彼氏に性欲処理にされてた受けが幸せになるまで

ooo

文字の大きさ
上 下
22 / 28

22

しおりを挟む
 知らない人がいるとエレベーターってすごく長く感じる。でも先生と一緒に乗るエレベーターはものすごく短い。そんな長いようで短い時間は終わり、音を立ててエレベーターは精神科のある5階に止まった。

チーン

「稲場さん、どうぞ。」

 そう言って先生は必ず開くボタンをずっと押してくれる。
 最初は先生が先に降りていたけど、一度だけ俺が人が怖くてエレベーターから降りれなくなった時があった。その時は本当に逃げ出したくなって、先生に腕を掴まれてなだめられるまでうずくまっていた。
 その日を境に、先生は必ず俺より後に乗って、俺より後に出るのだ。

ー患者に逃げられたら面倒だもんな…

「あ、ありがと」

 大きな病院だからか、精神科にも人が結構いる。みんな下を向いていたりスマホをいじったりしていて、俺のことなんか見ていないってわかっていても足が震える。

 立ち止まった俺の背中に、先生は手を添えた。

トン

 その大きい手がなんだが安心する。

「先生、いこ」

 エレベーターから少し歩くと受付があり、先生は俺の代わりに受付をしてくれた。

「すいません、診察予定の稲場です。」

 栗原が少し微笑みそういうと、受付にいた看護師は少し顔を赤らめた。

「は、はい。稲場さんですね。えっと、付き添い…の栗原先生もご一緒ですか?」

「はい」

「かしこまりました。それでは呼ばれるまであちらでおかけになって待っていてください。」

 翔太は受付をしていた栗原と看護師を見つめていた。

ーこの看護師さんだったら、先生と並んで歩いても違和感なんてないんだろうな。

 背が高くて、サラサラの黒髪の先生。かけている細いフレームの眼鏡は、より先生の色気を増す。看護師さんが赤くなってた。きっと先生に見惚れていたんだろうな。ものすごくわかる。俺も先生に見惚れちゃうから。

 頬を赤らめて話す女の子は可愛い。看護師さんも可愛かった。少し巻かれた茶色い髪の毛は後ろで一つにまとめられていて、しっかりとカールされた睫毛からはぱっちりとした目がのぞいていた。

 女の子は可愛くて羨ましい。きっと先生が好きになる女の子も、可愛らしい人なんだろうな。

「ーなばさん、…稲場さん?」

 ふとどうしたのというように俺の顔を覗き込む先生と目が合った。

「…あ!ご、ごめんなさい、、、少しぼーっとしてただけ」

「そう?ならいいんだけど」

 くすっと笑って先生は俺の手をとり、椅子まで誘導してくれた。

 いけないいけない、あまり考えすぎると自分の世界に行っちゃう。周りが見えなくなって、先生に迷惑かけちゃうからちゃんとしなきゃ。

 グイっと引っ張るように、先生は俺の手を引き椅子に座らせた。そしてゆっくり隣に座ると口を開いた。

「ねぇ稲場さん。今日は本当にどうしたの?」

 あっと思った。

「あ、ごめんなさ、」

「謝ってほしいわけじゃないんだよ。理由を答えてほしいの。それとも俺じゃぁ、頼りないかな?」

 違う、そんなんじゃない。先生にはすごく、いっぱい助けてもらってる。すごく感謝してる。でも違うの。俺が先生を好きになっちゃったから。余計なことを考えてしまう。

「ちが、ちがう、、」

 じわぁっと涙が滲んでくる。泣いちゃいけないと思うほど、涙が溢れてしまう。

「あ、ごめん!責めたいわけじゃないんだ、ただ力になりたいだけなんだよ…!」

ー知ってる。だから苦しい。

 泣いてしまった翔太に栗原は戸惑っている。そんな二人を「はぁ」と溜息を吐きながら、気だるげそうに男が声をかけた。






_____________
お久しぶり(?)です。思ったより専門学校とバイトの両立が忙しいのとで、なかなか続きをかけていませんでした(´;ω;`)
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

風邪ひいた社会人がおねしょする話

こじらせた処女
BL
恋人の咲耶(さくや)が出張に行っている間、日翔(にちか)は風邪をひいてしまう。 一年前に風邪をひいたときには、咲耶にお粥を食べさせてもらったり、寝かしつけてもらったりと甘やかされたことを思い出して、寂しくなってしまう。一緒の気分を味わいたくて咲耶の部屋のベッドで寝るけれど…?

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

処理中です...