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タイマン
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バキッ!
グーでくっそ生意気な顔を殴ってやったら、思いの外の不意打ちだったんだろう、ミス・アンバーの身体は部屋の隅まで飛んで行った。
「上等だぁ、テメエ。生憎だがな、タイマンじゃ負けた事ねえんだよ。テメエの腐った性根、たたき直してやんよ。ミス・アンバーの身体を乗っ取るだけで精一杯なんだろ? たいして魔力は回復しちゃいない。カリナ様も妹も魔力では殺せなかったんだろ? だから毒薬やナイフで殺したんだろ? こっからはガチだからな。お前があたしを殺すか、あたしがお前を殺すか、だ」
「お前! ミス・アンバーを殺すつもりか!」
頬を抑えて、ミス・アンバーが焦っている。
「ああ? そんなことはてめえが心配するこっちゃねえ、立てよ。あたしがやるっつったらとことんやるからなぁ! おら、かかってこい!」
ミス・アンバーの黒髪を掴んで引きずり起こすと彼女はゼイゼイ言いながら、
「こ、この女の魂を掴んでいるのは私だぞ! い、今すぐ女の魂を握りつぶしてやるぞ!」
と言った。
「なんであたしが婚約者の元カノの心配をしてやんなきゃならねえんだよ。こっちは今まで被ってきた猫がどっか消えちまって正体ばらしちまってんだ。元カノ助けて、皇子と元カノでハッピーエンドってか? ふざえけんなよ、てめえ」
右腕を振りかぶって、ミス・アンバーの顔面を殴り飛ばそうとした瞬間、ぐにゃりとミス・アンバーの身体が揺れて、力なく床に崩れ落ちた。
「ちっ、抜けたか。白薔薇!」
あたしは白薔薇を見た。
「え?!」
「油断すんな! 魔女がミス・アンバーから離れた。あんたの身体を狙うかもしれないぞ!」
だが魔女は誰の身体を乗っ取る事も出来なかった。
それは目にはっきりと視える。
カリナ前王妃がしっかりと魔女の魂を掴んで立っていた。
「は、母上!!」
「カリナ様!」
とヴィンセント皇子とグレイ騎士が叫んだ。
それは誰の目にも明らかに見えている、鮮明なカリナ前王妃の姿だった。
「ヴィンセント……大きくなって、逞しくなって……大きくなったあなたに会えて嬉しい。本当に嬉しい。二十年、待ってたかいがあったよ。あたしに似て男前でよかった。これからも国王を助けて、国を民を守っていってね」
「母上……ずっとここにいらしたのですか」
「そう、いつか大きくなったあなたに会えるかもって……それが心残りだった。ごめんね、五歳のあなたを残していって……ヴィンセント……いつまでも愛してるから」
「母上……」
先輩はヴィンセント皇子に近寄り、大きな息子をぎゅっと抱き締めた。
「嬉しい……ヴィンセント……」
次に果梨奈先輩はあたしの方へ向かって、
「マリア、ありがとう。本当に本当にありがとうね。あんたには感謝しかない。魔女はあたしが連れて行くよ。だから安心して」
と言った。
「先輩……」
「あんたには頼み事ばっかりして悪いけど、ヴィンセントの事を頼むよ。あんたも幸せになってね。生まれ変わったらさ、またレディースやろうよ。毒姫真理亜、また会おうぜ!」
先輩はそう言って優しく笑った。
それから、掴んでいる魔女の魂をぐいっと引っ張り、
「てめえはあの世であたしとタイマンだよ。死ぬまでやっからな!」
とごつい形相で魔女を脅した。
魔女はすっかり小さく縮んで、「ヒイイイ」と泣いた。
果梨奈先輩は最後に「ニカッ」と笑ってから消えた。
「先輩……またあたしを置いてくのかよ……先輩……約束だからなぁ……またレディースやるんだからなぁ……」
グーでくっそ生意気な顔を殴ってやったら、思いの外の不意打ちだったんだろう、ミス・アンバーの身体は部屋の隅まで飛んで行った。
「上等だぁ、テメエ。生憎だがな、タイマンじゃ負けた事ねえんだよ。テメエの腐った性根、たたき直してやんよ。ミス・アンバーの身体を乗っ取るだけで精一杯なんだろ? たいして魔力は回復しちゃいない。カリナ様も妹も魔力では殺せなかったんだろ? だから毒薬やナイフで殺したんだろ? こっからはガチだからな。お前があたしを殺すか、あたしがお前を殺すか、だ」
「お前! ミス・アンバーを殺すつもりか!」
頬を抑えて、ミス・アンバーが焦っている。
「ああ? そんなことはてめえが心配するこっちゃねえ、立てよ。あたしがやるっつったらとことんやるからなぁ! おら、かかってこい!」
ミス・アンバーの黒髪を掴んで引きずり起こすと彼女はゼイゼイ言いながら、
「こ、この女の魂を掴んでいるのは私だぞ! い、今すぐ女の魂を握りつぶしてやるぞ!」
と言った。
「なんであたしが婚約者の元カノの心配をしてやんなきゃならねえんだよ。こっちは今まで被ってきた猫がどっか消えちまって正体ばらしちまってんだ。元カノ助けて、皇子と元カノでハッピーエンドってか? ふざえけんなよ、てめえ」
右腕を振りかぶって、ミス・アンバーの顔面を殴り飛ばそうとした瞬間、ぐにゃりとミス・アンバーの身体が揺れて、力なく床に崩れ落ちた。
「ちっ、抜けたか。白薔薇!」
あたしは白薔薇を見た。
「え?!」
「油断すんな! 魔女がミス・アンバーから離れた。あんたの身体を狙うかもしれないぞ!」
だが魔女は誰の身体を乗っ取る事も出来なかった。
それは目にはっきりと視える。
カリナ前王妃がしっかりと魔女の魂を掴んで立っていた。
「は、母上!!」
「カリナ様!」
とヴィンセント皇子とグレイ騎士が叫んだ。
それは誰の目にも明らかに見えている、鮮明なカリナ前王妃の姿だった。
「ヴィンセント……大きくなって、逞しくなって……大きくなったあなたに会えて嬉しい。本当に嬉しい。二十年、待ってたかいがあったよ。あたしに似て男前でよかった。これからも国王を助けて、国を民を守っていってね」
「母上……ずっとここにいらしたのですか」
「そう、いつか大きくなったあなたに会えるかもって……それが心残りだった。ごめんね、五歳のあなたを残していって……ヴィンセント……いつまでも愛してるから」
「母上……」
先輩はヴィンセント皇子に近寄り、大きな息子をぎゅっと抱き締めた。
「嬉しい……ヴィンセント……」
次に果梨奈先輩はあたしの方へ向かって、
「マリア、ありがとう。本当に本当にありがとうね。あんたには感謝しかない。魔女はあたしが連れて行くよ。だから安心して」
と言った。
「先輩……」
「あんたには頼み事ばっかりして悪いけど、ヴィンセントの事を頼むよ。あんたも幸せになってね。生まれ変わったらさ、またレディースやろうよ。毒姫真理亜、また会おうぜ!」
先輩はそう言って優しく笑った。
それから、掴んでいる魔女の魂をぐいっと引っ張り、
「てめえはあの世であたしとタイマンだよ。死ぬまでやっからな!」
とごつい形相で魔女を脅した。
魔女はすっかり小さく縮んで、「ヒイイイ」と泣いた。
果梨奈先輩は最後に「ニカッ」と笑ってから消えた。
「先輩……またあたしを置いてくのかよ……先輩……約束だからなぁ……またレディースやるんだからなぁ……」
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