25 / 80
第一章
第二十四話
しおりを挟む
「「待て~!」」
鬼の形相で追いかけるふたりは獲物を追い詰める。
「た、助けて~!」
そばかす女子高生は、古びたドーム型の建物の中に入っていった。絵梨奈はその建物の前で急停止した。
「ここは!し、進入禁止区域ですわ。」
「おい、焼肉女。いったいどうしたんだ?」
「この中に入ってはいけないと言ってるんですわ。ここは、『歯科医ターヘルアナトミア』、通称『歯医者の穴』と呼ばれる施設です。ここには入ってはいけないとの校則がありますわ。」
「獲物はここに逃げ込んだんだから、入るしかないだろう。」
「校則違反になると言ったでしょう。お止めなさい。」
「いやだ。目の前にいる獲物を見逃すなんて俺にはできない。湧き上がるヤマンバの狩猟本能が、俺を突き動かしやがるんだ。それはお前も同じだろう。ぐぐぐ。」
「そ、それは。ぐぐぐ。」
ふたりとも歯を食いしばり、口の端から赤くなった唾液が垂れている。狩りたいという気持ちをガマンしているようだ。
「こういう場合って、何か学園の決めごとってないのか?」
「あ、ありますわ。歯医者として、診断にかかる意見が相違した場合、『針ボッター』で決定してよい、という校則がありますわ。」
「針ポッターだと?すごくイヤな予感しかしないぞ。」
「そうですわ。だから、このやり方を取る生徒はごく少数ですわ。それもほとんどがドMの方ばかりですわ。」
「ぐっ。さらにやりたくないノルアドレナリンが出てきやがった。」
「それでもよろしくて?」
「痛いぐらいなんだ!俺はヤマンバ族だぞ!痛いの、欲しいし。じゅる。あれ?俺の気持ちがなんだか揺れているような。」
「それでこそ、ハナゴンさんですわ。覚悟ができたなら、すぐに始めますわよ。さあ、これでお互いの患部を突つき回すのですわ。じゃ~ん、ですわ。」
「そ、それは反則だろう!」
絵梨奈が取り出したのは、長さ10センチの針。金色に輝いている。
「もう賽は投げられましたわ。突っつきっこしましょ、泣いたら負けよ、あっぷっぷー!」
『プスリ、プスリ、プスリ、ドクドク。』
毒々しく、紫色の血液がふたりの口の端から流れ出ている。絵梨奈には虫歯はないが、魔法を使う時に突つく部分はかなり傷んでいた。
「すごくイタいですわ!ああああ~!」
「超絶いて~!グガガガ~。で、でもなんだか気持ちいい~!」
お互いに悲鳴を上げながらも、勝利への執念なのか、針への力のモーメント伝達を怠らない。脈打つように夥しく流血は続いている。血液はお互いの顔に飛び散っている。
鬼の形相で追いかけるふたりは獲物を追い詰める。
「た、助けて~!」
そばかす女子高生は、古びたドーム型の建物の中に入っていった。絵梨奈はその建物の前で急停止した。
「ここは!し、進入禁止区域ですわ。」
「おい、焼肉女。いったいどうしたんだ?」
「この中に入ってはいけないと言ってるんですわ。ここは、『歯科医ターヘルアナトミア』、通称『歯医者の穴』と呼ばれる施設です。ここには入ってはいけないとの校則がありますわ。」
「獲物はここに逃げ込んだんだから、入るしかないだろう。」
「校則違反になると言ったでしょう。お止めなさい。」
「いやだ。目の前にいる獲物を見逃すなんて俺にはできない。湧き上がるヤマンバの狩猟本能が、俺を突き動かしやがるんだ。それはお前も同じだろう。ぐぐぐ。」
「そ、それは。ぐぐぐ。」
ふたりとも歯を食いしばり、口の端から赤くなった唾液が垂れている。狩りたいという気持ちをガマンしているようだ。
「こういう場合って、何か学園の決めごとってないのか?」
「あ、ありますわ。歯医者として、診断にかかる意見が相違した場合、『針ボッター』で決定してよい、という校則がありますわ。」
「針ポッターだと?すごくイヤな予感しかしないぞ。」
「そうですわ。だから、このやり方を取る生徒はごく少数ですわ。それもほとんどがドMの方ばかりですわ。」
「ぐっ。さらにやりたくないノルアドレナリンが出てきやがった。」
「それでもよろしくて?」
「痛いぐらいなんだ!俺はヤマンバ族だぞ!痛いの、欲しいし。じゅる。あれ?俺の気持ちがなんだか揺れているような。」
「それでこそ、ハナゴンさんですわ。覚悟ができたなら、すぐに始めますわよ。さあ、これでお互いの患部を突つき回すのですわ。じゃ~ん、ですわ。」
「そ、それは反則だろう!」
絵梨奈が取り出したのは、長さ10センチの針。金色に輝いている。
「もう賽は投げられましたわ。突っつきっこしましょ、泣いたら負けよ、あっぷっぷー!」
『プスリ、プスリ、プスリ、ドクドク。』
毒々しく、紫色の血液がふたりの口の端から流れ出ている。絵梨奈には虫歯はないが、魔法を使う時に突つく部分はかなり傷んでいた。
「すごくイタいですわ!ああああ~!」
「超絶いて~!グガガガ~。で、でもなんだか気持ちいい~!」
お互いに悲鳴を上げながらも、勝利への執念なのか、針への力のモーメント伝達を怠らない。脈打つように夥しく流血は続いている。血液はお互いの顔に飛び散っている。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる