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第二章
第十五部分
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人間界派遣レースは公募された。インターネットがないことから、回覧板による案内であり、1週間の周知期間が設けられた。なお、レース開催場所は、アパートである。
鰯司とトリス会長は、アパートで卓袱台を囲んでいた。紅麗と明日萌は出かけていた。
「レース会場、ずいぶん狭くないですか?」
「その疑問は愚問じゃ。1週間経過すればわかるじゃろ。」
そして、応募締切期日がやってきた。
怪訝な顔の鰯司は、トリス会長に質問した。
「公募したのに、参加者が3人とか少な過ぎませんか。」
「たしかに少ないな。しかし、住民には情報を提供しておるのだから、結果は厳粛に受け止めざるを得まい。日常的に、魔界の住民は外に出たがらない。外に出るとカネがかかるからじゃ。特に参加料が法外に高く、しかも失敗する可能性が高い中で、それを払ってまで参加する悪魔はまれなんじゃな。参加料を決めたのは妾ではあるがな。」
「それって、参加するなという暗黙の脅しじゃないのですか?」
「誰にモノを言っておる。妾は魔界の女王じゃ。専制君主なんじゃ。」
「結局、ほとんどの人が参加できないのに、公募とか、まさに悪魔の所業ですよ!」
「その言葉、うれしいぞ。悪魔はそうあらねばならんでな。ワハハハ。」
「ところで、レース内容はどんなものなんですか?」
「最下位を争うレースじゃ。」
「はあ?なんですか、それは。最下位なんて、なろうと思えばやる気ゼロで臨めばいいだけじゃないですか。まるで意味がありませんし、理解不能ですよ。」
「そちがどう思おうと、これが魔界の伝統なんじゃから、正しいやり方であるぞ。優勝枠はひとつ。前回、ふたり送って失敗したからのう。なお、同点はなしじゃ。」
「具体的にはどんなレースなんですか。」
「最低なことをすることじゃ。その対象は、そち、川添鰯司じゃ!」
「えええ!?」
「そんなに驚くことはあるまい。そちの力不足が原因なんじゃから当然じゃ。」
「ぐすん。そうでした、とか思ってませんけど、今の自分に自由がない以上、受け入れるしかありません。ところでいったいどんなプレイをご所望なんですか?」
「いちいちカンにさわる言い方をしおって。さらに厳しい仕打ちにグレードアップしてやるわ。」
「ひえええ!」
鰯司とトリス会長は、アパートで卓袱台を囲んでいた。紅麗と明日萌は出かけていた。
「レース会場、ずいぶん狭くないですか?」
「その疑問は愚問じゃ。1週間経過すればわかるじゃろ。」
そして、応募締切期日がやってきた。
怪訝な顔の鰯司は、トリス会長に質問した。
「公募したのに、参加者が3人とか少な過ぎませんか。」
「たしかに少ないな。しかし、住民には情報を提供しておるのだから、結果は厳粛に受け止めざるを得まい。日常的に、魔界の住民は外に出たがらない。外に出るとカネがかかるからじゃ。特に参加料が法外に高く、しかも失敗する可能性が高い中で、それを払ってまで参加する悪魔はまれなんじゃな。参加料を決めたのは妾ではあるがな。」
「それって、参加するなという暗黙の脅しじゃないのですか?」
「誰にモノを言っておる。妾は魔界の女王じゃ。専制君主なんじゃ。」
「結局、ほとんどの人が参加できないのに、公募とか、まさに悪魔の所業ですよ!」
「その言葉、うれしいぞ。悪魔はそうあらねばならんでな。ワハハハ。」
「ところで、レース内容はどんなものなんですか?」
「最下位を争うレースじゃ。」
「はあ?なんですか、それは。最下位なんて、なろうと思えばやる気ゼロで臨めばいいだけじゃないですか。まるで意味がありませんし、理解不能ですよ。」
「そちがどう思おうと、これが魔界の伝統なんじゃから、正しいやり方であるぞ。優勝枠はひとつ。前回、ふたり送って失敗したからのう。なお、同点はなしじゃ。」
「具体的にはどんなレースなんですか。」
「最低なことをすることじゃ。その対象は、そち、川添鰯司じゃ!」
「えええ!?」
「そんなに驚くことはあるまい。そちの力不足が原因なんじゃから当然じゃ。」
「ぐすん。そうでした、とか思ってませんけど、今の自分に自由がない以上、受け入れるしかありません。ところでいったいどんなプレイをご所望なんですか?」
「いちいちカンにさわる言い方をしおって。さらに厳しい仕打ちにグレードアップしてやるわ。」
「ひえええ!」
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