31 / 138
魔法使いルーチェ
31
しおりを挟む
ハッキリとした食欲と性欲が逆という区別はわからないが、俺は頭の中にある言葉が浮かんだ。
「ムフ」
そう、ムフだ。有名な漫画家が生んだこの単語に全て集約されていると言っても過言ではない。
ムフの後ろにハートマークが付けばより完璧だ。引越し屋ではないハートのマークだ。
食事が男女一緒にできないことに不憫は感じないが、銭湯が混浴当たり前でしかも風呂場の時は羞恥心が無さそうだという。
異世界パラダイスな満足感に浸っていたのだが、もう少し先の何かに閃きそうだったのだが。
「すんません、私を雇ってくれる話はどんなんですかね?」
ルーチェの言葉で閃きそうな何かは消えて無くなった。
「それより、今日の敵に俺のブラックソードが全く効かなかったんだ。なにか武器はないのか?」
不良品を見るような目で見てくるルーチェに用途を説明してやった。
「まるで魔法やなぁ」
本物の魔法使いに言われるのだから大したものだが、効果が無いのでは話にならない。
「武器なら遊佐丘義光があるだろう。美術館に飾ってあるから明日にでも取りに行けば良い」
「あれって、製作費十億掛かったこの国の聖剣なんじゃないのか?」
ロイエルーンの太っ腹な発言に驚きながら聞き返した。
「貴様の先祖みたいな者が残した物は全て返すのが恩義ってものだろう」
若い男は私利私欲で扱うくせに、こういう所は義理堅いのだと感心してしまう。
「じゃあ残りの九十億も貰えるのか?」
「すまんな。先々代の王から財政厳しくてな。というより散財し過ぎなのだ。直ぐに用意できるのは一千万しかない。これでたちまちは許せ」
一千万。現世での研修が無事に終えたら獲られる年収の額だった。なんだか懐かしく思いながら、この金額が今はそれで充分だと思っている。
「ルーチェとか言ったな。貴様を雇う件、出来高払いで雇ってやろう。ただし、普段の衣食住はウタルに支払ってもらえ。こいつ、何もしないで大金を獲ているからのう」
「はい?」
「ウタル、おおきに! これからよろしく頼んまっせ!」特に食事の件でお世話になりますぅ」
勝手に決められて俺は魔法使いを一人、雇うことになったのであった。
「あの、ちなみにですが、もし私が隣国のスパイでここで魔法使って爆撃でもしてたらどうなってますか?」
「その時はウタルが命懸けで守ってくれるだろう? まぁアテにはしていないが、その前にシーヴァイルに殺されていただろう。いくら平和ボケしてたとしても、無警戒でいるわけにはいかんのでな」
ソファに座っているロイエルーンは足を組み替えながら笑っていた。
その後、俺達は六時から開かれる緊急会議に同席した。
「ムフ」
そう、ムフだ。有名な漫画家が生んだこの単語に全て集約されていると言っても過言ではない。
ムフの後ろにハートマークが付けばより完璧だ。引越し屋ではないハートのマークだ。
食事が男女一緒にできないことに不憫は感じないが、銭湯が混浴当たり前でしかも風呂場の時は羞恥心が無さそうだという。
異世界パラダイスな満足感に浸っていたのだが、もう少し先の何かに閃きそうだったのだが。
「すんません、私を雇ってくれる話はどんなんですかね?」
ルーチェの言葉で閃きそうな何かは消えて無くなった。
「それより、今日の敵に俺のブラックソードが全く効かなかったんだ。なにか武器はないのか?」
不良品を見るような目で見てくるルーチェに用途を説明してやった。
「まるで魔法やなぁ」
本物の魔法使いに言われるのだから大したものだが、効果が無いのでは話にならない。
「武器なら遊佐丘義光があるだろう。美術館に飾ってあるから明日にでも取りに行けば良い」
「あれって、製作費十億掛かったこの国の聖剣なんじゃないのか?」
ロイエルーンの太っ腹な発言に驚きながら聞き返した。
「貴様の先祖みたいな者が残した物は全て返すのが恩義ってものだろう」
若い男は私利私欲で扱うくせに、こういう所は義理堅いのだと感心してしまう。
「じゃあ残りの九十億も貰えるのか?」
「すまんな。先々代の王から財政厳しくてな。というより散財し過ぎなのだ。直ぐに用意できるのは一千万しかない。これでたちまちは許せ」
一千万。現世での研修が無事に終えたら獲られる年収の額だった。なんだか懐かしく思いながら、この金額が今はそれで充分だと思っている。
「ルーチェとか言ったな。貴様を雇う件、出来高払いで雇ってやろう。ただし、普段の衣食住はウタルに支払ってもらえ。こいつ、何もしないで大金を獲ているからのう」
「はい?」
「ウタル、おおきに! これからよろしく頼んまっせ!」特に食事の件でお世話になりますぅ」
勝手に決められて俺は魔法使いを一人、雇うことになったのであった。
「あの、ちなみにですが、もし私が隣国のスパイでここで魔法使って爆撃でもしてたらどうなってますか?」
「その時はウタルが命懸けで守ってくれるだろう? まぁアテにはしていないが、その前にシーヴァイルに殺されていただろう。いくら平和ボケしてたとしても、無警戒でいるわけにはいかんのでな」
ソファに座っているロイエルーンは足を組み替えながら笑っていた。
その後、俺達は六時から開かれる緊急会議に同席した。
0
お気に入りに追加
329
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
僕はその昔、魔法の国の王女の従者をしていた。
石のやっさん
ファンタジー
主人公の鏑木騎士(かぶらぎないと)は過去の記憶が全く無く、大きな屋敷で暮している。
両親は既に死んで居て、身寄りが誰もいない事は解るのだが、誰が自分にお金を送金してくれているのか? 何故、こんな屋敷に住んでいるのか……それすら解らない。
そんな鏑木騎士がクラス召喚に巻き込まれ異世界へ。
記憶を取り戻すのは少し先になる予定。
タイトルの片鱗が出るのも結構先になります。
亀更新
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
婚約破棄はいいですが、あなた学院に届け出てる仕事と違いませんか?
来住野つかさ
恋愛
侯爵令嬢オリヴィア・マルティネスの現在の状況を端的に表すならば、絶体絶命と言える。何故なら今は王立学院卒業式の記念パーティの真っ最中。華々しいこの催しの中で、婚約者のシェルドン第三王子殿下に婚約破棄と断罪を言い渡されているからだ。
パン屋で働く苦学生・平民のミナを隣において、シェルドン殿下と側近候補達に断罪される段になって、オリヴィアは先手を打つ。「ミナさん、あなた学院に提出している『就業許可申請書』に書いた勤務内容に偽りがありますわよね?」――
よくある婚約破棄ものです。R15は保険です。あからさまな表現はないはずです。
※この作品は『カクヨム』『小説家になろう』にも掲載しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる