33 / 73
第一章
第三十二部分
しおりを挟む
緋景がメイド服を身に纏った理由。
「最近、お手伝いさんとして、入会してきた赤空ゆめさんが、やけにお兄様に親しげに話していますわ。ワタクシもあんな風に、お兄様にスリ寄ることができればいいのだけれど。」
ゆめの実態とは大きくかいりした解釈であったが、緋景の目にはそのようにしか映らなかったのだから仕方ない。悲観主義は、他人の芝を青々とみせてしまう薄めの毒薬である。
「どうぞ、お入りください、ごきげんよう。」
紺色メイド服のゆめが返事をした。緋景化けはばれたものの、お手伝いゆめは健在だった。しかし、奇妙な語尾はすでに癖として、キープしていた。
鳴志司はゆめの変身魔法を知ってか知らずか、何事もなかったように接していた。
緋景はこわごわ中に足を踏み入れた。
「あのう、お兄様。ワタクシも今日から生徒会に加入して、メイド長をやりたいのですが、よろしいでしょうか。モジモジ。」
緋景は交差させた腕を下腹部で、動かしている。
「なんですと!?あたしより後に入ってくるメイドがメイド長とか、ありえないわ!ごきげんよう。」
「ワタクシは、生徒会長の実の妹、滝登緋景です。だから社会的学校的な地位はあなた、赤空ゆめさんよりもはるかに高いのですから、当然なのですわ?って、当然って言い切れるのかしら?」
にわかに悲観主義が緋景の頭に浮かびあがってきた。
「そうだな。メイド長というのは難しいな。」
「えええ!?お兄様、ひどいわ!」
「まあまあ、会長。そうおっしゃらずに、お手伝いさんお手伝いとしてはいかがですか、ごきげんよう。」
「うむ。長幼の序は重んじなければない。ならばよかろう。」
「えええ!?ワタクシが下賤なメイドの風下に座るっていうんですの?」
ゆめは下卑た表情で、口の端を吊り上げた。
「最近、お手伝いさんとして、入会してきた赤空ゆめさんが、やけにお兄様に親しげに話していますわ。ワタクシもあんな風に、お兄様にスリ寄ることができればいいのだけれど。」
ゆめの実態とは大きくかいりした解釈であったが、緋景の目にはそのようにしか映らなかったのだから仕方ない。悲観主義は、他人の芝を青々とみせてしまう薄めの毒薬である。
「どうぞ、お入りください、ごきげんよう。」
紺色メイド服のゆめが返事をした。緋景化けはばれたものの、お手伝いゆめは健在だった。しかし、奇妙な語尾はすでに癖として、キープしていた。
鳴志司はゆめの変身魔法を知ってか知らずか、何事もなかったように接していた。
緋景はこわごわ中に足を踏み入れた。
「あのう、お兄様。ワタクシも今日から生徒会に加入して、メイド長をやりたいのですが、よろしいでしょうか。モジモジ。」
緋景は交差させた腕を下腹部で、動かしている。
「なんですと!?あたしより後に入ってくるメイドがメイド長とか、ありえないわ!ごきげんよう。」
「ワタクシは、生徒会長の実の妹、滝登緋景です。だから社会的学校的な地位はあなた、赤空ゆめさんよりもはるかに高いのですから、当然なのですわ?って、当然って言い切れるのかしら?」
にわかに悲観主義が緋景の頭に浮かびあがってきた。
「そうだな。メイド長というのは難しいな。」
「えええ!?お兄様、ひどいわ!」
「まあまあ、会長。そうおっしゃらずに、お手伝いさんお手伝いとしてはいかがですか、ごきげんよう。」
「うむ。長幼の序は重んじなければない。ならばよかろう。」
「えええ!?ワタクシが下賤なメイドの風下に座るっていうんですの?」
ゆめは下卑た表情で、口の端を吊り上げた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
「専門職に劣るからいらない」とパーティから追放された万能勇者、教育係として新人と組んだらヤベェ奴らだった。俺を追放した連中は自滅してるもよう
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「近接は戦士に劣って、魔法は魔法使いに劣って、回復は回復術師に劣る勇者とか、居ても邪魔なだけだ」
パーティを組んでBランク冒険者になったアンリ。
彼は世界でも稀有なる才能である、全てのスキルを使う事が出来るユニークスキル「オールラウンダー」の持ち主である。
彼は「オールラウンダー」を持つ者だけがなれる、全てのスキルに適性を持つ「勇者」職についていた。
あらゆるスキルを使いこなしていた彼だが、専門職に劣っているという理由でパーティを追放されてしまう。
元パーティメンバーから装備を奪われ、「アイツはパーティの金を盗んだ」と悪評を流された事により、誰も彼を受け入れてくれなかった。
孤児であるアンリは帰る場所などなく、途方にくれているとギルド職員から新人の教官になる提案をされる。
「誰も組んでくれないなら、新人を育て上げてパーティを組んだ方が良いかもな」
アンリには夢があった。かつて災害で家族を失い、自らも死ぬ寸前の所を助けてくれた冒険者に礼を言うという夢。
しかし助けてくれた冒険者が居る場所は、Sランク冒険者しか踏み入ることが許されない危険な土地。夢を叶えるためにはSランクになる必要があった。
誰もパーティを組んでくれないのなら、多少遠回りになるが、育て上げた新人とパーティを組みSランクを目指そう。
そう思い提案を受け、新人とパーティを組み心機一転を図るアンリ。だが彼の元に来た新人は。
モンスターに追いかけ回されて泣き出すタンク。
拳に攻撃魔法を乗せて戦う殴りマジシャン。
ケガに対して、気合いで治せと無茶振りをする体育会系ヒーラー。
どいつもこいつも一癖も二癖もある問題児に頭を抱えるアンリだが、彼は持ち前の万能っぷりで次々と問題を解決し、仲間たちとSランクを目指してランクを上げていった。
彼が新人教育に頭を抱える一方で、彼を追放したパーティは段々とパーティ崩壊の道を辿ることになる。彼らは気付いていなかった、アンリが近接、遠距離、補助、“それ以外”の全てを1人でこなしてくれていた事に。
※ 人間、エルフ、獣人等の複数ヒロインのハーレム物です。
※ 小説家になろうさんでも投稿しております。面白いと感じたらそちらもブクマや評価をしていただけると励みになります。
※ イラストはどろねみ先生に描いて頂きました。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
追われる身にもなってくれ!
文月つらら
ファンタジー
身に覚えがないのに指名手配犯として追われるようになった主人公。捕まれば処刑台送りの運命から逃れるべく、いつの間にか勝手に増えた仲間とともに行き当たりばったりの逃避行へ。どこかおかしい仲間と主人公のドタバタ冒険ファンタジー小説。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる