上 下
5 / 8

4話 眼鏡地味子

しおりを挟む
 さて、今は昼休みだ。
 いつもなら茜を含めた仲が良いメンバーと数人で飯を食うんだが……。

「三枝君髪切ったんだね!  イイと思うよぉ!」
「え、えっと……」
「メガネはどうしたの?   無くても大丈夫?」
「コ、コンタクトを……」
「まさかお前がこんなイケメンだったとはなぁ」
「い、いや、そんな……」
「ねぇねぇ……」

 茜の周りには人だかりが出来ていた。それはもう机の周りにうじゃうじゃと。割合的には男三割、女七割ってところか?
 昨日までは見向きもしてなかったくせにな。
 ちなみに俺の友達もその集団に交ざって行ったから、俺は一人でコーヒー飲みながらその風景を眺めていた。

 ちなみに教室のどこにいても聞こえてくる声は全て茜の話題。他のクラスや上級生にも伝わってるみたいで、廊下から覗く奴もいるくらいだ。まぁ、ほとんど女だが。
 アイドル扱いかよっ!  って感じ。

 それにしてもうるせぇなぁ。
 そう思ってふて寝でもしようと思ったその時、俺に声をかけてきた奴がいた。

「あの……」

 あぁ!?   なんだよっ!   って……え?
 ちょっと待て……。
 なんだこの子。すげー可愛いんだけど……。いや、美人か?  やっぱ可愛いか?   あーもうどっちでもいいや!

 黒く長い髪。それを二つに結って前に垂らしている。眼鏡の奥に見える大きくクリっとした目。制服の上からでもわかるスタイルの良さ。身長は俺より頭一つ分低いか?  150ちょいくらいかな。
 そして小さな桃色の唇。そこから漏れ出す控えめだけど耳に残る声……。ヤバい。こんな子居たのか!?   この高校に入学してから二ヶ月経つけど初めて見たぞ。

「あの……聞こえてます?」

 俺は目の前の彼女に見とれてしまい、コクコクとひたすらに頷く事しか出来ない。

「そう……ですか。あの、同じ委員会ですよね?   今日、私と当番なので放課後宜しくお願いしますね。場所は校舎脇の倉庫です」

 コクコク

 俺はまた頷く。彼女はそれを確認した後、「そう……よね。私なんかと話したくもないよね」って小さく呟くと、軽く会釈をして教室から出ていった。
 その時フワリと香る匂いにまたしても心を奪われる。あの子……誰なんだ?

 つーか違うんだっ!   話したくないんじゃない!  ただ見とれてただけなんだよ!   これは放課後ちゃんと説明して謝らないと……。でもなんて説明すればいいんだ?   『見とれてました!』じゃただのナンパ野郎だしな……。おぉ?   これはまじでどうしよう……。

 俺がそんな事を考えていると、また訳分からん声が聞こえる。

「ねえ、今のおさげ眼鏡地味子誰?」
「さあ~?  ウチらのクラスじゃないよね?」
「前髪長すぎウケる!   陰キャ女子じゃん」
「ね~!」
「確か隣のクラスじゃなかった?   うろ覚えだけどさぁ~」

 ……は?   ちょっと待て。茜だけじゃなくて、あの子もそういう扱いなのか?   お前らの目はどうなってんだ?   

 いや、それは後で考えよう。俺はしっかり聞いたぞ。あの子は隣のクラスか。まだ名前も知らないけど、放課後の作業通じて仲良くなれるといいんだけどなぁ……。


 あれ?   俺の委員会ってなんだっけ??


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

公爵に媚薬をもられた執事な私

天災
恋愛
 公爵様に媚薬をもられてしまった私。

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

離婚しようですって?

宮野 楓
恋愛
十年、結婚生活を続けてきた二人。ある時から旦那が浮気をしている事を知っていた。だが知らぬふりで夫婦として過ごしてきたが、ある日、旦那は告げた。「離婚しよう」

悪役令嬢の悪行とやらって正直なにも悪くなくない?ってお話

下菊みこと
恋愛
多分微ざまぁ? 小説家になろう様でも投稿しています。

姉上が学園でのダンスパーティーの席で将来この国を担う方々をボロクソに言っています

下菊みこと
恋愛
微ざまぁ有り。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...