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第二章

第十七話

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「あんた、ただの人間にしてはいい根性してるわ。神を信じる心は馬嫁下女の数億倍だわね。下女より使える人材になりそう。いいわ。放課後、明治神宮の『オモテ』にある小弁天神社にひとりで来なさい。」

「明治神宮の表?それは裏にあるツンデレ神社のことでござるか?質疑の字。」

「その呼び方はやめなさい。むかついてるんだから。それに圧倒的にオモテなんだから、表現ぶりに注意しなさいよ。」

「ご指示、わかったでござる。集合場所はツンデレ神社。遵守の字。」

「全然わかってないわよ。」

「変な女子を引っ掛けてしまったような感じですわ。」
前途多難な予感しかしない大悟であった。
 


「なかなか来ないわね。こんなわかりやすい場所なんて他にないのに。」

「そうか?明治神宮は広いからそのオモテと言っても場所の特定が困難です。それに放課後って、時間は相当にアバウトですわ。第一、選択科目の関係で、オレたちはあの子より一時限早く授業が終わってます。楡浬様はかなり待ち遠しいじゃありませんこと?」

「そ、そんなことあるわけないでしょ。アタシはあくまで神様として人間に感謝されるためにここに来てるんだからね。」

「それにしても、相手が来るってわかってるのに、わざわざこの狭苦しい社の中に収納されている必要があるんですの。オレの胸のあたりがひどくキツいんですけど。」

 大悟と楡浬はあの小さな社に、向かい合ってというより抱き合うように入っている。巨乳と貧乳が合体して手頃なサイズとなっており、顔もキスまであと1センチの接近状態である。

「しょうがないでしょ。元々一人用なんだから、あんた馬嫁下女の癖に、生意気なのよ、特にその部位が。」

「ブイ?浮輪のことですの?」

「もういちいちムカつくわね。ちょっと、オッパイを動かさないでよ。あはん。」

「それはこっちのセリフです。ちょ、押さないで。あ、あ、あ、あ~!」

「何してるんでござる?面妖の字。」
 黒色の全身タイツのような忍者服を着た衣好花が、背中を曲げて格子戸の中を覗き込んでいる。頭巾をしたままで顔が隠れている。なぜか、筆を持っていて、しっかりと額に文字を刻む準備万端な衣好花。忍者の早業か。

「何でもないわ。じゅ、柔軟体操をしているだけだから、社の中のことは気にしないで。そんなことよりあんた遅いわよ。いったい何してたのよ。」

「申し訳ないでござる。拙者の正装はこの忍者服。着替えるのに時間がかかったのでござる。結果として、遅刻の字。」

「仕方ないわね。早くここから出たいから、神頼みをすぐにやりなさいよ。」

「いったいどうすればいいのでござる?不明の字。」

「正式な神頼み方法を教えるわね。そこにポイントカードが置いてあるでしょ。それをうやうやしくいただく、つまり額にかざして、お願い事を言うだけよ。超簡単でしょ。」

「ここには本坪鈴もないのでござるか。不信の字。」

「それはポイントカードがシルバーにならないとつかないわよ。今はこれで我慢しなさいよ。」

「わかり申した。神頼みは、とこにすればよいのでござるか。素朴に、質問の字。」

「ポイントカードに、呪文(キーワード)を唱えるのよ。『後生だから膨らんでください、貧乳!』と叫びなさい。」

「ずいぶんな呪文でござる。胸が痛みまする。痛恨の字。」
フードの中で、眉間にしわ寄せする衣好花。
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