。でも、それも俺の、ただの独りよがりだった。だから、本当に俺が悪いんだ。ごめんなさい」
一気に、まくしたてるようにして言い切った。頭の中はぐちゃぐちゃで、もはや、何を言っているのか俺にもよくわからなかった。最初は我慢しなきゃと思っていた涙も、言葉を出し尽くしたことでホッとしたのか、今やとめどなく流れてどうしても止まらない。亮二は、最初は俺の勢いに圧倒されたみたいで、ぽかんとしていた。けど、段々と事態を飲み込んだようで。
「……従妹?」
「そう、従妹」
「つまり、慧は?俺に対する仕返しのつもりで、従妹との浮気調査にかこつけて、まるで浮気のような行動をし、俺にあらぬ疑いをわざとかけさせ?俺の心を弄んだってことか?」
うぐっ。胸に刺さるが、そう言われると、何も言い返せない。ちょっと言い方に棘を感じなくもないが、概ね事実なのだから。こくりと一回頷いた。
「はぁ……そもそも俺は、浮気なんてした覚え、まったくないが」
「えっ?」
「まぁ、それは後でいい。とにかく、慧は悪いことをした、そうだな?」
「う、うん……」
俺の返事を聞くや否や、亮二はニヤリと笑った。あ、待って。この笑みは、ろくでもないことを考えている時の亮二の癖だ。と、言うことは……
「慧、お前、今日は覚悟しろよ」
さっきまでの悲しげな様子はどこへやら、男は静かに微笑みを浮かべながら、俺を見つめている。浮気してないってどういうこと?とか、今言ってよとか、言いたいことはいっぱいあったのに。まるで亮二に縫い付けられたように、俺の口は動いてくれなかった。
「あの、亮二」
「ん?とりあえず、こっちな」
うん、ダメだな。逃げられそうにない。離された体の代わりにきつく握られた手首を見つめながら、引っ張られるがままになった俺は、そう悟った。
こうして、俺は今出てきたばかりのラブホテルに、逆戻りするはめになった。なんでこうなった。
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