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 俺は今すごく迷っている。

 なぜなら大学に行く前に昼食を買おうとコンビニに入ったら、病院の先生らしき人がいたのだ。

--正直めちゃくちゃ話しかけたい。

 あの優しい低い声で『おはよう』と挨拶されてみたい。でもいいのだろうか。1患者が先生に話しかけても。朝、多分病院に出勤前のこの時間、それでさえ先生にとってはプライベートなはず。
 患者である俺が話しかけたら迷惑じゃないか?

 話しかけたい俺とそれを必死に抑える俺とで、頭の中は戦争していた。
 そぉーっと商品を選ぶ振りをしながら先生に近づく。

「ん?…稲場さん?」

 気づけば俺は先生をチラチラと見てしまっていた。

「あっ先生!」

 チラチラ見ていたのを知られるのが恥ずかしくて、何となく今気づきました感を出してしまう。

「…これからお仕事ですか?」

「あぁ、そうだよ。今日はゆっくりなんだ、いつもはもっと早いね。」

「そうなんですか!?やっぱりお医者さんって大変なんですね」

「ははは大変だけどね、命を預かる仕事だから仕方ないよ。」

 そんな忙しい人が俺に時間をさいて、駄弁ってくれている。なんだか嬉しい。

 先生が手に持っているのは、生ハムやチーズやらのちょっとオシャレで高いサンドイッチと、缶コーヒー。そのサンドイッチはオシャレで美味しいが、小さい割に値が張ってコスパが悪い。だから、この前の男が〝ご飯代〟と称してくれた6000円を持ってしてでも、勿体なく感じてしまい買えないのだ。

 だから俺は毎回ツナマヨおにぎりにジャンミンティー。300円以内に収まる最強セット。しかし結局足りなくて大学内にある学食でも注文してしまうのだが。学食は生徒に優しいからめちゃくちゃ安い。だからそれほど財布に痛くもないのだ。

 所詮は大学生と医者だ。

 コンビニで買う商品にさえ、そのあまりの違いようにびっくりする。

「あれ、稲場さんは学校…かな?」

「あ、はい!これから講義なんですけど、お昼ご飯にと思って。」

 あははと笑いながら言うと、先生はじゃあ一緒だね言って微笑んだ。イケメンオーラ前回な顔が眩しい。

「あ、そうそう、稲場さん」

 それじゃあと言って立ち去ろうとした翔太に声をかける。

「?」

「詳しくは次の検診で話そうと思うんだけど、いくつか君に質問とか検査してもらおうと思っててね。結構時間かかるから先に伝えておくよ。」

 なんだろうと思ったら検診の事だった。

「あ、はい!わかりました」

「うん、ありがとう」

 先生は手を振ってレジへ歩いていった。

--質問に検査か…。

 前回のことを考えると少し憂鬱だった。何の検査なのかまだ知らないけど、検査ならまだ大丈夫な気がする。
 でも質問は…。前回首の痕を聞かれて、パニックになった俺は気を失ってしまった。今回も首の痕やパニックについて聞かれるのだろう。俺は無意識に確信していた。

 セックスをした時も彼の幻聴が聞こえたんだ。もし質問攻めされるなら、絶対にパニックあるいは幻聴は免れない。

 この間まであやふやだったけど、今なら分かる。俺は彼のことが怖くて怖くて仕方がないんだ。
 トラウマとして症状が現れるくらいに。

 少し先生の言葉を考えた後、翔太は162円のおにぎりと100円のジャスミンティーをレジに持っていった。



「…であるからして、……を…」

 比較的真面目に講義を受けていた翔太。でも今回はどこか上の空だった。

--検診の日、講義どうしよう。

 今まで真面目だった。だから出席日数は次回休んでも大丈夫ではある。でもこれが毎回続いたら?単位が取れなくて留年してしまう。
 しかも必修科目だってある。これ以上休んではいられない。

 90分の講義の間、翔太に頭はこれからの講義をどうするかしかなかった。

「…はい、それではこれで終わります。」

 講義が終わった瞬間スマホで1週間の時間割を見直す。これからもし定期的に検診があるなら、事情を話して先生に検診の日や時間を変えてもらわないといけない。

--えーと、

 月曜日、2限から4限か。月曜日はバイトもあるし厳しいな。火曜、、もだめだ。2限までしかないのをいいことにバイトをかけ持ちしてる日。

 翔太は基本的忙しくないと体がソワソワしてしまう。だからバイトは常に掛け持ち状態だし、ヘルプをお願いされたら絶対に断らない。

--あ、金曜日…。

 金曜日なら1、2限は講義がない。翔太が唯一ゆっくり起きれる日だった。
 翔太はうーんを悩んだが、留年は避けたい。

--よし、次の検診の時に、先生に金曜日に変更出来るか聞いてみよう。

 そう決めた翔太は足早に教室し出て、食堂へ向かった。



ガヤガヤ

 食堂はお昼じゃなくても常に人が沢山いる。

「おーい、しょうたー」

 こっちこっちと俺に手を振って呼んでのは、大学に入ってから仲良くなったはやし圭介けいすけ
 どんどん見た目がチャラくなっていく俺を見ても、「いいんじゃね」と態度を変えないやつだ。

「おー、圭介。席取っといてくれたの?ありがと」

「はは、いーってことよ。」

 圭介は俺と同じ文学部。赤茶っぽく染めた髪に、刈り上げた襟足。一言で言うとモテそうな雰囲気のやつだ。実際に合コンに行くと必ず女を持ち帰る。

「ちょー腹減った。早く食おうぜ」

 そう俺が言うと2人でコンビニのおにぎりやら食堂の定食やらを食べ始めた。

「…ん?あーお前今日ハイネックか!珍しーなー。お前大きめの服とか結構着てるイメージだからよ。」

ドキッ

 一瞬うるさくなった心臓がバレないように、適当にあしらう。

「最近さみーもん。」

「…ふーん」

 一瞬変な間があったがきっと大丈夫だろう。こいつには恋人がいたことも病院に行ったことも言っていない。

 もちろん、ゲイであることも。

 その後、俺たちはいつも通りくだらないことを話しながら昼にした。




━━━━━━━━━━━━━

 私事にはなりますが、本日3/1をもって高校卒業します!4月にある入学式までの1ヶ月間は暇なので、1日に投稿する頻度が増えるかもです。
(気分で書いてるので逆に遅くなることも…)

 そしてこの「彼氏に性欲処理にされてた受けが幸せになるまで」ですが、これを書いてる私があまり病気や薬(医療関係)に詳しくないので、「こんなことある?」展開が出てくると思いますっっっ!
 そんな時は暖かい目で見守り下さい(  . .)"





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