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第二章

第十二部分

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「何かな。ボクにできることなら何でもやってあげるよ。」
「ありがとう。前将軍の時のように、将軍の命令に直談判してほしいんです。」
「というと、あげまんの制を廃止、いや撤回してほしいということだね。」
「さすがは御台様。なんでもお見通しですね。」
「そうだね。今、その件について、徳田さんと話していたところだよ。たしかに、この制度はあまりに一方的過ぎる気がする。うん、生徒会長に相談してみよう。」
御台の言葉を聞いて、吉宗は血相を変えた。平穏だった心をかきむしられたような気がした。
「ちょっと、御台くん。相手は将軍よ。いったい、何をされるか、わからないわよ。それにさっきの話だと、御台くんは将軍のやり方に一定の理解を示してるように聞こえたんだけど。」
「たしかに、それはそうだけど、一理あるというのと、認めるとは次元が違うよ。生徒の意見は、ひとつの考え方としてしっかり伝える必要があるからね。」
「で、でも将軍は、すごくコワいわよ。将軍ファーストとか言ってるし。」
「徳田さんは転校してきたばかりなのに、妙に生徒会長に詳しいんだね。」
「い、いや、そんなウワサで耳にタコができただけよ。」
「タコ?それは健康的じゃないな。どれどれ。」
御台は吉宗の頬に触ってきた。その行為は女子の神経細胞に痛烈な刺激を伝達した。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「キャーキャー!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
吉宗本人だけでなく、女子生徒たちもいっせいに、悲鳴をあげた。
「御台様、わたしも!」「私も触って!」「いやあたしが先よ!」「あたいは詐欺よ!」
女子たちがおしくらまんじゅうシフトで御台を取り囲んで、収集がつかなくなった。
「痛い!」
どさくさに紛れてなのか、吉宗を叩く者まで現れた。
吉宗は賢明にも反撃するより脱出を選択し、修羅場から生徒会長室に戻った。
「ハアハアハア。大変なことになったわ。将軍がアタシであることがバレちゃいけないし。いったい、どういたらいいのかしら。」

『ザッ、ザッ、ザッ、ザッ』
 集団で歩く生徒たちの足音が廊下に響いている。
あげまんの制に意見するために、生徒会棟に乗り込もうと校内を歩く御台。その後ろに無数の女子たちが同行しようと大名行列をなして生徒会棟に向かっているのである。
女子たちは口々に不満を訴えている。
「将軍に裏切られたわ。」「それに加えて書記の奉行がもっと悪いわ。」「奉行って、将軍の付き人の?」「そうよ、二人してひどい生徒会だわ。」「前将軍の時の弾圧を思い出してよ!」
涙ながらに叫ぶ女子もいる。御台は行列を振り返って女子たちの様子を見て、唇を噛みしめた。
「前の将軍こともある。みんなをキケンにさらすことはできないよ。ここはボクひとりで行く。」
「でもあそこにはどんな罠が仕掛けられてるかもしれないし。」
「だからこそ、みんなを行かすわけにはいかないんだ。みんなは下がってくれ!」
御台は大きな声を出して、女子たちを押し返した。女子たちは不満を露わにしてブータレることしか抵抗手段がなかった。
「御台様のことが心配だわ。」
女子たちは一様に眉間にシワを寄せて教室に戻っていった。

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