25 / 138
バナナはお好きですか?
25
しおりを挟む
現世での記憶も蘇る……。
──竜の頭に変化して残虐な奴。
──「消えろ、ぶっ殺されないうちにな」
──脇から腕を回して抱いて乗っかかるマヌガレータの乳。
──可愛い桃尻がプカプカと浮かんで。
──ミゼルにおんぶをさせられて、背中に当たる感触。
「いかん、さっきの風呂が脳裏から離れん!」
「お兄ちゃん、なに見てるのぉ?」
「ぬわっ!」
突然後ろに現れたミゼルに驚いたのは、背中に感じた胸の感触を思い出していたからだ。
また、背中に身体を密着させて俺の見ていた方向を指さす。
「追いかけっこしてるー」
そう、はじめに見た時よりも先頭との距離は近づいているように見える。
追い付かれるのも時間の問題だろうか。
進行方向は同じだが、機関車が通り過ぎればその後の光景を見ることはできない。
考えている時間はもうない。
昔から強かった正義感が心の中で葛藤する。
見ず知らずの人を助けるべきか? 間違いであったとしてもダンパーと対峙したら対決は避けられない! 勝てるのか? 殺されるかもしれないんだぞ?
自分に言い聞かせながら、気持ちは抑えきれなかった。
どうせ異世界、俺が死んでも誰も困らないだろうと無理やり理由を付けて、決心をする。
「お兄ちゃんは早退するからヨロシクな」
「お兄ちゃん!」
運良く見つけていた大きなスライムめがけて、機関車から飛び降りた俺の耳には、ミゼルの声が暫く残る。
「トイレスライムだったとしたら、破裂するなよ」
そう願いながらうまく着地し、程よい弾力性でトランポリンのようにダメージ無しで地上に降りる。
「お兄ちゃん凄い!」
「ぬわぁぁ! なんで?」
俺におんぶされているミゼルに再び驚いた。
「お兄ちゃんと早退するって言ったじゃん」
「え──?」
なんであそこで聞き間違いするんだ?
夢中になっておんぶに気付かない俺もどうかしてるが。
「ミゼルはここにいろ!」
「やだぁ! やだよぉぉぉ」
おんぶから降りようとしないミゼルは今にも泣きだしそうな顔をして喚く。
一人ここに置いとくより、時間稼ぎしてる間に先頭の黒い奴と一緒に逃がせてもらうか!?
無謀ながらも時間稼ぎの方を選択して、おんぶしたまま走り出した。
不思議とミゼルをおんぶしてる感覚もなく、重さの苦もない。
追いかけている中のキツイ天パが弓を放ち、避けた拍子に体制を崩して倒れる。
走りながらブラックソードを出しきる前に、その場に着いてしまった。
「なんだ貴様! 急に現れやがって!」
瞬く間に現れてしまったので、こいつらも驚いていやがる。
まぁ一番驚いているのは俺なんだが。
「大丈夫か!?」
俺は倒れている黒ずくめの方に駆け寄り、ミゼルは動物に駆け寄った。
パーカーがはだけて見えた顔は黒い髪の女の子だった。
「おおきに。けどちょっと困ってますねん。兄さん助けてくれまんの?」
……なにこのミスマッチ。
──竜の頭に変化して残虐な奴。
──「消えろ、ぶっ殺されないうちにな」
──脇から腕を回して抱いて乗っかかるマヌガレータの乳。
──可愛い桃尻がプカプカと浮かんで。
──ミゼルにおんぶをさせられて、背中に当たる感触。
「いかん、さっきの風呂が脳裏から離れん!」
「お兄ちゃん、なに見てるのぉ?」
「ぬわっ!」
突然後ろに現れたミゼルに驚いたのは、背中に感じた胸の感触を思い出していたからだ。
また、背中に身体を密着させて俺の見ていた方向を指さす。
「追いかけっこしてるー」
そう、はじめに見た時よりも先頭との距離は近づいているように見える。
追い付かれるのも時間の問題だろうか。
進行方向は同じだが、機関車が通り過ぎればその後の光景を見ることはできない。
考えている時間はもうない。
昔から強かった正義感が心の中で葛藤する。
見ず知らずの人を助けるべきか? 間違いであったとしてもダンパーと対峙したら対決は避けられない! 勝てるのか? 殺されるかもしれないんだぞ?
自分に言い聞かせながら、気持ちは抑えきれなかった。
どうせ異世界、俺が死んでも誰も困らないだろうと無理やり理由を付けて、決心をする。
「お兄ちゃんは早退するからヨロシクな」
「お兄ちゃん!」
運良く見つけていた大きなスライムめがけて、機関車から飛び降りた俺の耳には、ミゼルの声が暫く残る。
「トイレスライムだったとしたら、破裂するなよ」
そう願いながらうまく着地し、程よい弾力性でトランポリンのようにダメージ無しで地上に降りる。
「お兄ちゃん凄い!」
「ぬわぁぁ! なんで?」
俺におんぶされているミゼルに再び驚いた。
「お兄ちゃんと早退するって言ったじゃん」
「え──?」
なんであそこで聞き間違いするんだ?
夢中になっておんぶに気付かない俺もどうかしてるが。
「ミゼルはここにいろ!」
「やだぁ! やだよぉぉぉ」
おんぶから降りようとしないミゼルは今にも泣きだしそうな顔をして喚く。
一人ここに置いとくより、時間稼ぎしてる間に先頭の黒い奴と一緒に逃がせてもらうか!?
無謀ながらも時間稼ぎの方を選択して、おんぶしたまま走り出した。
不思議とミゼルをおんぶしてる感覚もなく、重さの苦もない。
追いかけている中のキツイ天パが弓を放ち、避けた拍子に体制を崩して倒れる。
走りながらブラックソードを出しきる前に、その場に着いてしまった。
「なんだ貴様! 急に現れやがって!」
瞬く間に現れてしまったので、こいつらも驚いていやがる。
まぁ一番驚いているのは俺なんだが。
「大丈夫か!?」
俺は倒れている黒ずくめの方に駆け寄り、ミゼルは動物に駆け寄った。
パーカーがはだけて見えた顔は黒い髪の女の子だった。
「おおきに。けどちょっと困ってますねん。兄さん助けてくれまんの?」
……なにこのミスマッチ。
0
お気に入りに追加
329
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる