上 下
98 / 129
第三譚:憎悪爆散の魔人譚

彼の始まり

しおりを挟む


 呪いと、疑問と、歓喜の中でオレの命は生まれ落ちた。

 母親がどうなったかは知らない。

 父親がどうしているかは知らない。


 ただ、オレの命の在り方を面白可笑しく喜ぶ男がそこにいて、

 壁と両腕を鎖で繋ぐ、小さな個室こそがオレの認識する日常セカイだった。


 初めに覚えたのは痛み。

 毎日毎日、別々の種類の痛みを与えられ、その影響の違いを観察されていた。

 物的な痛み、投薬による痛み、精神的な痛み、オレがその痛みを与えられた結果どうなるのかをそいつは知りたかったらしい。


 歓喜の声をあげながらそいつは言う。

「キーキキキキ! いや何とも素晴らしい! お前ほどの特異的な存在を好きにできるなど、何と、何とワタシは神に愛されているのか。……いやまあ神など知らんが。まあ安心しろ、お前は大事な検体だ。直せないほどに壊しはしない、……多分な。それよりもっと、もっと新しい反応をワタシに見せてくれないか!」


 オレをじっくりと見つめながら狂気に満ちた言葉をそいつは吐いてくる。
 そいつにとっては殺意のこもったオレの視線も、ただの研究材料に過ぎなかった。


「おや、おやおやおや。お前はワタシが憎いのか? まあまあそう思うのも仕方がない。だがワタシの研究は我が王の許可を得て行なっていることなのだ。……つまり、ワタシの行動全ては王の為すそれと同一なのだ。───────だから、その程度の憎しみではまだ足りない。我が王を呪い殺すほどの憎悪をどうかワタシに向けてくれ!」


 コイツの気持ち悪い戯れ言は聞き流すことにした。
 だが、オレの必ず殺すリストに1名追加をする。


 この男は魔族と呼ばれる種類の存在だ。

 業腹だがある程度の基本的な知識・常識はコイツらから教わっている。

 研究素体にも知性がないと実験のバリエーションが乏しくなるからだそうだ。クソ喰らえ。


 どうやら魔族を統べているのは魔王というやつらしい。

 
 それでオレの生きる目標はひとまず決まった。

 オレは、いずれ自由を手に入れてこのイカれた科学者を殺す。

 オレなんてモノに関わった連中を殺す。


 殺す、殺す、殺す、全てコロス!!


 そして、コイツらの頂点にいるという魔王を、必ず見つけ出してこの手で殺してやる!!
 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

出て行けと言って、本当に私が出ていくなんて思ってもいなかった??

新野乃花(大舟)
恋愛
ガランとセシリアは婚約関係にあったものの、ガランはセシリアに対して最初から冷遇的な態度をとり続けていた。ある日の事、ガランは自身の機嫌を損ねたからか、セシリアに対していなくなっても困らないといった言葉を発する。…それをきっかけにしてセシリアはガランの前から失踪してしまうこととなるのだが、ガランはその事をあまり気にしてはいなかった。しかし後に貴族会はセシリアの味方をすると表明、じわじわとガランの立場は苦しいものとなっていくこととなり…。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

処理中です...