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第一章

第三十四部分

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「間違いではありません。酷互のテスト内容は簡単です。これは日頃から接点が多くて、お互いのことをよく理解していることが重要となります。酷互、つまり、互いに酷なことをする、つまり相手のことを揶揄しまくるということです。相手を罵詈雑言で、精神的にダウンさせた方が勝ちです。勝った生徒には10点差し上げます。では始めてください。」
「えええ!」「そんな!友達にそんなことが」「できるわけないじゃない。」
みんな同じ思いなのか、クラスは静けさに包まれた。
そして、1分間の沈黙があった。
やおら、ひとりの女子生徒が小さな声で親友に耳打ちした。
「あたしに、酷互を言いなよ。あんたは中間テストがよくなかったんだから。これで点数稼ぎなよ。何を言われてもあたしは気にしないから。あくまで、得点のためだから、大丈夫だよ。」
「そ、そう。親友のあんたがそう言うなら、私のことを思ってくれてのことだよね。」
「じゃ、じゃあ、少しだけ話させてもらうよ。」
「いいわよ。構えているから。」
 女子生徒はスーッと息を大きく吸い込んでから、一気に吐き出した。
「あんたのこと、前からキライだったのよね。口臭いし。家もクサイよ。ふざけた存在なんだよ。」
「ちょっと、そこまで言っていいとは、言ってないわよ。」
「自分で言っていいって言ったのに。」
「あんたがそんな風に思ってるなんて考えもしなかったし。ひとでなしだったんだ!」
「こっちこそ、ショックだよ!」
仲のよかった友達も喧嘩別れしてしまう。それが学校側の狙いである。甘え、傷の舐め合いを許さない、切磋琢磨で人間は成長する。
湖線と光葉は、相撲の立ち合いのように、睨みあっている。しかし、その状態から微動だにせず、フリーズしたかのようである。無言を貫いているのである。
「光葉さんには、言いたいことが山ほどありますわ。正面切って、日頃感じていることをぶつける、こんな機会はもうありませんわ!」
「湖線には子供の頃から、嫌な思いをさせられてる。今こそ、堂々と語ってやるんだから!」
ふたりとも相手を罵倒したいというマグマは満タンである。しかし、マグマは休火山の底に溜まったままであった。
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