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第三譚:憎悪爆散の魔人譚

彼の幻想

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 魔王とはなんだ。


 勇者とはなんだ。



 あいつらが普通と違うことは一目見てわかった。

 オレの左目が捉えたやつらの力も尋常ではない。

 オレの未熟な力では及ばないことは誰の目から見ても明らかだろう。


 だからどうした。

 それが何だ。

 敵わないから立ち止まるなど、オレの人生とともに積みあがった憎しみが許さない。


 やつらにも理由がある?

 そんなものは知らない。

 オレはオレの知るところしか知らず、狭量だろうと浅慮だろうとこの憎しみをぶつける相手さえいるのならばそれでいい。


 だから同情なども要らない。

 憎ければ憎いでいい。邪魔ならば殺せばいい。


 優しさも愛情もオレには不要なものだ。


 知らない、そんなものは知らない。



 だから、そんな温もりなど、知りたくはない。


 だから、こんな温もりを教えないでくれ。



 心の毒を洗い流すかのような清浄さなど息苦しいだけだ。

 胸の淀みが溶け出すかのような慰撫いぶなど今すぐに死にたくなってしまう。



 オレは無様でいい。

 オレは無能でいい。


 オレは無価値だっていいから、世界に忘れることのできないキズを遺したい。



 だから、だから、



 こんなオレにも価値があるかのような、そんな夢を見させないでくれ────


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