11 / 21
11.反省
しおりを挟む
反省
「...で?」
エティーナはソファに座りながら優雅に扇子を口元に当てて下方を睨んだ。隣のルシエルはその方に興味は無いのか、ねえさまかっこいい!と言って姉の顔を見上げている。
エティーナが見つめるそこには、金髪男もとい__魔法師ルーカス・セイントベル__が正座をしていた。両手は硬く握られ、膝の上に置かれている。
右手の中指には緑色の宝石のついたゴツめの指輪が付けられていた。
ルーカスがおずおずと口を開く。
「...そうだな、まずは俺のこの能力についてなんだが...。」
「ああ、そのプライバシーガン無視の“素晴らしい”能力ね。ぜひお聞かせ願いたいわ。」
「うっ...。でも、そう言われても仕方ない事だ。俺のこれは、生まれつきで制御できないんだ。なるべく魔道具で抑えてはいるんだが、...言わなければバレないから、油断していた。っでも!本当にわざとじゃないんだ!俺だって申し訳ないと思っている!」
「...ふぅん。今は?どうなのかしら?」
「今は、この指輪で制御しているから聞こえない。」
「じゃあ何故今日は外していたの?」
エティーナがさらに詰めると、ルーカスが視線をキョロキョロ彷徨わせる。
「(なんか、前世の私みたいな挙動ね。)」
「その...、幼い頃からずっと読めたから、むしろ心の声が聞こえないと不安なんだ...。俺は、昔から、その、嫌われやすいようで...人の心が読めても、人の顔から感情を読み取るのが苦手で...。」
「あら、あなた以外と根暗なのね。」
「えっ。」
エティーナは興味深げにルーカスに顔を近づけて観察した。しかしルーカスはその真っ赤な瞳に見つめられると、パッと視線を外してしまった。
前世の夏菜子も、そうだった。
人が何を考えているのか分からないことが不安で、常に相手に嫌われている気がして視線が合わせられずに挙動不審になってしまう。
エティーナは、ルーカスの顔を両手で挟んで正面に向かせた。
「私の目を見なさい。」
「う゛っ。」
「...綺麗な目ね。逸らすのは勿体無いわよ。こんなに綺麗な顔をしているんだから、よっぽどのことがない限り嫌われるわけないじゃない。世の中所詮顔よ。」
「えっ、えっ?」
「それにあなたの経歴を見させてもらったけど、随分優秀らしいじゃない?魔法学校は首席で卒業。最年少で魔塔入りを果たして、幾つも新しい魔法を生み出している。...きっとあなたが嫌われていると思っている相手は、貴方が綺麗な上に魔法使いとしても優秀だから妬んでいるだけよ。気にすることないわ。...って...。」
エティーナが素直な感想を述べる中、ルーカスはその開かれた目からポロポロと涙を溢した。
それを見てもしかして泣かせた!?とエティーナが焦る。
「ちょ、ちょっとどうして泣くのよ。私が偉そうだったから嫌なの?でもこれが私なのよ。不快にさせたなら謝るわ。」
「っっすまん、違うんだ。そうじゃなくて...。...本当は、指輪をしていても、目を合わせれば心が読めるんだ。」
「はぁ!?あなた嘘ついたわね!?」
「だ、だから!目を合わせないようにしたのに、無理やり合わせたのは君だろう!?っでも、目を合わせても君の言葉が全部本心だったから、...少し、動揺した。」
すまない、とルーカスは白い頬をピンク色に染めて謝った。また視線を外しているのを見ると、やはりルーカスは根本的に人と目を合わせるのが苦手なのだろう。だから指輪を外しているのではないだろうかとエティーナは考えた。
「...で?」
エティーナはソファに座りながら優雅に扇子を口元に当てて下方を睨んだ。隣のルシエルはその方に興味は無いのか、ねえさまかっこいい!と言って姉の顔を見上げている。
エティーナが見つめるそこには、金髪男もとい__魔法師ルーカス・セイントベル__が正座をしていた。両手は硬く握られ、膝の上に置かれている。
右手の中指には緑色の宝石のついたゴツめの指輪が付けられていた。
ルーカスがおずおずと口を開く。
「...そうだな、まずは俺のこの能力についてなんだが...。」
「ああ、そのプライバシーガン無視の“素晴らしい”能力ね。ぜひお聞かせ願いたいわ。」
「うっ...。でも、そう言われても仕方ない事だ。俺のこれは、生まれつきで制御できないんだ。なるべく魔道具で抑えてはいるんだが、...言わなければバレないから、油断していた。っでも!本当にわざとじゃないんだ!俺だって申し訳ないと思っている!」
「...ふぅん。今は?どうなのかしら?」
「今は、この指輪で制御しているから聞こえない。」
「じゃあ何故今日は外していたの?」
エティーナがさらに詰めると、ルーカスが視線をキョロキョロ彷徨わせる。
「(なんか、前世の私みたいな挙動ね。)」
「その...、幼い頃からずっと読めたから、むしろ心の声が聞こえないと不安なんだ...。俺は、昔から、その、嫌われやすいようで...人の心が読めても、人の顔から感情を読み取るのが苦手で...。」
「あら、あなた以外と根暗なのね。」
「えっ。」
エティーナは興味深げにルーカスに顔を近づけて観察した。しかしルーカスはその真っ赤な瞳に見つめられると、パッと視線を外してしまった。
前世の夏菜子も、そうだった。
人が何を考えているのか分からないことが不安で、常に相手に嫌われている気がして視線が合わせられずに挙動不審になってしまう。
エティーナは、ルーカスの顔を両手で挟んで正面に向かせた。
「私の目を見なさい。」
「う゛っ。」
「...綺麗な目ね。逸らすのは勿体無いわよ。こんなに綺麗な顔をしているんだから、よっぽどのことがない限り嫌われるわけないじゃない。世の中所詮顔よ。」
「えっ、えっ?」
