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魔王、驚愕な実力の前に

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 意識を取り戻しクラッチロウはルーチェの魔法によって拘束を施されていた。効力があるかどうかはクラッチロウ次第なところがあったが、気休めにはなっているだろうか。

「なんでトドメをささない!?」

「聞かれてるぞカイト」

「いや、それ僕に聞かれても困るし、どっちかと言うと僕のセリフだし」

「あーーー!」

 やりきれないといった感じだろうか。クラッチロウはぶつけようのないもどかしさを叫んで解消しているようだった。

「さて、どうしたものか」

 頭上に凍らせれている魔王に向かって呟いた。

「見事だな。クラッチロウに手も足も出させないとはな」

「アンタ、今の戦い見てて俺に勝てると思うか?」

「さあな。やってみないとわからないが負ける気はしないと言っておこうか」

 それが謙遜なのか自信の表れなのか掴み所がなかった。

「無駄な戦いは正直面倒なんだわ。アンタも復活諦めて俺に現世の戻り方教えてくれたら簡単で助かるんだけどな」

「本音をストレートに言えるところは誉めてやろう。だが私にも引けないところもあるからな。どうだ?  一つ賭けをしないか?」

「賭けを?」

「そうだ。私をここから解放すれば無条件で貴様の望む願いを叶えてやろう。その後はお互い好きなように生きて行けばよいではないか。貴様は現世に帰り、私はこの星の再生をする」

「つまり、お互い自分の願いを叶えた後の事は干渉しないってことか」

「そんなアホな条件飲めるか!」

 俺達の会話を聞いて、威勢良く叫んだのはルーチェだった。確かに反論したくなる条件だろう。ただそれは俺以外の者、つまりこの異世界の住人にとっての反論である。現世に戻る者としては関係のない事と言ってしまえばそれまでである。

「幸いにも水の樹の枝もここにあるし」

「ウタル!」

 セリカも不安そうな顔を浮かべていた。

「ミゼルは今の意見、どう思う?」

「お兄ちゃんの好きなようにすればいいと思うよ」

「そうか……」

 ミゼルは思いっきり作り笑いをして必死で感情を押し殺しているようだった。この状況で自分の感情のままに喋るのがどんなに子供っぽい事なのかをわかっているようだった。恐らくまだまだキャゼルと一緒に遊びたいって言いたかったのだろうとは予測できる。元々カイトの代わりに俺が遊んでいたようなものだったが、だんだんと兄のように慕ってくれたのが正直嬉しく楽しかった。

 俺が現世に帰ってもその役はカイトに返すだけなのだが。魔王軍との戦いになってそれどころじゃなくなるっていうのは目に見えている。だって魔王本人がそう宣言しているのだから。

「それって、寝つきが悪くなることだな。いや寝起きが悪くなるだっけ? 寝相か……?」

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