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第一章

第四十九部分

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鰯司は頭を抱えて、嘆いた。
「入学して間がないのに。学業は本分だから、こんなふがいない姿を晒すとは。」
「次はワタクシが参りますわ。こは曲がったもので、扱うのは得意です。あっ、表現は変ですが、人間が曲がってるか、右曲がりがいいとか、そういうことを言ってるのではありませんことよ。ではいきますわ。ザバーン!」
湖線も気持ちいい感じで頭から飛び込んで、水しぶきもなくきれいに入水した。
「鰯司さんがいる限り、これをまっすぐに立たせることが可能ですから、叶姉妹よ、待ってなさいですわ!」
湖線はツイストバルーンを持っていて、次々と膨らませていく。
明日萌は湖線の口と頬の妖しげな動きを見て、顔を赤くしている。
「湖線、本来右曲がりのツイストバルーンゴム風船で、まっすぐと曲がったもの、作って文字を書く。なまめかしい、恥ずかしい。ぼっ、ぼっ、ぼっ。」
明日萌は、蒸気機関車の煙突のようになってしまった。
七色ツイストバルーンを駆使して、作られた文字。
『カレシにしない』
『ズキン!』
160キロど真ん中ストレートが鰯司の胸に突き刺さった。
鰯司はコンニャクのように崩れ落ちていった。
湖線は激しく呼吸を整えながら、浮かび上がり、寂しそうな視線を鰯司に向けていた。
アクリルキューブはそこに存在するだけでもさまざまな光を反射している。いつもの光葉ならばサングラスをしていてもその場から脱走してしまうレベルである。
キューブを前にして、光葉はスクール水着でモジモジ。それは光葉が光を気にしているわけではない。鰯司の存在で、今その弱点は克服できている。答えはオトメ的なもの、つまり、下にいるふたりとの格差が大脳にビンビン伝達されているのである。
鰯司は光葉をじっと見つめて、何かを感じたのか、コブシをきつく握り締めた。
「光葉さん、がんばれ!理由はわからないけど、光葉さんが辛そうだ。」
鰯司が出し抜けに応援メッセージを送った。
「「えっ?」」
光葉だけでなく、先程、鰯司を言葉の刃で刺した湖線までが、驚きの表情を見せた。ついでにマカも怪訝な顔を隠そうともしなかった。
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