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告白

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「先輩! 今更! 泣き言なんて許さねえぞ!! この落とし前は!!」

(駄目だ、マリア。一歩遅かったら、あんたは串刺しだったんだよ? 今頃はヴィンセントが血塗れあんたの亡骸を抱いて泣き叫んでたさ。あんたはあたしと並んでさ、泣いてるヴィンセントに声をかけることも抱き締めてやることも出来なかったんだよ!)

「……だからって、このままでいいって言うの? このままリベルタが魔女だっつう事を知らん顔してさ、先輩、あんただって殺されたんだろう? いいのかよ!!」

(復讐よりも大事なものがある……あたしはヴィンセントとあんたに会えて嬉しかった。それでもう十分だ)

「ざけんなっ! 弱気になってんじゃねえぞ! コラ!!」

 とあたしが拳を振り上げた瞬間、ドアがノックされヴィンセント皇子が顔を覗かせた。
 一瞬で先輩は姿を消し、あたしは宙ぶらりんになった振り上げた拳を力なく毛布の上に落とした。

「マリア、大丈夫か?」
「え……ええ。まあ、たいした怪我はしてません」

 本当はヴィンセント皇子とも話したい気分じゃなくなってた。
 リベルタの事、魔力の事、いろいろ話して対策を考えるつもりだったんだけど。

「すまない」
 とヴィンセント皇子が言った。
 皇子はあたしに近づいてきてから、ベッドの側にひざまずいた。
「別に皇子のせいじゃ……」
「いや、私の管理が甘かった。君に危害を加えるような人間をこの城に入れてしまった……それに君を一人にしたばかりにこんな目に」
「もう、よろしいですわ」

 あたしはめっちゃ怖い目にあったけど、それ以前の屈辱は忘れてないよ。

「白薔薇うんぬんは皇子が決める事ですわ。今すぐにでも私と婚約破棄をなされば、私はもう生け贄になどされる事はないかもしれませんし」

 つんと横を向く。
 
「婚約破棄などしない!」
 と皇子が怒っているような大きな声で言った。

「な、そんな怒鳴らなくていいじゃん!」
「す、すまない。だが、マリア、私は……私は……」

 皇子はそれ以上の言葉が出ないようで、しばらくの間、唇を噛みしめていた。
 やがて顔を上げると、一息ついて話し出した。
「私は君となら、父王の後を継いで立派に国を治めていけると思ったから求婚したのだ。最初は……君のようなしっかりした女性なら、と。ただそれだけで良かった。リベルタに対抗できるような王妃を、と。ローレンスの婚約者だろうが、その話は壊れたのだからむしろ好都合だと……君だって、第一皇子との婚約なら世間体の悪い事態を払拭できるだろうと、君にとってもいい話だろうと」
                                                              
 こんな目にあった上に、先輩はもう探偵ごっこはやめろとか言うし、皇子はあたしへの求婚は本当に政略的なもんだって断言しちまうし、何だよ、どいつもこいつもふざけんな。

「あっそ、それで? もうお役御免だから、帰ってもいいって話? 分かったよ。明日にでも帰るよ!」 

「違う!! 君を知る度に、君の優しさや明るさは私を救ってくれた。そして徐々に私の思いはただの自分勝手で、国の為に君を犠牲にするのが心苦しくなってしまったのだ。もし、君が本当ローレンスをまだ愛しているならば、私は潔く身を引こうと。ローレンスが欲しがるから譲るのではない。君が愛し、君を幸せにできる男と結婚して欲しいと思うからだ。このような政略結婚で愛してもない私のような男と結婚するのは良くないと……」

「ローレンス皇子が私を幸せに出来ると本気で思ってるわけ? 節穴かよ。その目」

「マリア……」

「確かに私は幸せになりたいですわよ? ヴィンセント様、私は私を幸せにしてくださる方の元へ嫁ぎとうございますわ。ローレンス皇子よりも私を幸せにする自信がないのでしたら、どうぞ婚約破棄して下さいな?」

 あたしはじっと皇子の目を見つめた。
 皇子もあたしを見返してから、
「婚約破棄……はしない。私は君を愛しているから。君の側にいる男は私だけだ。ローレンスなんかに渡しはしない。私は君に愛される男になれるように努力する」
 と言った。
「それなら、もうこのお話はお終いですわ。私はローレンス様の事などなんとも思っておりません! それから、白薔薇に何を相談されてもスルー一択ですよ!」
 
 とあたしが言うとヴィンセント皇子は顔を上げて、少し嬉しそうに微笑んだ。

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