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追憶の先にあるものはなんですか?
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ヨシミツを抜いたクラッチロウは魔王の傷口を押さえる。
止まらない出血と共に弱っていく魔王の身体は見る見るうちに縮んでいく。人間程の大きさになったと思うと水蒸気のような物に包まれた。その水蒸気が晴れて現れたのは一人の男性であった。
裸で魔王が倒れていた場所に倒れている男性、脇腹からは出血しているのがわかる。これがおそらく魔王の姿だということは予想がつく。
「スペンサー様!」
「クラッチロウ、無様よのぉ」
押さえるクラッチロウの手は既に真っ赤に血で染まっている。
目に涙を浮かべたクラッチロウは魔王の最後を覚っているようでもあった。
二人の前に立った俺は魔王の傷口から流れる血を見て倒れそうに思う。
「男って血に弱いよね」
「トドメを刺すつもりか! 俺の命に代えてもスペンサー様をお守りする!」
身構えるクラッチロウだったが、剣を持つその手は震えているように思えた。
絶対服従で、最強と思っていた自分より強い魔王を瀕死の状態に追いやった相手と再び剣を交えるなどと、誰が考えても無謀としか言いようがない。
そんな虫の息の奴らをコテンパンにする。
造作もない事だなと思いながら、俺は黒いブツを取り出して魔王に向ける。
「なんだそれは!」
「ブラックソード。痛くも痒くもないが俺達の力量の差、無駄な抵抗は無意味だとわかっているな?」
抵抗の罵声を浴びせてくるクラッチロウには目を向けず、魔王のみに話しかける。
交わすのも遮るのも無駄であり、既にブラックソードをくらってしまう未来の自分が読めているかのような目をしていた。
閃光一瞬。
全力で振りかざしたブラックソード。風圧で遅れて二人の髪がなびいた。
魔王の全身が漆黒の冷気が天に駆け上がり、たちまち空を黒く染めた。
尋常じゃない悪の心が魔王を支配していた証である。
漆黒の冷気はブラックホールの様に渦を巻きだした。
「逃がすか!」
氷山に向けて高々とジャンプをして、ワンステップしてから渦に向けてブラックソードを振り下ろす。
渦の中で稲妻が走ったかと思うと、俺の攻撃が防がれていた。
「邪魔をしたこと、いずれ後悔するだろう」
「なっ!」
攻撃を防がれたこと、更には喋れるという二つの予想もしなかったことに俺は正直焦りを隠せなかった。
弾き返された俺は氷山を踏み台にして再び漆黒の渦に飛び掛かった。
今度の攻撃は防がれなかったが無効のように空を切り、そのまま渦の中に吸い込まれた。
中は一瞬真っ暗だったが、所々に明かりが見える。
渦の中で宙に浮いた俺の目に映ったのは、宇宙だった。宇宙の中に俺は浮いていることに気付く。
呼吸が出来ていることで、これが本当の宇宙に飛ばされたのではないと直感する。
浮遊している宇宙で身体が流されていると感じると、光である星々も一緒に流れ出した。
やがて周りの全てと一緒に俺は、眩しい位の光に包まれブラックホールに吸い込まれていった。
目を開けると元の場所に立っていた。
天を見上げても漆黒の冷気はどこにもいないようだった。
「一体……」
止まらない出血と共に弱っていく魔王の身体は見る見るうちに縮んでいく。人間程の大きさになったと思うと水蒸気のような物に包まれた。その水蒸気が晴れて現れたのは一人の男性であった。
裸で魔王が倒れていた場所に倒れている男性、脇腹からは出血しているのがわかる。これがおそらく魔王の姿だということは予想がつく。
「スペンサー様!」
「クラッチロウ、無様よのぉ」
押さえるクラッチロウの手は既に真っ赤に血で染まっている。
目に涙を浮かべたクラッチロウは魔王の最後を覚っているようでもあった。
二人の前に立った俺は魔王の傷口から流れる血を見て倒れそうに思う。
「男って血に弱いよね」
「トドメを刺すつもりか! 俺の命に代えてもスペンサー様をお守りする!」
身構えるクラッチロウだったが、剣を持つその手は震えているように思えた。
絶対服従で、最強と思っていた自分より強い魔王を瀕死の状態に追いやった相手と再び剣を交えるなどと、誰が考えても無謀としか言いようがない。
そんな虫の息の奴らをコテンパンにする。
造作もない事だなと思いながら、俺は黒いブツを取り出して魔王に向ける。
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「ブラックソード。痛くも痒くもないが俺達の力量の差、無駄な抵抗は無意味だとわかっているな?」
抵抗の罵声を浴びせてくるクラッチロウには目を向けず、魔王のみに話しかける。
交わすのも遮るのも無駄であり、既にブラックソードをくらってしまう未来の自分が読めているかのような目をしていた。
閃光一瞬。
全力で振りかざしたブラックソード。風圧で遅れて二人の髪がなびいた。
魔王の全身が漆黒の冷気が天に駆け上がり、たちまち空を黒く染めた。
尋常じゃない悪の心が魔王を支配していた証である。
漆黒の冷気はブラックホールの様に渦を巻きだした。
「逃がすか!」
氷山に向けて高々とジャンプをして、ワンステップしてから渦に向けてブラックソードを振り下ろす。
渦の中で稲妻が走ったかと思うと、俺の攻撃が防がれていた。
「邪魔をしたこと、いずれ後悔するだろう」
「なっ!」
攻撃を防がれたこと、更には喋れるという二つの予想もしなかったことに俺は正直焦りを隠せなかった。
弾き返された俺は氷山を踏み台にして再び漆黒の渦に飛び掛かった。
今度の攻撃は防がれなかったが無効のように空を切り、そのまま渦の中に吸い込まれた。
中は一瞬真っ暗だったが、所々に明かりが見える。
渦の中で宙に浮いた俺の目に映ったのは、宇宙だった。宇宙の中に俺は浮いていることに気付く。
呼吸が出来ていることで、これが本当の宇宙に飛ばされたのではないと直感する。
浮遊している宇宙で身体が流されていると感じると、光である星々も一緒に流れ出した。
やがて周りの全てと一緒に俺は、眩しい位の光に包まれブラックホールに吸い込まれていった。
目を開けると元の場所に立っていた。
天を見上げても漆黒の冷気はどこにもいないようだった。
「一体……」
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