上 下
27 / 138
バナナはお好きですか?

27

しおりを挟む
「ヒャッハー! それで俺を倒そうっていうのか? 俺も舐められたもんだぜ。いいぜ俺は逃げも隠れも──」

 ブシュルルルルル

 こうなったらキュウイでもなんでも投げつけて逃げるしかないと、取り出したキュウイを一番手前にいる、髪を燃やされた天パ野郎に投げつけた。何かを言っていたようだが、そんなの聞いてる余裕なんてない。

 キュウイは額に命中し天パは地に落ちて失神しているのだろうかピクリとも動かなくなった。額には砕け散ったキュウイが張り付いて、煙が出ていた。

 野球どころかキャッチボールもしたことない俺だが、コントロールが意外と良いのと、キュウイで失神させれた二つの事に驚いている。

 相手達も驚いていたのだが、我に返って攻撃を仕掛けてきたが続けてキュウイを投げる俺の方が早かった為、次々と命中しては失神していった。

「後はダンパーだけか!」

「俺はバンパーだ!」

 どっちでもいいようなやり取りをしながらカバンをまさぐったが、キュウイは既に無くなっていた。

「そんな!」

 バナナと言いかけて、止めるや否やバナナをダンパーに投げる。しかしキュウイ程コントロールが上手くいかず逸れて行ってしまった。

「もうないのか!?」

「美味かったで」

 コノヤロー! 人が戦っているのに呑気にバナナ食べやがって!

「もう投げる物がないんだ! その杖貸せ!」

「アホなこと言うたらアカンで。この杖は私の命より大事な物なんや。この杖貸すっちゅうんは、私に死ね言うてるようなもんやで」

「じゃあ行って死んで来い」

「殺生やでぇぇ」

 泣きながら俺の袖を掴んで、全力で拒否をしてくる。

 ダンパーは大きな剣を鞘から抜いて、グヘヘヘと聞こえてきそうな顔で笑っている。

「グヘヘヘヘ」

「グヘヘヘヘって、ヤバイんですけどー。あの人怒ってる!」

「お前が怒らせたんだろ!」

 ダンパーのマネをしながら俺の反対側の袖を掴んで泣きながら慌てているミゼル。

 なにやらぶつぶつ呟いているエセ関西弁。

 いよいよダメかって時に、ダンパーの後ろから勢いよく近づいてくる物体が。

「グヘ、グヘ、グヘヘヘヘ」

 ブッシュゥゥゥ!

 もう言葉を忘れてしまったのではないかと思える程、興奮したダンパーのこめかみにバナナが突き刺さる。

 まさかブーメランになって戻って来たのだった。

「グオォォォォォォォオ!!」

 ダンパーがタフなのかバナナだからなのか、悶えるも失神には至ってない。

 ここは止めを刺すチャンスか? それとも逃げるべきか? 迷っている横で大声で詠唱する。

「捲土重来!!」

 エセ関西人が叫ぶと、ダンパー含め失神している奴らの周りを囲むように、地上から地面が盛り上がってきた。

 三階建ての家程の高さまで盛り上がった。

「今のうちに逃げるで」

 そう言いながら、乗っていた動物に跨り走り出そうとした。

 その後ろにミゼルを乗せて、俺は走ってその後を追った。

 なかなかのスピードで俺の体力がどこまで持つか、ダンパー達が追って来るのか心配は尽きなかったが、なんとか逃げ切ることができたのだった。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

処理中です...