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九章 夢見の魔女リゲル

274.魔女の弟子と最悪の事態

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ラグナによって引き起こされた巨大な雪崩は、ズュギアの森の木々に阻まれ幸いな事に森の中の村々に影響が出ることはなかった

しかし、山と面していた森の内部分は酷い有様だ、木々はなぎ倒され 押し寄せた雪崩によって全てが床の下に埋まり、辺り一面が破壊の残骸とその上に覆いかぶさる雪によって一面 白銀世界と化していた

「プハァッ!、寒いぃぃ~~!!」

未だ雪煙立ち込める白銀世界のど真ん中で 上に覆いかぶさった雪を払いのけラグナはブルブルと濡れた猫のように体を震わせ付着した雪を払いのける

ああくそ!、最悪だぜ…、あとちょっとで完璧にみんなと一緒にズュギアの森を抜けられたってのに…

全ての始まりはこの森に到着した瞬間の事だった、何故かここで待機し待ち伏せをしていたジョーダン達執行官の襲撃を受け 俺たちはまたしても窮地に立たされる事になった、まぁそれも俺の一計でなんとかなるはずだったんだが…

メルクさんと合流する直前、突如として現れた謎の老神父カルステンの手によって俺ぁみんなと合流し損ね、こうして雪のど真ん中に投げ出される事になってしまったんだ

それもこれもその老神父カルステンの仕業だ、何者だあいつ…神父って、あの身体能力どう考えても神父じゃねぇよ

だって俺が古式付与魔術を使ってようやく届くような高度に、追いついて来たんだぜ?デタラメにもほどがある、俺が言うのもなんだがな…

「チッ、で…?手合わせ願いたいってのは、どう言う意味だよ」

立ち上がり、袖にかかった雪をパンパンと払って 睨みつける、雪煙の向こうに立つ その影に向けて…

「ほほほ、いやはや 頑丈ですな、あの高さから叩き落とされて無傷とは」

ほほほと雪のように白い髭を撫でる老神父は、皺だらけの顔を余計に皺くちゃにしながら笑い、彼もまた 頭の上の丸帽子を取ついた雪を払う

こいつが例の老神父だ、俺と手合わせがどうのと言いながら地面に叩きつけた張本人…、まさかあの高さからこいつ…着地したのか?平然と?

「雪がクッションになってくれたからな、まぁ 下が岩肌でも…結果は同じだっただろうけど?」

「のようですな、いやぁ 素晴らしい鍛え方をされている、ああ 飴をあげましょう」

「お?は?」

どれどれと胸ポケットからキャンディを一つ取り出し、手渡してくるカルステンの軽さに 思わず呆気を取られる、こいつ俺と手合わせしたいんだよな?なのになんで飴を…まぁ貰うけど

包み紙を剥いで口の中に放り込む、甘い菓子の類は好きじゃないからあんまり食べないが、たまにはいいなこう言うのも、デティが夢中になるのもよく分かる

「無警戒に食べるとは、…大物なのか 馬鹿なのか」

「あんたがくれたんだろ、それに毒の類が入ってりゃ匂いでわかる」

カラコロと口の中で飴を転がしながら呆れるカルステンの態度にため息が漏れる、これに毒は入ってない、理由としてはまぁ 毒が混ぜてあるような匂いはしなかったし、それに

「それに、今から手合わせしようって男が、相手に毒を盛るか?」

「…ほう、ほほほほ やはり君は面白い、若いですなぁ…羨ましい限りです」

「誰だって若い時はあるし、常に人は老いる、そこに羨望も絶望もないだろう」

「それは若者の特権です、老いるとそうも言ってられないのです…、いえ あまり失礼な説教はしないほうがいいですかな?、アルクカースの王 ラグナ様」

「その名でこれを呼ぶ奴がこの国に居たとはな、みんな俺の名前を神敵だと思ってるみたいなんだ、あんたから訂正しておいてくれ」

「この国の皆様は信心深いですからな、神の敵に親近感を持たないために 名で呼ぶのを戒める者も多い」

「じゃああんたは信心が浅いのか?、神父がそりゃあまずいだろ」

「ほほほ、この状況で貴方は豪胆な事ばかり仰られる、流石は戦士の国の王…身も心も精強極まりない」

読めねぇな、こいつの態度…こいつからは執行官達のような狂気的な敵意を感じない、神敵だから殺す!というか問答無用感が無い…けど、敵意がないわけでもない、おかしな奴だ

「…先程の戦い、遠巻きながら観戦させていただきました、いやぁ大した物だ 執行官達を相手にあそこまで大立ち回りを見せ、剰え出し抜き 我が包囲を抜け出しもするとは」

「我が包囲?、まさかあの包囲網 あんたが敷いたのか?、あんた 執行官じゃないだろ?」

「ええまぁ」

「じゃあなんで指揮とってんだよ、それともこの国の聖典にはお年寄りの言うことを聞きましょうなんてのもあるのかよ」

「ありますが 彼らが私の言うことを聞いていたのはそこが理由ではない、…私が 先代神将だからですよ」

「先代…神将!?!」

こいつが…いやだとすると寧ろ納得する、あの高い身体能力と訳の分からねぇ包囲網を敷いた理由も

こいつはネレイドよりも前の神将、かつて デニーロやマグダレーナと肩を並べ魔女世界最強と呼ばれた 『魔女四本剣』の一人…ああそうか!カルステン!聞いたことがあると思ったら!、こいつ有名人じゃん!

なるほどねぇ、あの包囲網…あれは緻密に計算されたタイプの物じゃない、長年の戦いで研ぎ澄まされた直感と第六感で繰り出された 理解不能なタイプの計略だ、こう言うことができるのは 長く戦いに身を置いた歴戦の老将だけ

うちの国じゃ、百戦無敗の大軍師 ギベオンしか出来ないタイプの奴だ

そうか、こいつがか…ってことはこいつは先代神将の権利を使って執行官を自軍として、俺たちを待ち伏せしていたんだろう、厄介なのにも目をつけられたもんだぜ

「大物が出張ってくるとは、随分デカく見られてるみたいだな、俺たちは」

「ええ、貴方達を相手に軍部はもう滅茶苦茶ですよ、皆躍起になって貴方達を殺そうと手段を選んでいない…、全ては教皇様の仰られた神託を信じてね、だが 私はどうにも信じられないのです」

「え?」

「今の教皇様はどこかおかしい、突如現れた黒髪の女をテシュタル様だと言い張り…、あの目には言い知れないなにかが宿っている気がする」

黒髪の女?突如現れてテシュタルだと紹介されたって?、そいつ…間違いねぇ!

「そいつだ!そいつだよ!シリウスだ!」

「はぁ?シリウス?」

「ああ!、ああくそ!なんて説明したらいいんだ…、悪いやつなんだよ!シリウスってのは!世界を滅ぼそうとしていて!、お前ら騙されてるんだ!シリウスに!、教皇リゲル様もシリウスに操られてて…それで!」

「落ち着いて落ち着いて、つまり貴方はあの黒髪の女の正体を知っていると?」

「だからこの国に来た!、あいつを倒して リゲル様を元に戻して、それで…世界を救うために」

「……ふむ、俄かには信じがたい、悪には悪の正義がある 貴方の言う世界救済が本当に我が国のためになると信じられる要素は一体どこに?、私からしてみればいきなり現れてよく分からないと言う点では…貴方も黒髪の女も同レベルです」

まぁ、そりゃあ信じてくれないよなぁ…、怪しいって点じゃあ俺も一緒だ、なんなら加えた被害も現状じゃあシリウスよりも俺たちの方が上と来たもんだ、信じる要素はどこにも無いよな…

「別に、信じてくれなくても構わない、それでも俺たちはシリウスに会いにエノシガリオスに行く」

「そしてそれを止めたいのが…我が後進達と、なるほど 大まかな状況は理解出来ました」

ようやく分かった そう静かに頷くカルステンを見て、心の何処かが揺らぐ…、もしかしてこいつ 話わかるタイプか?、疑ってはいるが 疑ってくれるだけならマシじゃないか?、他の奴らなんかみんな疑う余地もなく俺たちを排除しようとするしさ

…もしこいつを味方につけられたなら、なをて甘い考えさえ湧いてくる

「私はここに、事の真相を確かめに参りました、この国を包む嫌な気配の源流がどちらなのかを」

「俺達とシリウスのどちらかが…悪か迷っていると、そう言いたいんだな」

「ええ、ほほほ 情けない話ではありますが、私は頭の固い頑固ジジイでしてな、…この目で確認するまで 容易く信じるわけにはいかないのです」

そりゃあそうだ、この男は今は一線を退いてはいるが 軍の全てを背負って立ってきた男、即ち国民の安全を最前線で守った男だ、そいつが易々と他人を信じてちゃ国は立ち行かない

