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第一章

第四部分

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また別の日曜日。
つかさとゆめはルーティンワークのように、商店街を歩いていた。
「い、いい天気ね。」
「そ、そうだな。晴れて気持ちいいぞ。」
「こ、このまま、夜まで雲が出ないみたいよ。」
「そ、それはいいな。」
デート中の中学生が天気の話をしているのは、一見健全であるが、不健全な恋という感が否めない。もっと、ハートビートな流れが必要である。

ウサギは鳴かない。しかしウサギキャラは鳴く、いや喋ると昔から決まっている。ふたりの回りから突然奇妙に高く人間離れした声が聞こえてきた。
『喜多見くん、好きぴょん。』『うさ子は喜多見が大好きです。』『喜多見っち、愛しいウサ。』
こんな言葉を使う女子はリアルにはほとんどいない。しかし現実に声はゆめの心をかきむしった。
「ウ、ウサギ~。それも喋ったわ~!」
動揺著しいゆめは喉をかきむしり、デート的なものは、あえなく終了した。
実際は、町行く女子たちがごくフツーに会話していただけなのだが、ゆめとつかさには、そんな風に聞こえていたのである。
「うりのデジタル魔法で、女子たちのスマホを操作して、ただの会話をウサギ音声に変換してやったのだ。ゴールテープが見えてきたのだ。次でチェックメイトになるのだ。クククッ。」
紫の和服が光を浴びて、妖しく黒光りしていた。

さらに、次の日曜日。
商店街の噴水前に立ち尽くすゆめの姿があった。
『ダダダッ』
髪を振り乱して駆け寄ってくるつかさ。
「とうとう、待ち合わせ時間にも余裕で1時間遅れる身分になったのね。重役出勤するなんて、50年早いわよ!」
 重役が60歳台というのは日本の大企業に普遍的な事象である。
「いや、どうしてかわからないけど、家の全時計が1時間遅れていたんだよ。」
「いいわけなんか、聞きたくないわ。デートには1日前から待ってるのが大原則だと、大元帥は言ってるわよ。」
「どこの軍隊の将校だよ?」
「喜多見家のデジタル時計に侵入して、時計を1時間遅らせてデートに遅刻させたのだ。オンラインでなくてもデジタル系には侵入可能なのだ。」
この日も紫の和服の姿がゆめたちを追っていた。つかさとゆめの仲は険悪になりかかったが、つかさが平謝りして、その場を収束させていた。
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