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回想、カイトとマーベリック・クラッチロウの死闘

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 大人しく渡すことにしたそれは、頑丈に縛られたケースに納められている。

「今度からは軍隊総出で運ぶべきだな。ワッハハハハ!」

 ケースを奪うと男は高笑いをした。

 その笑いにはまるで軍隊総出できても勝てるかのような不気味さがあった。

「な、何故僕達がそれを運んでいることをお前は知っているんだ!?」

 カイトは立ち上がり拾った剣を構えた。

 だが、男はカイトに背を向けたまま再び笑った。

「じゃあ逆に聞くが、何故お前らがコレを運んでいることがバレないと思ったんだ?  ぬるいお前らにもっと分かりやすく言うなら、何故この時間にこの場所で襲撃されたと思うか?」

「……まさか!」

「だからお前らはぬるいって言うんだよ!  ワッハハハハ」

「畜生ぉぉぉぉ!」

 怒りに任せたカイトは猛ダッシュで駆け寄って剣を男に振りかざした。

 半身だけカイトの方を向いた男はサラッと剣をかわして鞘に納められていた剣を握った。

 カイトの攻撃は続いたが全てかわされ、徐々に疲れが見えた。

 反撃に移った男の剣は、初めの頃より見えそうで見えないスピードと、防げそうで防げないパワーがあった。

 まるでスピードとパワーの平均値を取ったような攻撃により、カイトの鎧は剥がされ無惨にも上半身を丸裸なされた。

「本当に男だったんだな!  ワッハハハハ!  安心しろ、その顔には傷を付けずにしてやったぞ」

 侮辱的、屈辱的な言葉を並べられてカイトは自然と涙を流した。

 弄ばれたカイトは叫ぶ。

「どうせ殺るなら一思いに殺せよ!」

 男は暫く黙っていたがカイトの方へは向かずに言った。

「己の命の終わりを決めれるのは侍だけだ。貴様にはその資格はない」

 カイトの止まらない涙が地面に落ちる。

「ちなみに聞くがバンパーを倒したのは貴様か?」

 無言で首を横に降ったカイトを見て男は不敵な笑みを浮かべた。

「泣いた顔も美しいな」

 カイトの顎に手をやり、無理やり立たせると足元から凍らせていった。

 下半身まで凍ったところで背に氷の十字架ができ、カイトは張り付けられてしまった。

「ケースを手に入れれば後は用がない。魔王様の復活まで心震えて命乞いをして待ってればよい。バンパーを倒した者来るならコイツを返してやってもよいと伝えろ。凍死するまでに来る度胸が決まったらの話だがな!」

 氷の十字架に張り付けられたカイトを背負い、兵士に向かって男は意気揚々に言い放った。

 白い息を吐きながらカイトは聞いた。

「お前の……名は……」

「クラッチロウ。マーベリック・クラッチロウ!  魔王様のマーベリックの名を授かる最強の男だ!  残り短い人生にこの名を刻んでおけ!」

 ざわつく兵士達の前からカイトを連れてその姿を消した。

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