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敵ですけどいいかげん名前覚えてもらえますか?

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 慌てたダンパーは操作を誤り、暴れだしたモンスターにもみくちゃにされながら馬車は回転事故を起こした。

 ミゼルは二人が言葉が出ない程驚いている瞬間に救出をしていた。ご希望通りのお姫様抱っこだが、等の本人は気を失っているようだった。

「怖い思いさせてゴメンな」

 聞こえないとわかっていながらもミゼルに謝った。

「一体どうなっているんだ?  なんでお前がここにいるんだ!」

 むくむくと起き上がるダンパーは納得がいかない様子だった。

「なんでって、追いかけてきたからに決まっているだろ?」

「なんで追い付いているんだってことだ!」

「だって俺、走るの早いもん。長距離は苦手だけど。もっと言うとミゼルに触覚が伸びて来た時から防げたんだけどな」

「嘘を言うな!」

 大きな手を振りかざして指を指してくる。

「本当だって。触覚が鋭利な先端でミゼルを傷付けようものならチョン切ってたけど普通に身体に巻き付いてたから、ちょっとアダルトな想像が俺に待ったをかけたんだよ!ムフフ」

「気色悪い笑い方しやがって!」

 気色悪い生き物のダンパーに言われると少なからずハートが傷付いてしまう。

「お前、スペンサーも倒したのか!?」

 どうやら龍の姿以外のスペンサーを知らないようだ。しかもうさぶーの着ぐるみを着てたんだから尚更スペンサーだと思わないだろう。

「だったらどうした?」

「フハ、フハ、フハハハハ!  こいつはいいや!  あのスペンサーを倒すとはお前、今自分のこと最強とか思っているんだろ?  確かに最強かもしれん。だが俺はお前を倒す程の最強になってやるから今日の所は見逃してくれ!」

 もう無茶苦茶な要求である。

 まあ普通だったらミゼルが連れ去られて後日、助けに行くってのが王道ストーリーかもしれんが、俺の能力を発揮したらミゼルをすぐに取り戻せるだろ!  ってお叱りがありそうだし、逆でもそう思ってしまう。

 ここで逃して後日強くなって苦戦しましたって糞展開にならない自信があると俺は思い、ダンパーを逃がすことにした。

 それに、魔導士アーブが近くにいる以上、魔法での攻撃にまだ慣れが必要な俺はここで長居することに賛成ではなかった。

「じゃあ次会ったら始末するからな。できれば二度と顔見せるなよ」

 ミゼルをお姫様抱っこしたままスペンサー達のいる氷山へ戻った。

 
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