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クラッチは我慢が苦手です
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それからしばらく進むとやはり渋滞に巻き込まれる。
トロトロ進んでいたのだが、やっと先頭付近まで来れたのだが何やら揉め事で道を防いでいたようだ。
何処にでも周りの迷惑を気にせず、自分勝手な連中はいるものだと不快に思いながら見ていると、先程クラッチロウに五発パンチをした野郎が道から外れたところでノビていた。
近くにその者の馬車も逆さまになっていたので、察するにこの先頭で揉めている者にも同じように煽りを入れて玉砕されたのだろう。
顔は原型を留めていない程腫れあがり血だらけになっていた。
自業自得とはまさにこのことだろう。クラッチロウは自分の拳でこうしたかったようだが。
「今度はどうします?」
「やはりここもクラッチが行って殴られるのがお決まりやろ!」
「俺が殴られるのに期待をするな!」
ニヒヒと笑うルーチェ。
「まぁとにかく邪魔だから馬車をどかしてきますね」
言うが早いがクラッチロウは馬車から飛び出て二台が止まっている所に向かった。
「さて」
「魔王はん、クラッチはさっき殴られたうっぷんをあいつらに八つ当たりするで、見てて」
「まだキレたら負けゲームは続行中ですから、クラッチロウも話し合いで解決することでしょう」
スペンサーの言葉とは裏腹に、まずは邪魔な馬車二台を道の外に蹴落とした。
最初に煽って来た野郎のモンスターより更に大きなモンスターも形無し。蹴落とされた馬車と共に少し下った所まで落ちて行く。
「おい! 何してくれてんだ!」
「てめぇ! 俺が誰だかわかってんのか!」
揉めてた二人が揃ってクラッチロウに突っかかる。
「邪魔だからどけてやったんだ。感謝してくれても構わないんだぜ」
「なんだと!」
「貴様らのせいで渋滞して、俺はそこの煽り野郎に五発も殴られたんだぞ! お前らに十倍にしてお返ししなきゃ俺は気が済まないんだ」
「小僧!」
「なんだ大僧! でかいだけか?」
完全に喧嘩を売っているクラッチロウにスペンサーは頭を抱えている。
「魔王はん、私の言うたとおりやったやろ」
ルーチェはスペンサーの肩を叩いてまた、ニヒヒと笑っていた。
「まぁ邪魔であることは間違いないのですが、揉めてた理由がある筈ですよね」
「じゃあ俺が行って聞いてくるよ。ついでにクラッチがキレるのを止めておくよ。不完全燃焼って駄々をこねるかも知れないけど」
「ミゼルも付いてく!」
馬車から降りた俺に飛び乗ってきたミゼルを後ろに抱えてその場へ向かった。
そこへ着く頃には肩車に変わっていた。
「おい! でくの坊の二人! 一体なんの目的で揉めてたんだ!」
肩車のミゼルが聞いてくれたのだが、怒りの火に油を注いだだろう。
「なんだお前等! 俺を誰だと思っているんだ!」
「さっきからそればっかりじゃないか! さっさと名乗れ!」
「お前等、俺はドンジーロ・ホセイのクルー……」
「うるせぇ!」
名乗れと言ったクラッチロウは我慢できずに一人の男の腹に拳をおみまいした。
うずくまった男は泡を口から吹いて目が回っているようだった。
「ったく、だらしないぜ。これだからドンジーロ・ホセイの時代は終わったって言われるんだよ。これからは新星、チューン・ネップ様の時代ってことよ! 俺はそのクルーの一人……」
今度は蹴りがもう一人の男の腹に。手加減してやったのか、十メートル程ぶっ飛んで行ってしまってからビクともしない。
「お前がキレないか忠告しに来たのに、二人共泡吹いて気絶さすなよ」
「キレてなんかないぜ。ちょっとウォーミングアップしただけじゃないか」
「後でスペンサーに怒られるぞ」
馬車から鋭い目で見ているスペンサーに少し目配りをしてから俺の肩を叩く。
「殺人予告をしてきた殺人者だったことにしてくれ」
「もっとマシな嘘を思い付け。素直に謝って、人の話は最後まで聞けるようにしろよ」