「それにあなたの経歴を見させてもらったけど、随分優秀らしいじゃない?魔法学校は首席で卒業。最年少で魔塔入りを果たして、幾つも新しい魔法を生み出している。...きっとあなたが嫌われていると思っている相手は、貴方が綺麗な上に魔法使いとしても優秀だから妬んでいるだけよ。気にすることないわ。...って...。」
エティーナが素直な感想を述べる中、ルーカスはその開かれた目からポロポロと涙を溢した。
それを見てもしかして泣かせた!?とエティーナが焦る。
「ちょ、ちょっとどうして泣くのよ。私が偉そうだったから嫌なの?でもこれが私なのよ。不快にさせたなら謝るわ。」
「っっすまん、違うんだ。そうじゃなくて...。...本当は、指輪をしていても、目を合わせれば心が読めるんだ。」
「はぁ!?あなた嘘ついたわね!?」
「だ、だから!目を合わせないようにしたのに、無理やり合わせたのは君だろう!?っでも、目を合わせても君の言葉が全部本心だったから、...少し、動揺した。」
すまない、とルーカスは白い頬をピンク色に染めて謝った。また視線を外しているのを見ると、やはりルーカスは根本的に人と目を合わせるのが苦手なのだろう。だから指輪を外しているのではないだろうかとエティーナは考えた。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
私をもう愛していないなら。
水垣するめ
恋愛
その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。
空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。
私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。
街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。
見知った女性と一緒に。
私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。
「え?」
思わず私は声をあげた。
なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。
二人に接点は無いはずだ。
会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。
それが、何故?
ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。
結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。
私の胸の内に不安が湧いてくる。
(駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)
その瞬間。
二人は手を繋いで。
キスをした。
「──」
言葉にならない声が漏れた。
胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。
──アイクは浮気していた。
【本編完結】番って便利な言葉ね
朝山みどり
恋愛
番だと言われて異世界に召喚されたわたしは、番との永遠の愛に胸躍らせたが、番は迎えに来なかった。
召喚者が持つ能力もなく。番の家も冷たかった。
しかし、能力があることが分かり、わたしは一人で生きて行こうと思った・・・・
本編完結しましたが、ときおり番外編をあげます。
ぜひ読んで下さい。
「第17回恋愛小説大賞」 で奨励賞をいただきました。 ありがとうございます
短編から長編へ変更しました。
62話で完結しました。
いいですよ、離婚しましょう。だって、あなたはその女性が好きなのでしょう?
水垣するめ
恋愛
アリシアとロバートが結婚したのは一年前。
貴族にありがちな親と親との政略結婚だった。
二人は婚約した後、何事も無く結婚して、ロバートは婿養子としてこの家に来た。
しかし結婚してから一ヶ月経った頃、「出かけてくる」と言って週に一度、朝から晩まで出かけるようになった。
アリシアはすぐに、ロバートは幼馴染のサラに会いに行っているのだと分かった。
彼が昔から幼馴染を好意を寄せていたのは分かっていたからだ。
しかし、アリシアは私以外の女性と一切関わるな、と言うつもりもなかったし、幼馴染とも関係を切れ、なんて狭量なことを言うつもりも無かった。
だから、毎週一度会うぐらいなら、それくらいは情けとして良いだろう、と思っていた。
ずっと愛していたのだからしょうがない、とも思っていた。
一日中家を空けることは無かったし、結婚している以上ある程度の節度は守っていると思っていた。
しかし、ロバートはアリシアの信頼を裏切っていた。
そしてアリシアは家からロバートを追放しようと決意する。
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
どうやら断罪対象はわたくしのようです 〜わたくしを下級貴族と勘違いされているようですが、お覚悟はよろしくて?〜
水都 ミナト
恋愛
「ヴァネッサ・ユータカリア! お前をこの学園から追放する! そして数々の罪を償うため、牢に入ってもらう!」
わたくしが通うヒンスリー王国の王立学園の創立パーティにて、第一王子のオーマン様が高らかに宣言されました。
ヴァネッサとは、どうやらわたくしのことのようです。
なんということでしょう。
このおバカな王子様はわたくしが誰なのかご存知ないのですね。
せっかくなので何の証拠も確証もない彼のお話を聞いてみようと思います。
◇8000字程度の短編です
◇小説家になろうでも公開予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる