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「や、大和君!」
がーん。がーん。がーん。見、見られた。大和君に見られた。
しゅるるる。苺から一気に魂が抜けた。
「や、俺は違うから。別にさっき知り合ったばかりだし……」
フォローのつもりが全然フォローになっていない。
「ふーん、知り合ったばかりの男とホテルに行くんだ? 結構遊んでるんじゃん」
見られた……もう終わりだ……
そ、そうだ!
「べ、別に彼氏ってわけじゃないし。大和君だってよくある事でしょ?」
「ふーん。よくある事ねえ。ま、苺ちゃんの勝手だから、俺には関係ないけど」
がーん。関係ないって言われた。
「そ、そーね。あたしの勝手よね……」
「じゃね、邪魔して悪かったね」
大和は冷たくそう言うと苺に背中を向けた。
あああ……大和君……
遠ざかる大和の背中を見送りながら、苺はその場に座り込んだ。
「あーあ。あたしってば、ばか」
青年の気の毒そうな声。
「だから、言ったのに。絶対後悔するって……あいつがあんたの好きな奴?」
「うん。でももうだめかな」
「大丈夫だよ。俺達、何もないんだから。追いかけていいわけでもすれば?」
「だって、彼女じゃないもの。あたしの片思いだもん。いいわけする理由なんてないもん」」
「そーかな。でもあいつ、何だか怒ってた様子だったぜ? そう悲観する事もないんじゃないかな」
「もういーよ」
「あーあ、泣いちゃって。おい、こんな所で泣くなよ。俺が泣かせてるみたいじゃんか」
「うん」
通りがかるカップルがじろじろと二人を見ていく。
「ち、ちょっと、頼むよお。泣くなよな、泣くなってば。もう! しょうがないな」
困りはてた青年は仕方なく、苺の腕を引っ張った。
とりあえず、ホテルに入って泣きやむのを待つしかないと考えた。
このまま放っていくには可哀想だし、どうやら情に厚い男らしい。
ひっくひっくと泣きじゃくる苺をどうにか立ち上がらせると、手をひいてやる。
そこへたったったと走ってくる足音がして、二人の背後に人影ができた。
青年が振り返る。
「わ!」
「おい、泣いてる女の子を連れ込んでどうするつもりだ? 言っとくけど、彼女空手使いだぜ?」
「な、何言ってんだよ! あんたが処女は面倒くさいなんて言うから、この子がおかしな事を考えるんだろ?」
「俺が?」
「そうだよ! もう勘弁してくれよ! 俺はただの通りすがりだっての! もう後は任せたからな!」
青年はそう叫ぶと苺を放して逃げ去って行った。
「苺ちゃん! 俺がいつ処女が面倒くさいって言った? それに、通りすがりの男とやろうなんてどういうつもりだよ? で、そんなに泣くんなら、やらなきゃいいだろ?」
大和が呆れ顔で苺にきつく言った。
「大体、処女なんだから、恋愛にも順番ってもんがあるだろ?」
「だって……」
ひっくひっくとしゃくりあげる苺に、
「とりあえず、手でもつなごうか」
と言って、苺の手を取った。
「まあ、最初はこんなもんからだろ。あーあ。また真っ赤になっちゃって。髪が緑で真っ赤だから、本当に苺みたいだな」
と言って大和が笑った。
がーん。がーん。がーん。見、見られた。大和君に見られた。
しゅるるる。苺から一気に魂が抜けた。
「や、俺は違うから。別にさっき知り合ったばかりだし……」
フォローのつもりが全然フォローになっていない。
「ふーん、知り合ったばかりの男とホテルに行くんだ? 結構遊んでるんじゃん」
見られた……もう終わりだ……
そ、そうだ!
「べ、別に彼氏ってわけじゃないし。大和君だってよくある事でしょ?」
「ふーん。よくある事ねえ。ま、苺ちゃんの勝手だから、俺には関係ないけど」
がーん。関係ないって言われた。
「そ、そーね。あたしの勝手よね……」
「じゃね、邪魔して悪かったね」
大和は冷たくそう言うと苺に背中を向けた。
あああ……大和君……
遠ざかる大和の背中を見送りながら、苺はその場に座り込んだ。
「あーあ。あたしってば、ばか」
青年の気の毒そうな声。
「だから、言ったのに。絶対後悔するって……あいつがあんたの好きな奴?」
「うん。でももうだめかな」
「大丈夫だよ。俺達、何もないんだから。追いかけていいわけでもすれば?」
「だって、彼女じゃないもの。あたしの片思いだもん。いいわけする理由なんてないもん」」
「そーかな。でもあいつ、何だか怒ってた様子だったぜ? そう悲観する事もないんじゃないかな」
「もういーよ」
「あーあ、泣いちゃって。おい、こんな所で泣くなよ。俺が泣かせてるみたいじゃんか」
「うん」
通りがかるカップルがじろじろと二人を見ていく。
「ち、ちょっと、頼むよお。泣くなよな、泣くなってば。もう! しょうがないな」
困りはてた青年は仕方なく、苺の腕を引っ張った。
とりあえず、ホテルに入って泣きやむのを待つしかないと考えた。
このまま放っていくには可哀想だし、どうやら情に厚い男らしい。
ひっくひっくと泣きじゃくる苺をどうにか立ち上がらせると、手をひいてやる。
そこへたったったと走ってくる足音がして、二人の背後に人影ができた。
青年が振り返る。
「わ!」
「おい、泣いてる女の子を連れ込んでどうするつもりだ? 言っとくけど、彼女空手使いだぜ?」
「な、何言ってんだよ! あんたが処女は面倒くさいなんて言うから、この子がおかしな事を考えるんだろ?」
「俺が?」
「そうだよ! もう勘弁してくれよ! 俺はただの通りすがりだっての! もう後は任せたからな!」
青年はそう叫ぶと苺を放して逃げ去って行った。
「苺ちゃん! 俺がいつ処女が面倒くさいって言った? それに、通りすがりの男とやろうなんてどういうつもりだよ? で、そんなに泣くんなら、やらなきゃいいだろ?」
大和が呆れ顔で苺にきつく言った。
「大体、処女なんだから、恋愛にも順番ってもんがあるだろ?」
「だって……」
ひっくひっくとしゃくりあげる苺に、
「とりあえず、手でもつなごうか」
と言って、苺の手を取った。
「まあ、最初はこんなもんからだろ。あーあ。また真っ赤になっちゃって。髪が緑で真っ赤だから、本当に苺みたいだな」
と言って大和が笑った。
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