結局、この男達が何が理由で言い争っているのかわからずじまいに終わった。
トロトロ進んでいたのだが、やっと先頭付近まで来れたのだが何やら揉め事で道を防いでいたようだ。
何処にでも周りの迷惑を気にせず、自分勝手な連中はいるものだと不快に思いながら見ていると、先程クラッチロウに五発パンチをした野郎が道から外れたところでノビていた。
近くにその者の馬車も逆さまになっていたので、察するにこの先頭で揉めている者にも同じように煽りを入れて玉砕されたのだろう。
顔は原型を留めていない程腫れあがり血だらけになっていた。
自業自得とはまさにこのことだろう。クラッチロウは自分の拳でこうしたかったようだが。
「今度はどうします?」
「やはりここもクラッチが行って殴られるのがお決まりやろ!」
「俺が殴られるのに期待をするな!」
ニヒヒと笑うルーチェ。
「まぁとにかく邪魔だから馬車をどかしてきますね」
言うが早いがクラッチロウは馬車から飛び出て二台が止まっている所に向かった。
「さて」
「魔王はん、クラッチはさっき殴られたうっぷんをあいつらに八つ当たりするで、見てて」
「まだキレたら負けゲームは続行中ですから、クラッチロウも話し合いで解決することでしょう」
スペンサーの言葉とは裏腹に、まずは邪魔な馬車二台を道の外に蹴落とした。
最初に煽って来た野郎のモンスターより更に大きなモンスターも形無し。蹴落とされた馬車と共に少し下った所まで落ちて行く。
「おい! 何してくれてんだ!」
「てめぇ! 俺が誰だかわかってんのか!」
揉めてた二人が揃ってクラッチロウに突っかかる。
「邪魔だからどけてやったんだ。感謝してくれても構わないんだぜ」
「なんだと!」
「貴様らのせいで渋滞して、俺はそこの煽り野郎に五発も殴られたんだぞ! お前らに十倍にしてお返ししなきゃ俺は気が済まないんだ」
「小僧!」
「なんだ大僧! でかいだけか?」
完全に喧嘩を売っているクラッチロウにスペンサーは頭を抱えている。
「魔王はん、私の言うたとおりやったやろ」
ルーチェはスペンサーの肩を叩いてまた、ニヒヒと笑っていた。
「まぁ邪魔であることは間違いないのですが、揉めてた理由がある筈ですよね」
「じゃあ俺が行って聞いてくるよ。ついでにクラッチがキレるのを止めておくよ。不完全燃焼って駄々をこねるかも知れないけど」
「ミゼルも付いてく!」
馬車から降りた俺に飛び乗ってきたミゼルを後ろに抱えてその場へ向かった。
そこへ着く頃には肩車に変わっていた。
「おい! でくの坊の二人! 一体なんの目的で揉めてたんだ!」
肩車のミゼルが聞いてくれたのだが、怒りの火に油を注いだだろう。
「なんだお前等! 俺を誰だと思っているんだ!」
「さっきからそればっかりじゃないか! さっさと名乗れ!」
「お前等、俺はドンジーロ・ホセイのクルー……」
「うるせぇ!」
名乗れと言ったクラッチロウは我慢できずに一人の男の腹に拳をおみまいした。
うずくまった男は泡を口から吹いて目が回っているようだった。
「ったく、だらしないぜ。これだからドンジーロ・ホセイの時代は終わったって言われるんだよ。これからは新星、チューン・ネップ様の時代ってことよ! 俺はそのクルーの一人……」
今度は蹴りがもう一人の男の腹に。手加減してやったのか、十メートル程ぶっ飛んで行ってしまってからビクともしない。
「お前がキレないか忠告しに来たのに、二人共泡吹いて気絶さすなよ」
「キレてなんかないぜ。ちょっとウォーミングアップしただけじゃないか」
「後でスペンサーに怒られるぞ」
馬車から鋭い目で見ているスペンサーに少し目配りをしてから俺の肩を叩く。
「殺人予告をしてきた殺人者だったことにしてくれ」
「もっとマシな嘘を思い付け。素直に謝って、人の話は最後まで聞けるようにしろよ」
結局、この男達が何が理由で言い争っているのかわからずじまいに終わった。
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