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先遣隊でーす
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───数時間前
「まったく、鉄道で行けば軽く日帰りの距離なのになんで使わないんでしょうかねぇ!?」
「知らねぇよ! 俺に八つ当たりするなよ。文句あるならあの、女みたいな顔したカイト様に聞いてみるんだな」
男二人はやりきれない様子で互いに罵りあっていた。
先日、カイト率いる先見隊が水の工場に樹の枝を取りに行った帰りである。
男の言うように、鉄道を使えば日帰りが簡単にできる距離ではあったが、万が一に備え徒歩と騎馬を使うことにした。決定権はカイトにあり、不満の矛先をカイトに向けるのは利にかなっているともいえた。
それでも日付が変わる程の時間を要する程の距離でもなかった。だが、季節外れの吹雪により立ち往生せざるおえない状況になり、テントを張って夜が明けるのを待つことにした。当然、全ての判断と決定権は隊長であるカイトに委ねられている。
こうした選ばれた隊の中であっても、全ての者がエリートでもなく、任務に忠実とも限らないのが世の定めであろう。
隊の後方での見張り役は、眠い目を擦って睡魔との戦いでもあるのだが、今回は季節外れの吹雪ということで薄着による寒さとの戦いが先であった。
形として見張りをしているが、戦時中でもあるまいし常時気を張っていられないというのが本音だった。
それでも望遠鏡を覗くのは、他にすることもなく吹雪が早く晴れてくれという願いもあった。
「どうだ? 少しは止みそうか?」
「逆に強くなっていってるんじゃないのか? しかしなんだってこんな時期に吹雪なんだよ。まだ九月だっていうのに」
「俺に八つ当たりするなって言うの。ぐっすり寝てるカイト様を起こして聞いてこい」
「あれ?」
「なんだ? どうした? 絶世の美女でも倒れていたか?」
そんなことあるはずもないと思いながら体を起こし、言うたは良いが実際に倒れていたらたまったもんじゃない。現実逃避に非現実的なことを言って気分を紛らわしたかったのだが、いかに緊張感がないことの表れでもあった。
「吹雪が止んだ。ピタッと止んだぞ」
「なに? そりゃ良いことじゃないか。通り雨の吹雪版みたいなものだったのかもな」
やれやれといった感じで見張りの男は再び上体を寝かせて両手を頭の後ろに組んだ。
「誰かがいる! こっちに向かって来てるような気がする」
「こんな夜更けにバカなこと言うなよ」
月に照らされてもはっきりとはわからないが、確かに動く何かに見えた。望遠鏡越しに見える米粒のような何かを確認するには、もう少し距離を縮めてほしいという甘えがあった。
後に大戦になる時も、些細な戦もきっかけは相手を侮る慢心が原因によるものが殆どである。人影らしきものを確認した時に、すかさず隊長に報告をしておけば回避できていたかもしれない。終わった時に大抵の者はその時の慢心を悔やむものだが、対戦する相手が自分らの想像を超越していたものであれば、悔やんでも回避できていなかったと想像するのは容易である。
「代われ!」
上体を起こし望遠鏡を覗きこんだ男はピントを合わせるのに些か時間を要した。
「どこに合わせているんだよ! 全く見えねーぞ!」
「そんなはずないだろ。よく見てみろよ」
レンズ越しに何かが揺れているのはわかるが、それが何なのかを確かめることができなかった。
「まったく、鉄道で行けば軽く日帰りの距離なのになんで使わないんでしょうかねぇ!?」
「知らねぇよ! 俺に八つ当たりするなよ。文句あるならあの、女みたいな顔したカイト様に聞いてみるんだな」
男二人はやりきれない様子で互いに罵りあっていた。
先日、カイト率いる先見隊が水の工場に樹の枝を取りに行った帰りである。
男の言うように、鉄道を使えば日帰りが簡単にできる距離ではあったが、万が一に備え徒歩と騎馬を使うことにした。決定権はカイトにあり、不満の矛先をカイトに向けるのは利にかなっているともいえた。
それでも日付が変わる程の時間を要する程の距離でもなかった。だが、季節外れの吹雪により立ち往生せざるおえない状況になり、テントを張って夜が明けるのを待つことにした。当然、全ての判断と決定権は隊長であるカイトに委ねられている。
こうした選ばれた隊の中であっても、全ての者がエリートでもなく、任務に忠実とも限らないのが世の定めであろう。
隊の後方での見張り役は、眠い目を擦って睡魔との戦いでもあるのだが、今回は季節外れの吹雪ということで薄着による寒さとの戦いが先であった。
形として見張りをしているが、戦時中でもあるまいし常時気を張っていられないというのが本音だった。
それでも望遠鏡を覗くのは、他にすることもなく吹雪が早く晴れてくれという願いもあった。
「どうだ? 少しは止みそうか?」
「逆に強くなっていってるんじゃないのか? しかしなんだってこんな時期に吹雪なんだよ。まだ九月だっていうのに」
「俺に八つ当たりするなって言うの。ぐっすり寝てるカイト様を起こして聞いてこい」
「あれ?」
「なんだ? どうした? 絶世の美女でも倒れていたか?」
そんなことあるはずもないと思いながら体を起こし、言うたは良いが実際に倒れていたらたまったもんじゃない。現実逃避に非現実的なことを言って気分を紛らわしたかったのだが、いかに緊張感がないことの表れでもあった。
「吹雪が止んだ。ピタッと止んだぞ」
「なに? そりゃ良いことじゃないか。通り雨の吹雪版みたいなものだったのかもな」
やれやれといった感じで見張りの男は再び上体を寝かせて両手を頭の後ろに組んだ。
「誰かがいる! こっちに向かって来てるような気がする」
「こんな夜更けにバカなこと言うなよ」
月に照らされてもはっきりとはわからないが、確かに動く何かに見えた。望遠鏡越しに見える米粒のような何かを確認するには、もう少し距離を縮めてほしいという甘えがあった。
後に大戦になる時も、些細な戦もきっかけは相手を侮る慢心が原因によるものが殆どである。人影らしきものを確認した時に、すかさず隊長に報告をしておけば回避できていたかもしれない。終わった時に大抵の者はその時の慢心を悔やむものだが、対戦する相手が自分らの想像を超越していたものであれば、悔やんでも回避できていなかったと想像するのは容易である。
「代われ!」
上体を起こし望遠鏡を覗きこんだ男はピントを合わせるのに些か時間を要した。
「どこに合わせているんだよ! 全く見えねーぞ!」
「そんなはずないだろ。よく見てみろよ」
レンズ越しに何かが揺れているのはわかるが、それが何なのかを確かめることができなかった。
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