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15.覚悟
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覚悟
ゴーンと遠くで日付が変わる鐘が鳴る。
中央広場の鐘が鳴ったのだ。
普通の人々は夢の中で思い思いの幻想の中を走り回っている頃だ。
その音を聞いてルーカスはぱっと顔を窓へ向ける。
「お、夜も更けてきたな。では君はもう寝た方がいい。よくよく考えれば、心の声が大きかろうと君自身が困っていないのならそう問題じゃないんだ。俺はただはっきりした声で正しい事を言う君の心に救われた。それを伝えたかったんだ。邪魔して悪かった。」
じゃあ俺は帰るな、と言ってルーカスは立ち上がる為に膝に手を置いた。
「待って。」
「ん?」
「私は不公平が苦手なのよ。貸しをそのままにしておくのも嫌。」
「そうか。覚えておく。」
「...今日、教師を拘束するのにあなたの魔法を借りたわ。」
「俺がやりたくてやった事だ。気にしなくていい。だからそろそろベッドに入ってくれ。体を冷やしてしまうぞ。」
「......あなたの、過去も見ちゃったし。」
「あれはどう見ても俺から見せただろう。」
「...私の声を聞きなさい。」
「っ、わ、わかった。聞く。ちゃんと聞くぞ。さあなんでも来い!」
「いいえ、“私”の声を聞くの。」
「...?聞いているぞ。心の声もそうだが、君の声はどちらも綺麗だからよく通るんだ。」
何を言っても斜め上の返事をされるのにエティーナは面倒になって強引な手段に出た。イケメンの純粋な褒め言葉に照れたのもあるだろうが。
バン!とエティーナとルーカスの間にあった机を両手で叩く。ルーカスは驚いてソファの背もたれに縋るようにして身を縮こまらせた。
しかし、エティーナの動きは止まらない。そのまま片手は机について、もう片手をルーカスに伸ばす。そして、ガッとルーカスの指輪に手をかけた。
「っ!?お、おい!何をするんだ!指輪がとれてしまうぞ!?」
「だから取ってるのよ!!」
「なんでだ!?これをとったら君の心の声が聞こえてしまうんだぞ!?それともこの指輪が気に入ったのか!?ならすぐに同じ見た目のものを作って「あなた!男性が女性に指輪を贈る意味を知らないの!?」な、なんで怒ってるんだ!?」
絶対に指輪を外したいエティーナVS絶対に指輪を外したく無いルーカスの熱い戦いが今始まった...。
ちなみにルーカスは男女のあれこれにはとことん疎いため、一般常識レベルのことすら知らない。よって、指輪を贈ると言う言葉も、ただエティーナに気に入ってもらえたものを贈りたいという心から来ているのだ。
「っ~!あなたは人の心が読めないと不安なんでしょう!?だったらいいじゃない!」
「いやだ!!君は心を読まれるのを嫌がっていただろう!?これ以上君に嫌われたくないんだ!!」
「嫌ってなんかないわよ!!」
「そんなの分からないだろう!?」
「だから読みなさいよ!!心を!!」
「いやだ!!!」
争いは平行線だった。
それを先に諦めたのは、エティーナだった。
「...はぁ。あのね、今からする話は口じゃできないの。だからあなたに心を読んでもらった方が都合がいいのよ。...あなたがあなたの過去を教えてくれたから...私も覚悟を決めた。
_____あなたを信じるわ。ルーカス・セイントベル。」
「っ.........。」
ルーカスはぼんっ!と音がしそうなほど顔を赤くした。
エティーナには心を読む能力なんてものはないが、今ルーカスの心が喜びで溢れているのはなんとなく分かった。
ゴーンと遠くで日付が変わる鐘が鳴る。
中央広場の鐘が鳴ったのだ。
普通の人々は夢の中で思い思いの幻想の中を走り回っている頃だ。
その音を聞いてルーカスはぱっと顔を窓へ向ける。
「お、夜も更けてきたな。では君はもう寝た方がいい。よくよく考えれば、心の声が大きかろうと君自身が困っていないのならそう問題じゃないんだ。俺はただはっきりした声で正しい事を言う君の心に救われた。それを伝えたかったんだ。邪魔して悪かった。」
じゃあ俺は帰るな、と言ってルーカスは立ち上がる為に膝に手を置いた。
「待って。」
「ん?」
「私は不公平が苦手なのよ。貸しをそのままにしておくのも嫌。」
「そうか。覚えておく。」
「...今日、教師を拘束するのにあなたの魔法を借りたわ。」
「俺がやりたくてやった事だ。気にしなくていい。だからそろそろベッドに入ってくれ。体を冷やしてしまうぞ。」
「......あなたの、過去も見ちゃったし。」
「あれはどう見ても俺から見せただろう。」
「...私の声を聞きなさい。」
「っ、わ、わかった。聞く。ちゃんと聞くぞ。さあなんでも来い!」
「いいえ、“私”の声を聞くの。」
「...?聞いているぞ。心の声もそうだが、君の声はどちらも綺麗だからよく通るんだ。」
何を言っても斜め上の返事をされるのにエティーナは面倒になって強引な手段に出た。イケメンの純粋な褒め言葉に照れたのもあるだろうが。
バン!とエティーナとルーカスの間にあった机を両手で叩く。ルーカスは驚いてソファの背もたれに縋るようにして身を縮こまらせた。
しかし、エティーナの動きは止まらない。そのまま片手は机について、もう片手をルーカスに伸ばす。そして、ガッとルーカスの指輪に手をかけた。
「っ!?お、おい!何をするんだ!指輪がとれてしまうぞ!?」
「だから取ってるのよ!!」
「なんでだ!?これをとったら君の心の声が聞こえてしまうんだぞ!?それともこの指輪が気に入ったのか!?ならすぐに同じ見た目のものを作って「あなた!男性が女性に指輪を贈る意味を知らないの!?」な、なんで怒ってるんだ!?」
絶対に指輪を外したいエティーナVS絶対に指輪を外したく無いルーカスの熱い戦いが今始まった...。
ちなみにルーカスは男女のあれこれにはとことん疎いため、一般常識レベルのことすら知らない。よって、指輪を贈ると言う言葉も、ただエティーナに気に入ってもらえたものを贈りたいという心から来ているのだ。
「っ~!あなたは人の心が読めないと不安なんでしょう!?だったらいいじゃない!」
「いやだ!!君は心を読まれるのを嫌がっていただろう!?これ以上君に嫌われたくないんだ!!」
「嫌ってなんかないわよ!!」
「そんなの分からないだろう!?」
「だから読みなさいよ!!心を!!」
「いやだ!!!」
争いは平行線だった。
それを先に諦めたのは、エティーナだった。
「...はぁ。あのね、今からする話は口じゃできないの。だからあなたに心を読んでもらった方が都合がいいのよ。...あなたがあなたの過去を教えてくれたから...私も覚悟を決めた。
_____あなたを信じるわ。ルーカス・セイントベル。」
「っ.........。」
ルーカスはぼんっ!と音がしそうなほど顔を赤くした。
エティーナには心を読む能力なんてものはないが、今ルーカスの心が喜びで溢れているのはなんとなく分かった。
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