それは分かる、だから今ネレイド達が俺達を排除しようとしているのには 俺は一定の理解を示すつもりではいる、彼等のやっている事は 軍人として至極正しいからな

まぁ俺たちにとって邪魔でありことに変わりはないが

「で?、つまりあんたはどうしたいんだ?」

「先も申した通り、貴方と手合わせを…、拳を交わせば分かることもありましょう、それに そんな目的はそれとして、単純に 神将の中の神将であるネレイドに手傷を負わせた男にも興味がありますからな」

「…結局、戦いたいってだけだろ?、事の真相を…なんて 都合のいい理由があるからすっ飛んできたってだけでよ」

結局 こいつは戦いたいからここにいるんだ、シリウスと俺達を中心とした国内の動乱…その事の真相を見抜くと言う理由はある、あるにはあるがそれはそれとして単純に若い頃の血が騒いだから戦いたい

理知的な目的と本能的な理由がまさかの利害の一致を見せたが故の行動、こいつにとってここでの戦いは闘争本能を満たす目的であり 真相を見極める手段でもある

ここまで理由があるんだ、戦わない理由はないんだろう こいつにとっては

「とんだジジイだ、血気盛んにも程がある」

「ほほほ、まぁ ジジイの戯れと思って付き合ってくだされ、まぁ…」

すると カルステンはゆっくりとその神父服を脱ぎ去り、短く薄いシャツ一枚になると共に 頭の帽子を投げ捨てる、まるで臨戦態勢と言わんばかりの姿になると共に 彼は取り出す…ポケットから、バンテージを

「私にも信仰心はありますからな、あの黒髪の女にいいように使われていたとしても、神敵と言われては 黙ってはいられないのですよ、もはや捨てた名前とはいえ 神将を背負ってきた者として…、お前を無事に帰す訳には行かん」

ゆっくりと 慣れた手つきで拳にバンテージを巻きつけていく、ただそれだけの動作を目にしていると言うのに 俺の中の本能がゾワゾワと駆り立てられ、全身の毛が逆立つ

半端じゃねぇ存在感だ、さっきまでの老神父然とした佇まいが嘘のようだ…、こいつ 衰えてなんかいやしねぇ

まだまだ神将として戦える域に、こいつはいる!

「神敵よ、いや 神敵の名を与えられた者よ、この老いぼれと一手交わす覚悟はあるか?、…身の潔白を証明する度量はあるか?、あるならば この勝負を受けよ、私もまた お前の命を全霊で刈り取るが故…全霊で答えよ」

「上等じゃねぇか、言っとく歳上に譲るほど、俺は利口な坊やじゃねぇぜ?」

こいつはここで倒さないといけない、ここで逃げても追ってくる、もしかしたらまた軍を率いて巧妙な罠を仕掛けてくるかもしれない、勝ちを得て身の潔白を証明すれば或いは俺たちの有利に働くかもしれない

それより何より、偉大な先達が ここまでお膳立てしてくれてんだ、答えなきゃ…男じゃねぇ

「勇ましいな、私も手加減せんぞ」

「当たり前だ、したらぶっ飛ばす」

「フッ、…やはり お前は私の血を滾らせる、お前ならば…或いは」

グッ!とバンテージを巻き終えたカルステンは、ゆっくりと何かに飢えるように両手を握り構えを取る、片手で体を もう片手で顎を守る堅実な構えにて、軽く 雪の上でステップを踏む、やけに熟れている印象だ…息を吸うとか 手を動かすとか、もうそういう当たり前の段階にある構え…こりゃあ手強いぞ

かつて、伝説と呼ばれた四人の戦士達の一人が 俺の前で構えを取ってくれている、うぅ クッソ嬉しい…!

「では行くぞ、先代神将…改め 拳神将のカルステンが相手を努めよう、ゴングは要るまい」

「おう!、来な!」

「ッ──!!」

無音のゴングと共に 両者の拳が握られる 腕が隆起し、大地の雪が弾け飛び 今、互いの腕が交錯する───




「ぅおりやぁっっ!!」

先制を勝ち取ったのはラグナだ、凄まじい速度で関節を駆動させカルステンに肉薄し拳を振るう、雪煙を切り裂くような怒涛の拳撃が轟音と共にカルステンに向けて襲いかかるが…

「シッ…シッ…!」

まるで区切るような細かい呼吸と共に刻まれるステップとスウェイ、身を丸め 左右に体を揺らしラグナの拳撃をいとも容易く避けて見せるのだ、初見でラグナの拳が見切られた まるで当たり前のようにこの速度についてくる

(嘘だろ!、速え…いや違う!上手い!)

速度ではラグナは優っている、カルステンの関節はすでに軋み とてもじゃないが全盛期の機敏さを持ち合わせていない、しかし それをカバーする技量が途方も無いのだ

何処をどうすれば避けられる、それを一目で見切り 思考するまでもなく行動に移す、その一連の動きの鮮やかさに思わずラグナも舌を巻く、こいつは凄いと

そして

「シッッ!!」

「あ!やべ…ぐぅっ!?!?」

拳を振るい 生まれた一瞬の隙に針を通すようなカルステンの拳が飛ぶ、一切のブレがない 力の霧散が一切ない槍のような拳がラグナの顔面を居抜き 、ラグナの口元から鮮血が舞う

重い、あまりに重い まるで鉄の棍棒で殴られたような感覚が脳を揺らす、鋼の剣だって弾き返す肉体が 老人のパンチで血を吹いたのだ

(いってぇ…!、なんじゃそりゃ…どうやったらそんなパンチ打てるんだよ)

鞭のようにしなり 鉄のように硬く、それで居て撃てば水が染み渡るように痛みが伝搬する、力ではない 純粋な技量によってのみ放たれるパンチ…、ここまで研ぎ澄まされた拳を打てる人間が果たして世の中には何人いるよ!

「やるじゃねぇか…」

「口を閉じろ、舌を噛むぞ…!」

「くっ!」

動き始めたカルステンの動作に思わず両手を上げて防御の姿勢を取るラグナ、しかし 遅い…というより粗かった、カルステンの拳は容易くラグナの防御をすり抜け側頭部を揺らす剛拳をブチかます

「ぁがっ!」

 視界が二重三重にブレ思わず膝が震える、痛いというよりは恐ろしい、この男の拳は鎌だ 俺の意識を的確に切って雁落とす鎌なのだ

やられる、このまま隙を見せてちゃ滅多打ちだ、まずは防がないと…

「シッッ!!」

「ッ!速…ガッ!?」

ブレる視線のまま再び顔を上げ腕を盾のように構えるも、その間を通りに抜け 気がついたカルステンの拳が俺の頬を射抜いている、速い 速く重い…

「グッ…うっ、ぜぇ…ぜぇ…」

「そんなものか、少々失望しましたぞ」

舞い散る雪の中 半袖未満の薄着で拳を構えるカルステンを睨みつけるラグナは、一歩二歩 フラつくように後ろに下がり体勢を立て直す

現役引退と聞いて、現神将に負けてその座を譲ったと聞いて、ラグナは何処かで序列を作ってしまっていたのかもしれない

精々が副官クラス、行ってそれより少し上…と、まさかな?とんでもない見込違いだ 

長年磨き続けられた技の巧みさ、人体への理解、攻防の絶妙な分配、攻め時を嗅ぎ分ける嗅覚、全て ただの鍛錬では得られないモノばかり…今のラグナが持っていないものばかりカルステンは持っている

これが歴戦の勇士、伝説の戦士…楽しくなってきやがった

「こんなものと断じるにゃ 話が早いぜ…!」

「そう来なくては…な!」

二度目の肉薄が始まる、互いに拳を握り合い 殴り合う、ラグナの拳は轟音を立てて周囲の雪を巻き込んで振るわれる されど大振りではなく、的確な体捌きから生み出される攻撃には無駄がない

しかし、それを迎え撃つカルステンの拳は更にその上をいく程鮮烈である、彼の拳は雪を揺らさない 音もない ただただ突き出すようなパンチ、されどその一動作には無駄など考えられない程に流麗

両者がぶつかった時、叩き出される破壊力ではラグナが上、しかし 拳とは当ててこそ意味がある、そこを理解しているカルステンは例え一撃で倒せずとも一撃も貰わず千発打ち込む方に比重を置いてラグナを叩いているのだ

故に、拳を振っても打撃として昇華されるのはカルステンの攻撃ばかり、ラグナの拳は全てカルステンのスウェイによって捌かれ 空を切るしかない

「ッ…ぺっ」

口内に溜まった血を吐いてラグナは更に足を前に動かして、ギアを上げるように乱打の速度を上げる、自分が優っている物を理解しているが故に 速さ勝負に持ち込むつもりなのだ、いくら殴られても 気合いと根性で堪えて 最後にジジイを押し倒すつもりで

「面白い…!」

だがカルステンは一枚上を行った、ラグナの怒涛の乱打を前に引くでもなく 嫌がるでもなく、寧ろ答えるように前に踏み出し乱打戦に応じたのだ……

ラグナの乱打を例えるなら、まるで横に吹き付ける豪雨だ、一直線どこまでも直線的、それでいて相手の回避を予測し逃げ場を奪うように放たれる連打を前に通用する傘は無く どんな相手でも打ち倒すことが出来ただろう

しかしそれに答えたカルステンの乱打は一味違った、それを前にしてラグナが抱いた感想は一つ…、それはまるで

(まるで、海流だ…!)

それを乱打と呼んでいいかさえ分からない、まるで険しい海の乱れる海流のように畝る空気を前に思わずラグナは息を飲む、繋がっているのだ 乱打の一発一発が途切れることなく一つの動作として完結しているが故に二つの拳が空気を混ぜて不可視の流れを作っている

例えるならば拳の一筆書き、速度で上回るはずのラグナが徐々に押され始める、純粋な技量を前に 

「ごはぁっ!?」

「顔が上がったぞ…」

打ち込まれる無数の連打、打ち込むつもりが逆に打ち込まれたラグナは堪らず防御が下がってしまい 頭が痛みから逃げるように自然と上がってしまう、ダメだ これは師範からも言われている事じゃあないか

体を殴られて 殴られて、殴られ尽くした人間は意識では別に防御が下に下がり 頭が上がるもの、そこを殴れば大体は勝負アリだと…、事実ラグナはそうやって相手を殴り飛ばしてきたこともある

それを今度は…自分自身が

「終わりだ…!」

刹那、カルステンの踏み込みが大地を弾けさせる、ただ弾けただけではない まるで螺旋を描くように雪が回転する、それ程までに 全身を捻るように踏み込んだのだ、足先から伝わる遠心力を腰で増幅し その勢いを体が伝え腕で加速し 拳の一点に伝える基本の打撃法…それが拳骨という技なのだ

基本中の基本にして武の極意、数万 数十万と打ち込んでたどり着ける領域に達した拳が、ラグナの顔を撃ち抜く、今までの布石の如きパンチとはまるで色の違う重撃にラグナの足が宙に浮く

「ぁ…がは…っ!」

押し倒された ラグナが、口元から溢れる血を吹いて 雪のマットに沈むように大の字に…

「まずは一つ、ダウンだ…」

「ぐっ…くそッ…!」

揺れる視線の中、ラグナは見上げる その姿を

黒く染まるような影に包まれたそのシルエットは、眼光だけを光らせてラグナを睨み 構えを取っている、早く立ち上がれとばかりに…絶望的なまでの威圧感でラグナの肌を突き刺しながら

これこそが、拳神将 カルステン・インティライミなのだと 嫌でも理解させられる

「へへへ…次は、テメェが…雪の冷たさを味わう番だぜ」

「味あわせてくれるか?」

「勿論…!」

膝に手をつきラグナは再び立ち上がり、挑み掛かる 何度でもカルステンという壁を打ち破るため、突破口を切り開くため 今しがた負けた勝負にもう一度出る…



超至近距離で繰り出される技と技 拳と拳 意地と意地、老ぼれと若人の二人が互いの打撃に誇りをかけて殴り合う、一歩も引く事なき打撃の応酬 されどカルステンは常に一つ上をいく

「シッ!」

「がはぁっ!?」

ラグナは拳の扱いが下手なわけではない 寧ろ彼よりも巧みな人間を探す方が難しいだろう、だが カルステンはその難しい一握りの人間というだけのこと

何せ彼は…カルステンはこのオライオンに於ける最強のボクサーなのだから

オライオンに於ける武闘スポーツの中でもレスリングに並んで歴史が深いと言われるボクシング、拳を握って殴り合うとだけ言えば単純にも聞こえるかもしれないそのスポーツは 何百年 何千年という歴史を刻み 数多の伝説と技術を生み出してきた

そして、オライオンボクシング界の総決算と言われるのこのカルステンなのだ

十五でリングに上がり 七十でリングを降りるまでの間に刻んだ星の数は今後永遠に抜かれることがないと言われる程に多く、また 長い現役生活の中 数え切れないほどの天才 努力家 ライバル達と戦い抜いてきた中で培われた彼の技術は ボクシングの結晶と言われるまでに巧みである

そんな彼には いくつもの異名がある

「シッシッ!」

「ぐっ!?速ッ!?」

通称『神速のカルステン』、彼の放つワンツーは最高の芸術だ 、だと言うのにその芸術を目で拝んだことがある人間は誰もいない、…見えないのである 彼の拳は

気がついたら殴られていた、そう感じるほどに素早い彼の拳捌きは攻撃も防御も許さない

「ッッ…せいッッ!!」

「ごはっ!?」

通称『拳槌のカルステン』、彼のボディーブローを浴びた男は一頻り嘔吐した後 こう語ったと言う、『彼には特例でハンマーの使用でも認めているのかい?、でなければ私の腹を殴った物の威力に説明がつかない』と…

ハンマーにも勝るパンチは一撃で相手の内臓を的確に潰し、呼吸を禁じ 胃液を吐き出させる、そんな重撃が目にも留まらぬ速度で飛んで来るんだ 目も疑いたくなる

「ッ…おぇ、この まだまだぁっ!」

「フンッ…」

通称『幻影のカルステン』、どれだけ拳を振っても当たらない 目の前にいるのに手が届かない、まるで霧のように掴めず 本当にそこに居るのかさえ怪しくなるほどに掠りもしない拳は、カルステンに追いつくことはない

卓越したスウェイ技術は相手の拳をギリギリのところで、されど一掠りもしないラインで回避を行い 相手の攻めを完全に封ずる

「チッ!、全然当たりゃしねぇ…!」

「大振りになったな…ラグナ・アルクカース!」

「え?ぶへっ!?」

通称『鏡打のカルステン』、かつてカルステンを相手に闇雲に攻めた拳士が居た、怒涛の攻めでカルステンを相手にスタミナ勝負を挑んだのだ、しかし 結果は大敗

少しでも甘い攻撃があったなら カルステンは見逃さない、カウンターという名の痛烈な指摘を以ってして 相手の不備を責め立て マウンドに沈める

そして…

「ハァッ!!」

「ッッ!?グゥッ!?」

通称『無敗の王者 カルステン』、とどのつまり彼が持ち得る異名を総合すれば…だ

彼は速度も攻撃力も、技術も感覚も、攻撃も防御も、他の追随を許さないのだ、何をしてもそれ以上で返してくる、何をやっても無駄になる

事…殴り合いという話において、彼は

なんでも出来る…、ただそれだけだ


「ぅぐ…ぅぁっ…」

「二回目のダウン、後がないなラグナ・アルクカース」

「は?…何、言ってんだよ…」

「昔の癖だ、気にするな」

「チッ…」

喰い千切るようなアッパーカットに二度目のダウンを喫したラグナは、雪の中 倒れながらも考える、打たれ続けた全身は 痛みという名の熱を持ち、雪に包まれてるってのに寒くねぇ

いや寒いわ、震えが止まらねぇ こんなにも防寒具を着込んでるってのにクソ寒い…ああくそ!

「十秒以内に立ち上がれ」

「命令すんなっての…、今立つから」

「ふむ、震えているように見えるが?」

「…この国に入った時から止まりゃしない、寒すぎんだよこの国」

「この国に入った時から?それはさぞかし…」

カルステンの言葉に反応し立ち上がろうと膝に手をついて、一気に持ち上げるように体を起こし……

「さぞかし、肉体も疲弊していよう」

「ッ!?」

ズルリと手が膝から外れ再び倒れ込む、あ あれ…滑った?いや違う 本当に体から力が抜けたんだ、さっきと同じだ…

メルクさんの手を掴んだ時も、同じように体に力が入らなかった…全く、それと同じことがまた…

「まさか、…そうか…」

カルステンの言う通り 肉体が疲弊している…と言うのと別に、もう一つ 思い当たる節がある、この脱力…恐らくエネルギー切れだ

俺の肉体は 師範の改造により人智を超えたパワーを持つよう鍛え上げられた、だが当然 パワーってのは無から湧いてこねぇ、どっかで何かを燃やしてエネルギーにする必要がある

師範は有り余る魔力を燃やしてパワーに変えてる、けど俺はその技術をまだ持たないが故に それを食事で代行しているんだ

大量に食べ その時生まれたエネルギーの余剰分を貯蓄し戦闘時に引き出す事で力としている、普段は食べ貯めた分があるから 苦にもならない、しかしこのオライオンは この状況では…そうも行かないんだ

この国に来てから俺はずっと震えていた、人間が震えるのはシバリングと呼ばれる生理現象、筋肉を振動させ体温を高める人間に備った機能の一つ…当然それを続けていれば普通は疲れる、…そう 俺は常にこの国に来てからずっと 貯めたエネルギーを消費し続けていたんだ 無意識に

おまけに最近ロクに食事も取れなかったから、エネルギーの補給もままならなかった…、そして遂に そのエネルギーが底を尽きかけているんだ

底を尽きたらどうなるんだろう、そういう事態を全く想定していないから分からないが…恐らく、俺は戦う為の力を失うだろう 下手したら心臓を動かす力もなくなるかもしれねぇな

「…………」

参ったな、よりにもよってここでか…ここで限界が来るのかよ、最悪だ…

「もう戦えんか?、…ならば ここで終わらせるが?」

最悪の状況に最悪の敵、エネルギー切れ寸前の体で…俺はこいつに勝てるのか?、未だに有効打を一つも与えられてねぇってのに…!

