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第二章

第二十六部分

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こうして不安だらけのまま、試合を迎えた。
球場でスコアボードを見上げた美散。
「いよいよ試合が始まるんだ。大活躍して勝利して、レイちゃんを取り返して、祝福のキスをしてもらって、そのあとの夜には、あんなことや、こんなことや、もしかしてそ~んなことまでリクエストされるだろうなあ。グヘヘヘ。タラリ。」
美散は、涎をメダルのように垂らして、すでに妄想MVPを獲得していた。
「そのためにも試合に出ないと。」
そう思った美散は先発メンバー登録されていなかった。
球場に集まった巨人軍と半巨人の選手たち。今回はただの試合ではなく、玲駆のことがかかっているせいか、両軍ベンチは殺気立っている。特にキャプテンランボウは苛立ちを見せている。
「変ワリタクテモ絶対ニ変ワレナイ者ノ辛サヲ、教エテ差シ上ゲマス。醜イアヒルノ子ハ、子々孫々マデ、アヒルデス。ワタクシタチハ、幼イ時、白鳥ニナレルトイウ、儚い幻想ヲ抱カセルコトデ、生キル希望ヲ持タサレルノデスガ、サンタクロースヲ信ジナクナル頃ニ、現実ヲ知ッテ絶望スルノデス。ソレガ半巨人ノ大人階段デス。ダカラ小サク戻ルコトノデキル巨人軍ハ、絶対ニ許サナイデス。巨人軍トイウ野球敗残者ハ、永遠ニ負ケ続ケテ、決シテ勝者ノ大旗ヲ翻スコトハ、ナイノデス。」
「オラオラオラ!半人前の半巨人さんたちよ。今日もイカサマ野球に興じるつもりか。」
キャプテンは、巨人用のデカいボールを手に取って、今にも相手方ベンチに投げつけんばかりの表情である。
「ソノセリフ、ノシヲ付ケテ、玉手箱ニ入レテカラ、二度ト蓋ヲ開ケラレナイヨウニシテ、オ渡シシマス。」
エロザはマル秘と書かれたBlu-rayの箱を見せて、猥雑な視線をベンチにいる美散に送っている。
「えっ?あたしに秋波を送っているの?船でのヤバいシーンを録画していたでも言うの?」
いきなり振られた美散は、大きな瞳を左右に動かして当惑している。
「お前の母ちゃん、お前の母ちゃん、デーケーぞ!」
 ランボウはエロザの美散への関心を逸らそうとしたのか、挑発する言葉をぶつけた。
「ソチラモ同ジデハアリマセンカ?ワタクシハ、小サイ頃カラ、半巨人デアルコトデ、イジメヲ受ケテマシタ。小サイト言ッテモ、体ハ、コチラノ方ガデカイノデスカラ、軽ク腕ヲ振レバ、子供ナド、ヒトタマリモアリマセン。結局、警察ノオ世話ニナルダケデシタガ。ソウナルト、今度ハ罪人扱イデ、差別ヲヒタスラ受ケルダケ。ウケルデショ?ウウウ。」
エロザからは大粒ノ涙が溢れてきた。ちゃんと感情があって、落涙するところは、半巨人と言っても、人間と同じである。
「あたしも立場は同じだよ。エロザの辛さは理解できるよ。ううう。」
美散はもらい泣きして、顔をくしゃくしゃにしていた。
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