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第二章

第五話

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この授業でも教師は引き続き桃羅である。
美術室内で、生徒たちは椅子に座っているが、神様牛は通常教室と同じく廊下に立っている。

「それでは美術の授業を始めるよ。みんな人物画を描くんだよ。絵が描けなかったら、成績零点になるから気をつけてね。今回もモデルはひとりにひとりのマンツーマンだからね。はい。じゃあ、モデルの方から準備開始してね。もちろんモデルの交代は、なしだからね。」

廊下でゴソゴソという動きと、『スルスル、ストン』という脱衣の音が聞こえてきた。そして、神様牛たちが美術室のドアを開いた。

「ええっ!?全員、真っ裸ですわ!!!」
大きな声を出したのは大悟ただひとり。

「オヨメ姉ちゃんは女の子なんだから、恥ずかしいとかいう感情を持つのはおかしいよ。それによく見てよ。みんなちゃんと、肌色の水着を着てるんだよ。ちょっと水着コストを節約してるけどね。」

神様牛たちは、一様に顔を赤らめて、胸を両手で覆い隠している。それはそうであろう。水着と言っても、超恥ずかしい、布面積はミニマムである。それを取ればその下に存在するひとりひとりの個性という星の形状がわかってしまう、換言すれば布の下にある物体の現況を正確に表現したものであり、隠しているというカテゴリーには到底入れてもらえないレベルである。

「そ、そんなに見ないでよ。」
 楡浬も水着面積はほかの神様牛と同じであり、顔は腐りかかった完熟トマト色に染まっている。平原胸を隠そうとして、すっかり前のめりになっている。足も膝のところで、X字型となって左右に揺れて、奇妙なセクシーさを醸し出している。

「そんな姿勢ではいい絵が描けませんわ。もっと背筋を伸ばしなさい。姿勢の悪さは健康にもよくないですわよ。」

「ちょっと、勝手なこと言わないでよ。あたしの水着姿なんて、グラビアで何兆円という価値があるんだからね。馬嫁下女に簡単に見せるわけにはいかないわ。」

「これはグラビア撮影ではありませんわ。れっきとした美術の授業です。芸術には恥ずかしいとかいう感情を受け入れる余地はありませんから、ご安心くださいませ。それに女子同士。恥ずかしがることはありませんわ。」

「そ、そこまで言うなら、や、やってやるわよ。あくまで学業成就のためなんだからねっ。」
 楡浬は震えながら上半身を上げた。そこには予定通りの洗濯板が置いてあるだけだった。

「むむむ。『曲線が女性の美』という通常概念に、真正面から議論を吹っ掛けるという『胸無し芳一ボディ』ですわ。これは神学論争に発展するかもしれませんわ。こちらが通説ですわ。」

 自分の暴れん坊将軍な胸を突き出す大悟。

「そんなことで論争するんじゃないわよ!」
 楡浬がオヨメ姉に顔面ストレートを喰らわして、美術室から校舎の外に飛んで行った。二人とも、この日の美術の点数を獲得することができなかった。
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