「まさか、…まだ終わらねぇよ」

再び根性を入れ直し、立ち上がる ややフラつくが…まだ立てる

まだ立てるなら、戦わないと…!、仲間が待ってんだ この森の向こうでメルクさんとナリアが…、エリスとアマルトとメグが 待ってんだ!、死ねるかよ!負けられるかよ!終われるかよ!

「…いい目だ、だが容赦はせんぞ」

「俺には、これしか出来ないんだ、やれる事をやる…でなきゃ俺は アイツらと一緒に歩けねぇ」

勝機は見えない、時間も少ない、だが…それだけだ、諦める理由にはならねぇよな、みんな

また…無事再会するために!、俺はこいつに!

「勝つ…!」

「良い!、来るがいい!!」

踏み込み 拳を握り…そして


…………………………………………………………………………

ラグナがカルステンとの拳闘を初めてより数分、雪崩によって崩れた森の更に向こう

未だ木々が生い茂る針葉樹林の只中で…白い息を吐いて木の陰に凭れるのは

「はぁ…はぁ…はぁ」

サトゥルナリアだ、ラグナによって包囲網の外へと逃げ出すことが出来た彼は今 一人で森の中で身を休めている

無事逃げられた…というには彼の体は傷だらけだ、ラグナさんとの話し合いで決めた目的地にも到達出来ていない

何故か?、それは ラグナさんと別れて空の旅をしている最中の事だった


ラグナの様子がおかしかった もしかしたら奴の身に何か起きているかもしれない!そう叫ぶメルクさんと共にラグナさんを心配するように飛んでいた僕は その事に気を取られていたんだろう

危機は脱した その安堵感から、サトゥルナリアは間違いなく気を抜いてしまった、周囲の注意を完全に怠ったのだ…

『っ!ナリア!ボードに掴まれ!!』

メルクさんの言葉に僕が反応するよりも前に…突如、ボードが真っ二つに別たれた、本当に 本当にいきなりの事だったんだ

その衝撃によって僕の体は外に投げ出され、あれよあれよという間に地面に叩き落とされてしまった、幸い木々の枝や雪がクッションになってくれて 致命的な怪我は防げたが…

無駄にしてしまった、ラグナさんが命懸けで作ってくれたチャンスを 僕が気を抜いたせいで、しっかり注意していれもしかしたら対応出来たかもしれないのに、なのに 無駄にしちゃったんだ 自分のせいで

なんてバカなんだ僕は、なんて愚かなんだ僕は…、ラグナさんとメルクさんに守られているのに それさえ無駄にする

もしかしたら、僕がいなければ二人はもっと早く森を抜けていただろう、山を登る時だって 体力のない僕はラグナさんに助けられてばかりだった

足手まといにしかなってない…、役者として仕事も真っ当できなかったし…本当に、僕は


「ッ…!」

突如、雪を踏む足音が聞こえ 咄嗟に口元を覆い息を殺す、そうだ 僕は今半ば遭難状態にある、一応目的地の方角は分かっているそちらに直行出来ない理由がある…それは

「あぁん?、やっぱり…匂いがするなぁ、神敵の匂いがぁ…」

「ッ…ッ…!」

木の裏から声がする、…邪教執行官だ 副官ジョーダンが…今 僕の直ぐそこを歩いているんだ

ラグナさんの雪崩から逃げ切ったばかりか、その雪崩に乗って僕達を追いかけてきたこいつが 空に向けて放った風の斬撃により僕は撃ち落とされたんだ…!

「この辺に落ちたと思うんだがなぁ…」

今 ジョーダンは落ちた僕を探している、彼の実力は知っている…とてもじゃないが僕が勝てる相手じゃない、戦えば間違いなく 殺される…

故に、隠れているんだ…メルクさんとも合流出来ず、ずっと この木陰で身を縮こまらせて

情けない、情けない情けない…、ラグナさんがせっかく助けてくれたのに 僕はずっとこれだ、敵から隠れて 身動きが出来ず隠れるばかり…

もしここにいたのかエリスさんなら敵の目の前に躍り出てジョーダンをぶちのめして目的に向かっただろう、いやそもそもラグナさんが身を呈して守ることもなかった

なのに、ここにいたのが 僕だったから…!、僕は…足手まといだ…!

