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第二章

第四十二部分

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別に吉宗の言葉上はなんら問題ない。タイミングとは難しいものである。

御台は帰宅後、市香の部屋で、ベッドに伏せっている妹を見ながら、悩んでいた。
「お兄ちゃん、お市を特進クラスに入れてくれるなんて、きっと裏に大きな何かがあるよ。」
市香は起きていたが、横になったままで、御台に話しかけた。
「お市、どうして特進クラスのことを知ってるんだ。」
「さっき、幕附高特進クラスの尾張さんという人からメールが来たよ。お市のアドレスをどうやって調べたのか、わからないけど。まあ幕附高特進クラスならそれぐらいの情報入手できるのかな。お兄ちゃん、お市は別に進学できなくてもいいよ。留年して病気を治すから。ほら、こんなに元気、・・ゴホン、ゴホン。」
体を起こそうとした市香は咳き込んでしまい、話ができなくなった。
「お市、大丈夫か?」
「お兄ちゃん、お市のことはほうっておいて。お市のために、お兄ちゃんが自分の生き方を曲げるのはいやだよ。ゴホン、ゴホン。」
市香はそのまま眠についてしまった。青白い顔が痛々しい。強がりを言われると、反対側を向いてしまうのが、人間というものである。
「お市のためには仕方ないな。ボクは覚悟を決めるしかなさそうだ。」

こうして沈痛な面持ちの御台は再び御簾の部屋を訪れた。
「渡心御台さん。その顔ならば、ワタクシ引いたレールを進むことを決めたようですわね。その先には四つ葉のクローバーが幸運をもたらしてくれますわ。」
「尾張さんの言う通りにするよ。いったい何をすればいいんだ?」
「カンタンなことですわ。学校の経済成長を促進させるだけですわ。」
「経済成長?学校と経済は関係ないだろう。」
「オオアリですわ。今の学校は倹約令で縛り付けられて派手や華美どころか、巷でフツーの女子高生ができることすら叶わぬ状況です。」
「つまり、いろいろ出されている倹約令に反対する行動を起こせと?」
「いえ、そんな物騒なことはワタクシの流儀に反しますわ。渡心御台さんはタダの広告塔をやっていただければそれだけで結構ですわ。」
「具体的にはどんなことをやればいいのかな?」
「そ、それは、く、口にするのは、恥ずかしいですわ。」
ちょっと言葉に詰まった宗春。
「この期に及んで、何を逡巡してるんだね?ハッキリ言ってくれるかな。」
「そ、そこまで言うなら、言語化して差し上げますわ。渡心御台さんに、やって頂きたいのは、あ、あ、あ、朝立ちですわ!」
「アサダチ?朝出会う友達のことか?」
「違いますわ!朝に校門に立つから朝立ちです。れっきとした選挙用語ですわ!」
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