「見つけたら皮を剥いでやる…、りんごみたいに頭から足先まで刃を通して一繋ぎに剥いて、それでマフラーを編んでやる…」

「ッ……」

恐ろしい事を口走りながらも僕を探す為歩き回るジョーダンの足音が、徐々に徐々に遠ざかる

…このままじゃ見つかる、見つかったら…僕は

それで…いいのか?、僕はこのままここで殺されても…本当にいいのか?

僕は、任されているんじゃないのか?、コーチに…全てを

だったら、このまま立ち止まっているわけにはいかない

隠れながらでも、みんなと合流するために…動かないと

動かないと!

決意を秘めて、動き出そうゆっくりと立ち上がる、足手まといでも 役立たずにはならないために、腰抜けにならない為に、僕は 閃光の魔女の弟子なんだから…!




「見つけた……」

「え?」

立ち上がった瞬間、目が合う

木の向こうから、こちらを覗き込む目

グラサンの奥に秘められた…血走った目


執行官ジョーダンの目が、僕を見て…舌なめずりをして……

「ぎゃ…ぎゃぁぁぁあぁあああああ!!!」

「見つけたぜぇ!神敵ぃ!皮を剥いで殺してやるっ!」

双剣を引き抜き襲いかかってくるジョーダンを前に脇目も振らずに走り出し逃げ出す、見つかっちゃった!見つかっちゃった!絶対に見つかっちゃいけない場面で 絶対に見つかってはいけない存在に!

殺される 殺される!、ぼ 僕の…

僕のバカッッ!!


…………………………………………………………

「くそっ!ラグナだけでなくナリアまで!、託されたというのに…なんという不始末!」

地面に墜落したボードを脇芽に メルクリウスは森の木を拳で殴りつける、こうでもして自らを痛めつけないと…私は私への怒りでどうにかなってしまいそうだったから

ラグナの手も ナリアの手も取れずして、何が世界を導くだ 世界の幸福だ、目の前の人間も救えずして 世界など救えよう筈もない!

だというのに…

「私だけが…ここに辿り着いてどうする!」

ラグナの策は 上手くいったと言える、事実 空を駆けるボードは森の中にある村…ラグナが指定した我らの目的地、即ち成り行きながら合流地点になってしまった森豊村ペセルフネに辿り着く事が出来たのだから

…その道中でナリアを落とし ラグナを助けられず、私だけがここに来てしまったわけだがな!

「クソ…、どうする 助けに戻るか?、待つべきか?、…だがもし離れ離れになっても皆それぞれで目指すという話だし…」

迷う 迷ってしまう、どうするべきだ…

そこで気がつく、私はこういう時 判断をラグナに任せてしまいがちになっていた事を

どこまでバカなのだ私は、ラグナに選択の負担を押し付けて…結果あそこで無理をさせて……

「ラグナの様子、どう考えてもおかしかった…」

ラグナの手を握った時、奴は私の手を握り返さなかった…いや 返せなかったようだった、まるでそれだけの力も残っていないような

…考えてみれば奴はここまで戦い通し、全ての負担を背負い、食事もロクに取っていなかった…、ラグナの力の根源は食事によって確保されている という話も聞いた事があるな

まさか、アイツ エネルギーが尽きかけているんじゃ…!

「迷うまでもないか、我々が個々で進むのは みんながエノシガリオスに辿り着ける…という前提の上に成り立っている」

このままラグナを置いて行ったら、アイツが死んでしまうような予感さえある

これ以上奴に負担をかけるわけにはいかない、ナリアももし道中で執行官に出会っていたら 殺されてしまうかもしれない

仲間は見捨てられない!、直ぐにでも引き返そう!…

そう、決意した瞬間 気がつく…

「…ん?、そう言えば この村」

引き返す直前 村の様子が目に入り、その違和感に気がつく

「…人の気配がしない?……」

村の方から人の気配がしないのだ、…ラグナ達を助けに行く前に 合流地点が安全か確認しておかねばと やや小走りでペセルフネ村へと走り、村の様子を確かめる

…すると

「……これは、どういう事だ…!」

目に映るのは奇怪極まる光景、その異様さに思わず言葉を失う

どういう事だ、どうしてだ…なんでこの村は、なんなんだ ここは!

「人が…一人もいない?」

まるで、この村の人々が瞬く間に消失してしまったかのように…、静けさに覆われた村の姿であった
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